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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
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『そういう』話、どういう話?

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 俺はラッドの研究室にまだいる


『精霊の旅路』は昼ごろに読破した。

 本来そこから物語の整理や本に隠された真実を探す所だが、ラッドの質問に答えられなかったのでそちらを考えることにした。


 今までは師匠の夢と盗まれた研究資料のことで思考領域が占領されていた。しかし、オリフィスの事件で少しだけ思考領域が解放されたから今まで考えていなかったことに頭が回るようになったんだろう。

 

 ――わからない。


 三十分経っても答えは出ない。


 師匠の夢を叶えたいだけの俺は楽しいと思って研究していない。

 メリアやラッドとスタンスが違う。


「当てはまらないんだよな」


 研究室の真ん中にあるソファーに寝転んで独りごちた。


 ――イヴァン=ルーカスは人としても、研究者としても異端である。

 

 そう言われている気がする。


「やっと終わったぜ」


 ラッドはずっと仕事机の上で書類を書いていた。

 どうやら終わったらしく、伸びをしている。


「何の書類だ。それ」

「メリアの表彰に使った金の決算書類と護衛ギルドから依頼を受けていた竜骨の買取受領書」


 ラッドは書類仕事で疲れたのか肩を回す。

 

「決算書とか金絡みのことを何で研究者のお前がやってるんだよ」

「一応ガルパ・ラーデの副代表だぜ、俺。代表が今留守だから代わりやってるの」


 聞き間違いだろうか。

 ラッドがガルパ・ラーデの副代表?


「嘘は良くないと思うぞ」

「イヴァン君、それは何を嘘だと言っているのかな?」

「もちろんラッドの立場」


 ラッドは苦笑いをした。


 そんな顔をされても困る。

 知らなかったしラッドとメリアの関係的にそこそこの地位にいるとは思っていたが副代表だとは予想してなかった。


「はっきり言ってくれるぜ。いや、まぁわかるけどな・・・・・・」


 ラッドの声が尻すぼみになっていく。

 頭では理解しているが心が拒否をしているらしい。

 どんどん表情が暗くなる。


 ――話題を変えた方がいいな。


 俺は腹の上に転がっている『精霊の旅路』の表紙を見る。


「そう言えば『精霊の旅路』の作者なんだが、なんで書いてないんだ」


 適当に思いついた話をする。

 

 読んでいる最中に気がついたのだが『精霊の旅路』の作者であるアルタミア=サルミア―トの名前がなかったのだ。

 表紙の表にも裏にも最後のページにも何処にもない。


 なのにラッドはこの本の作者がアルタミア=サルミア―トだと言い切っていた。

 

「そりゃ、原本に作者が誰か書いてなかったからだぜ。物語としての完成度が高かったことから作者不明のまま現代語に翻訳して出版したらしい。まさか記録石(スフィア)の解読で精霊物語の作者が分かる日が来るとは思ってなかったぜ」

「なら、メリアみたいに発表するのか」

「ん? メリアの嬢ちゃんみたいにって何が?」


 ラッドが片眉を少しあげた。


 メリアの奴、今回の論文の発表に記録石(スフィア)が関わってることをラッドに話してないのか。


記録石(スフィア)の解読した結果から論文を作って発表することだ」


 ラッドが青ざめた顔をした。


「もし精霊物語の作者を発表したら、物証として記録石(スフィア)のことを公表しなくちゃならないぜ? そんなの出来ると思うか?」


 記録石(スフィア)という貴重な発掘物の横領をして研究。そして、記録石(スフィア)を解析したら新発見しちゃいました。

 

 そんなことを堂々と言ったら顰蹙もの。いや、その前に犯罪者だ。

 ――普通は発表できないな。


「メリアの嬢ちゃんとんでもないことしてるな。記録石(スフィア)のことバレないか心配だぜ」


 ラッドの心配はもっともだが、その辺の抜かりはない。


「俺も論文の内容は確認したが記録石(スフィア)のことは避けて書いてる」


 確認のために俺も目を通したから間違いない。


「その論文も歪んだ真実だな」


 皮肉混じりにラッドがため息をついた。


 嘘をついているという意味ではそうかもしれない。 


「真実の裏には偽りが存在する。その偽りは偽りと証明出来なければ偽物にはならない」


 ラッドが突然真面目な顔をして、らしくない言葉を発した。

 誰かの言葉の引用だろうか。


「一体誰の言葉だ」

「考古学者なら誰でも知ってる言葉だぜ。誰の言葉なのかは知らないけどな」


 俺は『精霊の旅路』を手にする。


「真実と偽り、か。ラッドはもう読んだなら何かわかってることはないのか」

「ないこともない」


 随分と意味深な言い方をされた。

 そういうとラッドは仕事机の上から足を下ろして俺のところに来る。


『精霊の旅路』を真顔で指差すラッド。


「何故濡れ場がこの本にはないんだ?」


 真剣なトーンで何言ってるんだ、この独身。


「ラッドが独り身な理由が分かった気がする」

「おい、割と真面目な話してんだぜ!?」


 どのへんが?


「疑り深い目をありがとう。でも、この時代の本って『そういうもの』が多いんだぜ? 時代背景的なものから言えば当たり前なんだけどな」

「その辺は俺、まったくわからん」


 魔法の歴史なら空白の歴史部分以外は頭に入っている。一方、人間の歴史はからっきしだ。


「この本が作られたであろう四千年前は戦争が終わって人が人らしい生活に戻り始めた頃だぜ。ロクに娯楽がなかったから『そういう』本が数多の小説家によって生み出されたんだ」


 ――娯楽=エロいことってどうなんだよ。


 ラッドが説明を続ける。


「だからこの時代には珍しい――いや、異常と言った方が正しいか。戦争が終わった直後に戦闘シーン盛り沢山の本なんて不謹慎極まりないぜ」


 言われてみれば確かに『精霊の旅路』の内容はほぼ主人公の精霊と何者かの戦いだった。

 本単体を見ただけではわからなかった。しかし、時代と照らし合わせると不自然だ。


 こんな本を書く理由が理解出来ない。


 ――真実を残すためだけにわざわざ書いたのか。


「じゃあ、精霊が戦ってるところに真実が隠されているのか」

「そこは何ともな。俺が知りたいぐらいだぜ」


 ラッドが肩を落とした。


 話を逸らすだけのつもりだったのに意外な所から情報を得ることが出来たようだ。


 俺はソファーに座り直す。


 コンコン、とノックをする音がする。


「ラッドさんはいるか?」


 クウェイトの声だ。


 ――メリアの警護をしているはずなのに何故?


 俺の頭の中に新しい疑問が追加された。


寝坊した紺ノです。


本当は昼に更新したかった。でも、何も考えてなかったので昼頃から何書くか考えてたらこんな時間になってしまった・・・・・・。


一瞬『更新は4/9』ってツイッターに呟こうか考えました。


読者さん、いつもありがとうございます。


平日は更新出来るかわからないです。

ツイッターの方で十八時前後に更新するか呟くのでそちらの方を見てもらえれば更新するか分かると思います。


これからもテキトーに楽しくやっていくので、お付き合い下さいな。

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