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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
36/162

襲来、メリア教の教祖様!

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

「いやぁぁぁっ!!」

「待って下さい。どうして逃げるんですか!」


 ラッドの研究室にあるソファーを中心にメリアと眼鏡女がぐるぐる回っていた。

 ソファーの上には俺とメリアの鞄が置かれていて壁のようになっている。


 メリアは捕まらないように全力で走り回る。

 眼鏡女はメリアを捕まえようと追いかける。


 俺とラッドとクウェイトは追いかけっこをする女二人に巻き込まれないように端に避けている。


「なにこれ」


 俺の処理能力を超えてきた。


 ユビレトは変なやつしかいないのか。


「私が力負けするとは思わなかった・・・・・・」


 さっきまで眼鏡女を静止させようとしていたクウェイトが俺の右横で項垂れていた。

 

 同性に負けたのがショックだったのだろうか。


 左にいるラッドは頭を抱えながらぽつりぽつりと言葉を発する。


「えーと、あれがヴェルデ。ヴェルデ=トート。・・・・・・一応俺と同じでガルパ・ラーデの研究員。専門は竜の生態だ」


 メリアと同じ研究をしているのか。


「ちょっと誰か助けてよ!」


 眼鏡女改めヴェルデはメリアにしか眼中に入っていないらしい。

 

 部屋の端にいる俺たちは大人しく目の前の惨事を眺めている。

 

 メリアに助けを求められてもその中に入りたくない。

 入ったら面倒な事になるの目に見えている。


「なんであのヴェルデとかいう女はメリアにご執心なんだ」

「あー、一年半前に竜の素材を使った装飾品の紛い物が市場に出回ってたんだわ」

「メリアがキレそうな事件だな」

「その通りだぜ。怒ったメリアの嬢ちゃんが紛い物の制作者を引っ捕らえるのに貢献してくれたんだよ。しかも、紛い物と本物の鑑定をユビレト滞在中に全部やってくれたんだ」


 ――竜関連のメリアの行動力は恐ろしいからな。

 

 度の超えた愛好家を怒らせるとどうなるか犯人も身に染みて分かったはずだ。

 多分、鑑定は色んな竜の品が合法的に見て触れるからとかだろうけど。


「で、そのときの手際にヴェルデが惚れてな」


 同類ならではの惚れ方だった。

 

「そんな事件があったのか。もしかして、それが原因でメリア・フィーバーが出来たのか」

「いや。事件が終わってメリアの嬢ちゃんが帰った後、ヴェルデがどれだけすごいのかを街中に説いて回ってたんだよ。もう何の宗教だって感じだったぜ。しかもこの街では竜ってのがそこそこ身近なものだから」


 広がるのが早かった、と。


 さすが竜の住む街、ユビレト。


「もうメリアのファンが住む街って触れ込みにしたらいいんじゃないか」

「最悪な触れ込みだぜ、それ」


 俺とラッドが喋っているとメリアが俺の背中に隠れた。


「おい、俺の後ろに隠れるな!」

「イヴァン助けてよ!」


 ――お前、ユビレトに来ることになってからずっと同じようなことを言ってないか?


「イヴァン? あなたイヴァンって言うんですか?」


 ヴェルデが俺を認識したらしい。


 眼鏡の奥で鋭い狩人の目をしている。


 関わりたくないから、違うと言いたい。


「イヴァン、早くここを出ようよ!」


 空気を読んでくれ、メリア。 


 メリアが俺の名前を呼んでしまったので嘘がつけなさそうだ。


「・・・・・・そうだ」

「と、いうことはメリア様の忠実な下僕というわけですね」

「部下だよ。なんだよその称号は」


 そんな称号はマイロにつけてやればいい。

 メリアの言うことなら大体従うから。


「つまり敵ですね」

「研究者が超理論を構築するのはやめろよ。なんで俺がお前の敵なんだよ」


 面倒くさい。

 ひたすら面倒くさい。


 俺、なんで絡まれてるの?


「ワタシ、メリア様の下で働くのが目標なんです。竜の鱗を触っただけで本物かどうかわかるとか竜神に愛されてるとしか思えませんよ」

「変人の間違いだろ」

「そして若干二十二にしてラナティスのナンバー3(スリー)として竜の生態の謎を解明していく知力。天才的です」

「普段は子供だぞ」


 俺が思ったことを口に出していくとヴェルデの眉間に(しわ)が作られていく。


「あなた、メリア様を侮辱するんですか?」


 殺気の籠もった目で俺は睨まれる。


 ――メリア様、ね。


「事実だろうが」


 嘘は言ってない。

 

 メリアはメリアだ。神に愛された存在でも天才でもない。

 ただの竜好きの上司で――俺の恩人だ。


 敵意剥き出しの相手にその話をしても仕方がない。ここは強引に出て行かせて貰おう。


「ラッド、俺たちが泊まる宿の名前はなんだ」

「『竜の巣』っていうところだぜ。それがどうかしたか?」


 俺は直ぐさまクウェイトに『場所はわかるか』とアイコンタクトを送る。

 

 クウェイトが頷く。

 道に迷う心配はなさそうだ。 


 俺はソファーに置きっぱなしになっていた二人分の鞄を担いだ。

 ――ついでにメリアも。


 俺はラッドの研究室の窓を開ける。


 露店の通りとは違い人が少ない。

 ガルパ・ラーデの研究施設が並んでいる地域だからだろうか。

 

 ラッドの研究室が建物の二階とか三階とかの高いところじゃなくて良かった。


 竜化したら降りることは簡単だ。しかし、人目が多いとクウェイトの時みたいに変に思われるかもしれない。

 竜化しなくていいのはいいことだ。


 第二回メリア・フィーバーが起こってもさっきほど人は増えないはずだ。


「ちょ、ちょっとイヴァン? 何するの?」

「こうするんだよ」


 俺は窓を飛び越える。

 

 クウェイトも遅れて窓を飛び越えた。

 

 これで話の通じなそうな奴とはおさらばだ。


「明日の朝八時に俺の研究室にまた来いよー」


 ラッドが窓から大声を出していた。

 

「はいはい」


 ラッドには聞こえるか分からない音量で俺は返事をする。


 ――ユビレトの街を鞄と女を担いで走る俺。その後ろには騎士風の護衛ギルドの女が追ってきてる。


 何も知らない人間が見たら人攫いではなかろうか。


「どうしてこんなことになってんだろうな・・・・・・」


 俺はただ嘆くしか出来なかった。


―― ◆ ―― ◆ ―― 


「な、何なんですかあの人は!」

 

 ヴェルデが窓から飛び出すイヴァンを見て驚いていた。


 当然と言えば当然だ。

 何の躊躇いもなく、荷物と人間を背負って窓から出て行く人間なんて普通はいない。


「ヴェルデ、メリアの嬢ちゃんが絡んでいるからってイヴァンに対抗意識を燃やすんじゃないぜ。あと頼むから問題を起こしてくれるなよ」

「イヴァン、覚えましたよ貴方の名前。絶対にメリア様から離して見せますぅ!」

「・・・・・・聞いちゃいねぇぜ」


 ラッドが話を聞かないヴェルデに肩を竦めていた。

案の定暴走したよ。どうも、紺ノです。


新キャラを絡ませるとキャラの暴れ具合が半端ないです。


他のモノ書きさんたちはどうしてるんかね。


読者の方、いつもありがとうございます。

少しずつアクセスされる回数が増えてきて嬉しいです。


これからも頑張っていくのでよろしくお願い致します。



―― ◆ ―― ◆ ――


次回更新は4/4(水)か4/5(木)です。

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