金色の二人、片方は行方知れず
初投稿です。
誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。
俺とメリアは魔法列車――魔石を糧に線路の上を走る乗り物――に二時間ほど揺られながらユビレトへ向かっていた。
ラナティスのあるサルベアから見て南東にユビレトがある。
山岳地帯を切り開いた町で、アクセサリーなどの工芸品が有名だ。
竜専門の研究組織『ガルパ・ラーデ』が本部を置いている。
メリアの表彰もガルパ・ラーデの本部で行うらしい。
通常、サルベアからユビレトへ向かうのなら馬車を使う。しかし今回はメリアが賓客扱いのため、魔法列車という一般人が乗ることが出来ないような物で向かっている。
俺が魔法列車に乗ろうとすると半年の給料が飛ぶ。
「ユビレトかー。ユビレトかぁ・・・・・・」
メリアは魔法列車の椅子に座って溜め息をついていた。
サルベアを出てからずっとだ。
「何が嫌なんだよ。竜好きのメリアからしたら天国だろう」
竜の住む街、ユビレト。
この響きだけでいつものメリアなら跳ねて喜ぶ。
現実のメリアはかなりしおれている。
「ユビレトはいいところだよ。イヴァンの言うとおり天国だよ。でもなぁ。あそこはなぁ・・・・・・」
「なんだよ。歯切れの悪い」
「自分で言うの嫌だから見たらわかるよ」
窓の外からユビレトの街並みが見えてきた。
緑一色の山間に家の屋根と思われる三角形が見えた。
煙突から煙りを出しているのも見える。工芸品を作成する工房だろうか。
――普通に良さげな町なんだが、メリアは一体何を嫌がっているんだ。
―― ◆ ―― ◆ ――
魔法列車が駅に到着したので俺とメリアは下車した。
俺とメリアはユビレトに三泊する予定だ。
三泊分の着替えを持ってきただけの俺に対して、メリアは何が入っているか分からないほど大きな鞄を持ってきていた。
俺が持って動いた方がいいな。
「メリア、貸せ」
「ん、ありがとう」
俺が二人分の鞄を持って駅を出る。
サルベアにはない活気があった。
目の前には露店がならんでいて、アクセサリーを売っている。
――初めてきたが良さそうなところじゃないか。
「おーい、お二人さん。こっちだこっち」
こちらに手を振る大男がいた。
ボサボサの髪で無精髭。そして俺やメリアのように白衣を着ている。
ただ、白衣にはガルパ・ラーデの象徴である竜翼の刺繍が胸にあった。
「ラッドさーん、久しぶり」
メリアが駆け寄る。
俺はそれについて行く。
「長旅ご苦労さん。迎えにきたぜ」
メリアがラッドと呼んだ人物はガルパ・ラーデの研究員だ。
俺も何度か顔を合わせている。
初めて会った時に俺が『ラッドのオッサン』と呼んだら、オッサンとは呼ばれたくないと反論を受けた。それ以来、俺はラッドと呼び捨てで呼んでいる。
年齢は三十代前半。現在恋人募集中だとか何かの席で言っていた気がする。
恋人ができないのは性格に難があるわけではないので多分不衛生に見えてしまう外見の問題だろう。
「久しいな、イヴァンさん」
ラッドの隣には金色の髪につり目の女――クウェイトがいた。
――なんでまたクウェイトが?
「半年ぶりだな。なんでクウェイトがここにいるんだよ」
「ガルパ・ラーデから今回の催し事の警備および要人警護の依頼を受けたんだ」
「要人ってこいつか」
俺がメリアを指差す。
クウェイトは頷いた。
「私とハロルドの二名が基本的に護衛することになる」
随分と待遇いいな。
そんなにメリアってすごいのか?
「ねぇ、イヴァン。そっちの女の人誰?」
「オリフィスの事件のときに一緒に守ってくれた護衛ギルドの隊長さんだ。魔素乱調の実証実験のときにいただろ」
「覚えてなーい」
そう言えば実験のとき、メリアは興奮しっぱなしで他の物が見えてなかったな。
「クウェイト=ハーヴェンだ。今日から三日間身辺警護させて貰う」
「私はメリア=マイアット。よろしくね、私のことはメリアでいいよ」
「仕事柄呼び捨ては・・・・・・メリアさん、と呼ばせてもらうがよろしいか?」
金髪二名が握手しながら自己紹介をしていた。
メリアとクウェイトの髪は並べてみてわかったが、クウェイトの方が若干黄色みが強い。
婆さんがクウェイトのことを金髪娘と呼んでいた。確かにメリアよりクウェイトが合っている気がする。
「まぁまぁ、自己紹介はそのへんにして宿に向かおうぜ。イヴァン君の腕にぶら下がってる荷物が邪魔だろ」
ラッドが先頭になって露店の並ぶ通りを歩いて行く。
その後ろに俺とメリアは追いかける。
クウェイトは一番後ろですでに警護の仕事に入っていた。
「クウェイト、さっきハロルドのオッサンの話があったがどこにいるんだ」
「今は別の行動だ。時期に合流する」
「なるほど。――しかし、今のところ何もないけどメリアは何が嫌だったんだよ」
俺はメリアに質問をする。
――答えが返ってこない。
不思議に思った俺がメリアのいた場所を見る。
「メリアが消えた!?」
「何!? いや、見ていたがそんなはずは・・・・・・」
俺とクウェイトが慌てる中、ラッドは落ち着いた様子だ。
「安心しろ。メリアの嬢ちゃんが何処行ったかは予想がつく。こっちだ」
ラッドは右に方向転換して露店の中を進んでいく。
――メリアは一体、どこへいったんだ?
アクセス解析ってなんぞ? どうも紺ノです。
今後は平日は二日で一ページ更新ぐらいになるのではないかと思います。
いやー、働いて帰ってきて書くのは体力的に難しいです。
いつも読んで下さってる方々には申し訳ないです。
土日は出勤じゃない限りは絶対更新します。
更新頻度が下がるけど、今後ともよろしくお願いします。