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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
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滞在二日目、研究者は己を見直す

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 ユビレトに来てから二日目の朝。

 

 朝八時にラッドの研究室に来るように言われたため、『竜の巣』に泊まった俺たち一行は朝ご飯を食べてから向かった。

 

 メリアが狂信者たちに見つからないようルートをハロルドのオッサンが見つけてくれていたらしく路地裏を抜けていく。大通りを横切るときもあったがタイミングを見計らって進んだ。


 昨日は走って三十分ほど掛かった道のりが倍近く掛かった。それでも、メリアの精神面を考えるとこちらのほうが断然いい。


 俺は『精霊の旅路』を紙袋に入れて持ってたせいで動きづらくなる場面があった。そこは仕方がない。分厚すぎる本が悪い。


 ラッドの研究室に辿り着いたのは約束の時間の五分前。

 昨日のヴェルデ襲撃によって壊された扉は応急処置で木の板が填められていた。


「ラッド、来たぞ」


 俺が木の板をノックする。


 木の板が扉のように弧を描いて移動する。

 ちゃんと開閉するらしい。


「いらっしゃい。中に入ってくれ」


 メリアを最初に入れてから俺と身辺警護組の二名が入る。


 ひとまずメリア・フィーバーは起こさずに済んだ。


「とりあえずソファーに座ってくれ。昨日話せなかった予定について簡単に説明するぜ」


 俺とメリアがソファーに並んで座る。クウェイトとハロルドのオッサンはその横に立っていた。

 今更ながら守られていることを実感する。


 ――俺を守る意味はあるのかわからないが。


 ラッドが今日明日の予定をさらっと話してくれる。

 

 今日は九時から研究者同士の意見交換会。夜の八時からパーティが開催される。明日は午前中が表彰のリハーサルで昼過ぎに本番となる。


 俺は昨日の夜、身辺警護組から少し聞いていたので適当に聞き流す。

 隣で聞いているメリアは仕事モードなのか真面目になっている。


 ――いつも真面目なら俺も怒らなくて良いのにな。


「つうわけで、メリアの嬢ちゃんは今からガルパ・ラーデの本部に行ってくれ」

「オッケー。昨日言ってた竜関連の物はちゃんとラナティスに廻してよ?」

「わかってるって」


 釘を刺すメリアにラッドが口角をあげて答える。


 ラッドとの約束が今のメリアの原動力だから確認したようだ。


「俺は行かなくてもいいんだろう」

「そうだな。魔法の研究者であるイヴァン君は行く必要はないな」


 俺は少し安堵する。

 行くことになったら絶対にヴェルデに絡まれる。

 まだ途中の本も読みたい。


「イヴァンも行こうよー」


 メリアが子供っぽくなっていた。

 俺の前では真面目な状態は続かないらしい。


「俺は俺でやりたいことがあるから行かない」

「ヴェルデに会ったら誰に助けを求めればいいのよ!」


 俺は横にいる身辺警護担当のクウェイトとハロルドのオッサンを指す。


「いや、そうだけど。そうだけどさ……」


 不満そうな声を出すメリア。

 

 ――何が嫌なのかさっぱりわからん。


「そろそろ向かわないと間に合わなくなるのではないか?」

「そうですね。通常ならここから三十分程度ですが来た時のように裏道を使うとなると四十分程度になるかと」


 クウェイトとハロルドのオッサンが時間を気にしていた。


「お前一人で行って来い」

「わかったよ。うん。これは仕事だもんね。うん。仕方がない」


 あからさまにメリアが落ち込む。


 俺はため息をつく。


「なんかやって欲しいことがあったら言うことを聞いてやるぞ」

「え、じゃあ! イヴァンの鱗を――」

「竜化関係はなしだ」


 俺が条件を加えるとメリアが頬をふくらました。


「なにさ! 期待したじゃん!」

「とりあえずなんかまともなもの考えとけ」


 俺はメリアをあしらう。

 下手に付き合うと移動時間がなくなる。

 

「二人とも、俺の上司を頼むわ」

「わかっている。しっかり守らせてもらう」

「えぇ、しっかりと計画は立てていますのでご安心してください」


 頼もしい護衛ギルドの二人とメリアが扉の代用品から出ていく。


「あっかんべー」


 出る直前、メリアが舌を出していた。


 ――早く行けよ。

 俺はしっし、と手を振る。


 メリアは不機嫌な顔になって扉の代用品を勢いよく閉めた。

 木の板は大きな音を立てる。

 

 ――壊れてないよな?


「イヴァン君は今からどうするんだ?」


 ラッドが質問してきた。


「まだ読み終わってない本を読むんだよ。今日中に『精霊の旅路(こっち)』だけでも読み終えたい」

「しんどいよな。二冊読み終えるのに四日かかったぜ」


 もうすでにラッドは読み終えているらしい。

 

「ラッドはサルミアートがどんな真実を本に書いたと思う?」


 興味本位で聞いてみたくなった。

 

 ラッドは色々な文献を紐解いている。

 竜専門の研究組織、ガルパ・ラーデで考古学者というのはある種異端だ。


 能力を買われているからこそラッドはガルパ・ラーデにいる。

 見た目はパッとしないが研究者としては一流だ。


「歪んだ真実――十中八九、世界の空白絡みだろうぜ。イヴァン君もそう思ってるんだろ?」

「まぁ、な」

「ラナティスじゃ禁止事項だろ。いいのかよ」


 ラナティスの決まり知ってたのかよ。


「俺の夢は世界の真実をすべて解明して教科書に載せることなんだよ」


 それに記録石(スフィア)の横領の時点でもう禁則事項を何個破ってるんだか。


「途中まで理解できるのに最後が訳わからん夢だな」

「だろうな」


 俺は紙袋から本を取り出して読み始める。


「イヴァン君はその夢を叶えるためにルールを破るんだな。楽しいか?」

 

 ラッドの質問の意味がわからない。

 

「楽しい? 何が?」

「え、いや。楽しくてやってるんだろ、それ」

「わからない」


 夢の始まりはただ世界の真実を追い求めた人が格好良かったから憧れた。

 師匠が求めたものを俺も知りたいと思った。


 ――では、今は?


 俺は約束を守りたいのだ。

 ただの口約束を守りたいのだ。

 変な意地とかプライドとかだと思う。


 ――本当にそれだけなんだろうか。

 

 俺はラッドの質問への解を持っていなかった。

のんびりいこうよ。紺ノです。


会社の新人歓迎会の準備と当日のサポート手伝ってたら更新できなかったです。


読者さん、いつも読んでいただきありがとうございます。


2~3日に一回は更新していくので、今後ともよろしくお願いします。

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