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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
信頼と裏切りと金色の二人
35/162

過去は語る、真実を見抜けと

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

「あぁ、わかったぜ。アルタミア=サルミアートって奴が何をしていたか。何が記録石に刻まれていたのか」


 ――マジで?


 俺は目を丸くする。

 興奮しているのかラッドが鼻息を荒くした。


「なんでラッドが調べてるんだよ」

「メリアの嬢ちゃんから手紙をもらったんだ。訳の分からない人の名前が記録石(スフィア)から出てきたから調査よろしくってな」


 ラッドが俺に紙切れを投げてくる。


 紙切れには記録石(スフィア)から取り出した情報が両面に書かれていた。


 そういえばオリフィスの事件が落ち着いた頃に記録石(スフィア)の古代文字を写しにきたことがあった。これはそのときに書いた物だろう。


 ――俺がアルタミア=サルミアートについて調べていた数ヶ月は何だったんだろうか。


 身体に言い表せない疲れがやってくる。


 時間は帰ってこない。今嘆いても仕方がない。とりあえずラッドの話を聞こう。


「アルタミア=サルミアートって人物は小説家だ。それも誰もが知ってる物語の作者だぜ」


 ラッドが立ち上がって本棚の前にいく。

 分厚い本を二冊とってきてまたソファーに座る。


 二冊の本が目の前に並べられる。

 両方とも表紙の皮が比較的新しい。

 最近買ったと思われる本の表紙を俺とメリアは覗き込む。


 右の本は『妖精郷の王子』。左の本には『精霊の旅路』。


 右の本は知らない。しかし、左の本は――。


「精霊物語だ」


 メリアが俺の考えていることを口にした。


『精霊の旅路』は演劇になっていたり、子供の読み聞かせに使われたりするので知名度が高い。

 知らない人の方が圧倒的に少ないはずだ。


 ――小説家が記録石(スフィア)を作ったのか。何のために。どうして。


 人が行動を起こすには理由がある。勘や気分という不確定要素があるにしろキッカケはあったはずだ。


 もう一つ疑問がある。

 

 昔の人間なら誰でも記録石(スフィア)を作ることが出来たのだろうか。

 記録石(スフィア)を作成できる人は現代には残っていない。


 確認しようもないことだとは思うが気になる。


「そうだ。精霊物語だな。で、もう一冊は差し詰め『妖精物語』とでも言うべき本だ」


 なんだそりゃ。


「簡単に説明すると妖精たちの住む国に悪魔がやってきてそれを妖精の王子がやっつけるって話だ」

「で、小説家のこの二冊の本がどうしたんだよ」


 俺の問いにラッドが『その質問待ってたぜ』と言わんばかりに口を緩めた。


記録石(スフィア)にはこう書かれてたんだよ。『私は真実が歪められるのは耐えられなかった。だから記す。精霊の旅路と妖精郷の王子に記しておく。誰かが真実に辿り着くことを願う』」


 俺の身体に電気が走る。


 真実とは――世界の真実のことか。

 

「ラッド! で、真実っていうのは何なんだ! この本には何が記されていたんだ!」


 夢への一歩。いや、百歩ぐらいに相当する。


「全然わからんかった」


 盛大に期待を崩された。


 思わず俺はラッドに喰ってかかる。


「お前それでも考古学者かよ!」

「うるせー! こっちもその本買ってきて読み解いてる最中だっての!」

「ちょっとイヴァン、落ち着いて」


 メリアがあたふたする。


「さっさと解きやがれ!」

「おま、それ言う!? 無理だから。本に隠された内容を紐解くのってクッソ時間掛かるんだぞ。むしろ半年で古代文字の暗号解いた俺を褒めて欲しいところだぜ!」


 ――暗号?


