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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
30/162

これまでとこれから

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 オリフィスの事件から三日経った昼下がり。

 俺はラナティスの本部――警備団の訓練所で木の枝を片手に立っていた。

 

 訓練所の地面には木の枝で書いた魔導陣が一杯に描かれている。

 

 試行錯誤を重ねてようやく訓練所で実験が出来るサイズにまで落とし込めた。

 自分で自分を褒めてやりたい。


「こんなもんか」

 

 相変わらず訓練所は日差しがきつい。

 屋根を付けてくれてもいいんじゃないかと思う。

 

 白衣の袖で汗を拭う。


「何がこんなもんか、なのだ?」

「ク、クウェイト!? それにハロルドのオッサン!?」


 背後からの声に思わず上擦った。

 

 クウェイトが小さく笑う。

 ハロルドのオッサンは小さく会釈した。


「なんで、二人はここにいるんだよ」

「街を出る前の挨拶回りだ。今晩発つからな」

「そっか」

 

 俺がオリフィスと戦っていた裏でクウェイトたち護衛ギルドの面々は保管庫を謎の集団から守っていた。


 怪我人は出たが、保管庫のものは一つも盗まれていない。オリフィスの魔法を見て逃げ出していた奴らも捕らえたらしい。


 護衛ギルドの評価は今回の一件で上がること間違いなしだ。

 ラナティスとしても最高の結果で終わることができた。


 ただ問題というか――気がかりがあるとすれば、土砂に埋まったはずのオリフィスがどこからも出てこなかったことだろう。


 オリフィスのことだ。どこかでしぶとく生きている。


 ――絶対、見つけたら師匠の研究内容を吐かせてやる。


「私の質問に答えてもらってないぞ」


 クウェイトが俺を思考の中から引っ張り出す。


「これから魔素乱調(マギ・パニック)の実験をするんだ」


 クウェイトとハロルドのオッサンが同時に首を傾げた。


「まぎ・ぱにっく? ハロルド、知っているか?」

「いえ、聞いたことがありません」


 ――まぁ、聞いたことがあるはずがないよな。俺が見つけて名づけたんだから。


「簡単に言えば魔素の性質が乱れる現象だな。見ていくか?」


 俺の言葉にクウェイトとハロルドは頷いた。


 訓練場の中間地点にある見学席まで二人を俺は案内する。

 見学席には団長とマイロが座っていた。


「イヴァン! 見に来てやったぞ!」

「ギネック団長にイヴァンが面白いコトするらしいって聞いて来ちゃった」


 二人とも仕事そっちのけで俺の実験を見るらしい。


「仕事しろよ」

「「ネルシアさんには許可取ったぞ(貰った)!」」


 ――こんなのでいいのか、ラナティス。

 事件が終わったからにしても気を抜きすぎだろう。後処理とかあるはずなのに。 


「イヴァンー。早く実験しようよー!」


 訓練場の右隅。


 メリアが目を爛々とさせて、何度も何度もジャンプしていた。


 実験が上手くいけば『魔素が竜を滅ぼした』ということの証明になる。


 魔素乱調(マギ・パニック)後に乱れた魔素の一部が変質したまま固定化されて、竜殺しの魔素となる――予定だ。


 メリアは早く証明をして欲しいらしい。


「まったく、アタイを実験に利用しようとか孫弟子は何を考えてるさね」

 

