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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
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背景と目的

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 俺の頭の中で、依頼の背景が鮮明になった。


 まず、遺跡の場所についてだ。

 上から圧力を受けているのは、空白の歴史に関わることだからだろう。


 メリアの所属している研究団体『ラナティス』は空白の歴史への干渉およびその研究を良しとしていない。


 上に言わせれば、やるだけ無駄とのことだ。


 俺たちが生まれる前に空白の歴史に挑んだ学者・研究者たちは、理不尽な矛盾と戦った挙げ句に(ことごと)く敗北してきた経歴がそうさせている。

 そして、空白の歴史への干渉およびその研究をした者には、厳しい罰則がある。


 ――考え方を否定する気はないが、研究者の本分を忘れてしまっているような気がするのは、俺だけだろうか。


 次に依頼という形式ついてだ。


 ラナティスに所属している以上、メリアは今回の件に直接干渉できない。


 しかし、俺は多少無理が出来る身分なので依頼してきたのだ。


 俺はメリアの部下という扱いにはなっているが、実のところは無所属。メリアに雇われた野良研究者だ。

 

 もし見つかっても俺とメリアが口裏を合わせておけばいい。

 空白の歴史を研究していることをラナティス側に俺の独断行動と認識させてしまえば、メリアは監督不行届の罰は喰らうだろうが、それ以上のお咎めはない。


 これまでにも似たようなことは何度かやってきている。


 しかし、俺への罰がタダ働き二ヶ月や不眠不休の研究資料庫の整理三日間というレベルではない。


 間違いなくラナティスに金輪際関わることができなくなる。


 ――この依頼は断るべきだ。

 

 俺の目的のためなら引き受けるべきだろうが、生活が出来なくなっては本末転倒だ。


 無所属の俺が試験管やフラスコといった研究に必要な器材を潤沢に使えるのは、メリアを通してラナティスから支援を受けているからに他ならない。それがなくなると、研究の幅は一気に狭くなるだろう。


 一番の問題は家だ。

 俺が寝床にしている研究室は元を辿れば、ラナティスの資産だ。

 出て行け、と言われれば俺は出て行かなければならない。


 住所不定無職の不穏な文字が頭の中に駆け巡る。

 そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。

 想像しただけで冷や汗が止まらない。


「この依頼、多分だけどオリフィスも関わってくるよ」


 俺の頭が依頼の拒否一色に染まったとき、メリアは言葉を発する。


 拒否することしか考えていなかったところに、怒りの感情が流れ込んできた。

 俺は苛立ちながら、頭を掻きむしる。


 メリアはお仕事モード継続中で、いつもの呑気な姿はない。

 始めから俺に拒否権を与える気はなかったようだ。


 ――自分の生活と依頼を天秤に掛けるのはやめだ。傾く先が分かっている壊れた天秤に用はない。


「オリフィスが関わってくるなら話は別だな。今回の依頼、引き受ける」


 俺はきっと、怒りに塗りつぶされた醜い顔している。

 身体の中から黒い感情が吹き出しそうになる。

 左腕が俺の感情に呼応するように、勝手に『竜化』を始めた。


 オリフィス。

 それは魔法の――いや、師匠の言葉を借りると魔導の――兄弟子。そして、世界の謎を追い続けた師匠の研究を全て盗んだ野郎だ。


 オリフィスより先に俺は世界の謎を解明しなくちゃならない。


 道半ばで死んでいった師匠のために――。

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