 俺は熱くなった頭を少し冷やす。


「暗号って何だよ」

「イヴァン君とメリアの嬢ちゃんが読めなかったっていう部分だよ。サルミアートって小説家は用心深かったのか、さっきの文章を暗号化してたんだぜ。『重ね包み』って言って文字を重ねまくって読めなくする。けど一定の手順で読めば読めるようになる」


 不機嫌な表情をしたラッドが説明してくれた。


 サルミアートは随分と手の込んだことをしていたらしい。

 知らなかったとはいえ、ラッドに突っかかってしまった。


「すまん。熱くなった」

「まぁ、いいぜ。研究者が研究や調査関連の話しをするとこうなることあるしな」

「まじか」


 研究で関わるのはメリアと婆さんがほとんどだ。


 俺はあんまり研究者同士で喋らない。


「なんだ。研究者同士の殴り合いみたことないのか?」


 当たり前のように言われても困る。


「基本私の依頼こなしてるか定期的な魔素の検査してるだけだもんね」

「そうだな。ついでに言うと、メリアの下についてからサルベアの街を出るのは初めてだ」


 サルベア周辺の森とかには薬草を取りに行くことはあったが、さすがにこれを街を出たと言っては駄目だろう。


「引きこもりかよ。まぁ、そういう連中もいるけどよ・・・・・・」

 

 単純に正式にはラナティスの人間じゃないから外に出るような仕事が来ないのだ。

 何の間違いかメリアの付き添いでユビレトに来ただけ。


「話が逸れたな。とりあえず俺がわかったのはアルタミア=サルミアートが小説家で何かを二冊の本に残したってことだ」


 ラッドが話をまとめた。


 俺は『妖精郷の王子』と『精霊の旅路』の二冊を手にする。


 分厚い。何ページあるんだ。この中から真実を掘り当てろというのか。


 ラッドの言うとおりこれは難しいかもしれない。


「なぁ、ラッド。この二冊、借りていいか」

「イヴァン君が帰るまでに返してくれるならいいぜ。俺、今回の催しの準備の手伝いとかあるから研究できそうにないんだわ」


 ありがたく借りるとしよう。

 

 俺は自分の旅行鞄に本を入れる。

 今はいつものように腰の鞄に本を入れられない。

 

 ――だって記録石(スフィア)持ってきてるもの。

 

 メリアが使っていた本に見える箱に入れている。

 ただでさえ薬がたくさん入っていた鞄だ。

 これ以上腰の鞄に物を入れると動きづらいのだ。


「さて、記録石(スフィア)とかサルミアートの話はこれぐらいにして明日からの話をしようか。ホントなら宿でするつもりだったんだけどな……」

「すまん、ラッド」


 俺がメリアの名前を呼んだから逃げる羽目になったんだよな。


「イヴァン君は悪くない。悪いのはヴェルデだ」


 ヴェルデ? 誰だそれ。


「メリア、知って――」


 メリアにヴェルデを知っているか確認しようとしたら青ざめていた。

 

 身体はおびえているのか小刻みに震えている。


「おい、貴様何者だ!」

「神に会いに来ました! メリア様ぁ~!!」


 外が騒がしい。


 クウェイトの声と知らない女の声がする。

 しかも発言がおかしい。


 神に会いに来たってなんだよ。 


「いやぁぁぁぁぁ!! 怖いのが来たぁぁぁぁ!!」


 絶叫するメリア。

 

「中から愛しい神の声がっ!! 今参りますぅ~!!」


 ラッドの研究室の扉がぶち破られた。

 二つに割れた扉が飛び散る。

 

 眼鏡を掛けた白衣の女がクウェイトを腰にぶら下げて入ってきた。


 ぶち破った女がキョロキョロとしている。


「神よっ! ここにおられましたか!」


 メリアを見て女は劇の一幕のような格好になる。

 

 ――俺の中にある危ない奴ランキングに女がランクインした瞬間である。

 

なんか危ない人が生まれてしまった・・・・・・。どうも、紺ノです。


3月の月間アクセス数1500超えてるとか奇跡ですね。


読者さん、ありがとうございます。


二章がんばって書いていきますので、お付き合いくださいな。

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