 婆さんが魔導陣の中心に立つ。


 俺が魔導で魔法を発動させるために婆さんにお願いした。


 ラナティスの人間で一番魔法が使えるのが婆さんだからだ。


「メリア、記録の準備できてるんだろうなー」

「もちろん!」


 メリアが親指を立てる。


 黒くて大きな箱状の魔導機――魔素の計測装置がメリアの隣に設置されていた。

 いつでも起動して記録を取れるらしい。


 俺はゆっくりと魔導陣へと向かう。


 息を少し吐いて緊張を解す。

 俺は自分で顔を叩いて気合を入れる。 


「婆さん、頼むわ」

「一発で成功させるんだよ、孫弟子」


 プレッシャーをかけてくる婆さんに俺は苦笑いをした。


 婆さんが手に持つ魔石が魔素の分解を始める。

 魔石から光が漏れ出す。


 直視できないほどの光が訓練場の中心で輝く。

 ――『魔石による分解量=光の強さ』ということが頭を()ぎった。


「ちょ、婆さん!? それはちょっと強すぎじゃないか!?」

「魔法の滞留なしでやるならこれぐらいやらないといけないさね」


 ――これまでは師匠の夢を叶えるために師匠資料を求めていた。けど、オリフィスによってその資料は燃やされてしまった。しかし、世界の真実が閉ざされたなんて俺は微塵も思っていない。

 

 希望はある。


 メリアが採掘してきた記憶石(スフィア)だ。


 未解明の記憶石(スフィア)の内容とサルミアートという人物の正体の謎が残っている。


 記憶石(スフィア)以外にも三十年前にサルベアを襲った竜のこと、オリフィスがどうして師匠の研究を燃やしたか――とか、今思いつくだけでも切りがない。

 

 これからは記憶石(スフィア)の調査を主にしていくつもりだ。時間はかかるかもしれないが世界の真実に近づいていこう。

 

 ――着実に、一歩ずつ。


「孫弟子! しっかりやるんだよ!」


 婆さんが容赦なく炎を俺に向かって放つ。


 周囲の気遣いなんてどこにもなかった。

 俺が全部魔導で完全に操作するしかない。


「あぁ、もう、やるしかねぇじゃねぇかよ!」


 俺はラナティス本部中に響くように大きな声を出す。 


「――生成(ライズ)!」


 ――俺が世界の真実を知る一歩目はこの実験からってことで。

なんだかんだで一章完結です。どうも紺ノです。


読者の皆さんがいたから書けました。

ありがとうございます。


『竜と魔法と世界の教科書』に付き合ってくれて感謝!


読者の方から『え、教科書作ってないじゃん』とか『いろいろほっぽってない?』って言われそうです。


まぁ、その通りで紺ノは何も言えないわけですがね。


この作品はまだまだ続くので、このまま読んでくださいな。


以下、二章のあらすじ的なものを置いときます。

―― ◆ ―― ◆ ――


 オリフィスの事件後から半年たったある日、竜の研究で表彰されることになった竜大好きの金髪研究者、メリア。しかし、メリアはそんなのいらない。行きたくないと猛反発。


 俺は記録石の解明に勤しんでいたが、ネルシアの婆さんからの要請でメリアのお目付役として付き添うことになる。

 表彰が行われるのは竜の住む街と呼ばれるほど竜の目撃が多い街、ユビレト。

 ――いつものメリアなら喜んで行くのに様子が変だ。


 ユビレトに着いた俺とメリアを迎えてくれたのは知り合いの考古学者、ラッドと金髪の戦闘狂、クウェイトの二人だった。

 表彰式にパーティー、研究者同士の意見交換会などユビレトに到着してから面倒な行事の連続。


 そんな中、メリアが攫われた!?

 メリアの功績をやっかんだ奴らの仕業かそれとも別の目的が?


 次章『信頼と裏切りと金色の二人』


 イヴァン「頼むから俺に研究をさせやがれ!」


―― ◆ ―― ◆ ――


紺ノ「いやー、ノリで始めたけどなんとか一章書けて良かった」

イヴァン「ほぼ毎日投稿し始めたのが、2018年3月10日ぐらいだったか」

紺ノ「だねー。なんかアクセスされてることに驚き半分、嬉しさ半分でやってたらココまで来てた」

イヴァン「俺の夢の教科書作りはまだ始まったばっかだからエタるなよ、作者」

紺ノ「わかってるよ。見切り発車で始めたことだけど最後までやるよ」

イヴァン「ならよし。――つーわけで」


イヴァン・紺ノ「「これからも『竜と魔法と世界の教科書』をよろしくっ!」」

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