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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
29/162

決着と身勝手な兄弟子

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 七色の光球が宙を漂う森の地下、俺は悪い顔をする。


「――決着、付けようぜ。オリフィス!」


 俺は黒く竜化した指を鳴らす。


 魔素を乱して魔法が使えなくした。一番恐れていた竜殺しの付与(エンチャント)を封じ込めた。

 オリフィスを俺と同じ舞台――魔法の使えない舞台に引きずり込んでやった。


 これで俺の望んでいた竜化を主体にした戦闘ができる。


「ヴァンの(てのひら)で転がらされたってのは面白くねェな……」


 歯ぎしりをするオリフィス。

 悔しいだろうな。下に見ていた弟弟子に出し抜かれたんだから。


「でも、甘く見られたもんサ。オレ、魔法無くても強いサ」


 オリフィスが壁に向かって大剣を一振りした。

 岩の壁が剣圧で斬れる。


 頭から流血しているのにも関わらず、オリフィスからは戦意の衰えが感じられない。

 爆発で焼けた衣服の隙間から火傷しているのが見えた。


 普通の人間なら倒れていてもおかしくない状態で平然と剣を振っている。


 ――正直、こっちはヘトヘトだ。


 いくら俺が竜化で頑強になっていても体力が増えるわけではない。


 防戦で体力を削られて、毒で痺れた身体を無理やり動かして、魔素の分解を遠隔で実行した。


 体力がなくなって当たり前だった。

 外傷がないだけ。身体は動く。コンディションは最悪一歩手前。


 俺は短く息を吐く。

 

「人の皮を被った化け物がっ」

「半竜のヴァンに言われるとは思わなかったサ!」


 互いに接近するオリフィスと俺。

 大剣の突きを俺は竜の右爪で払う。

 左の竜の爪でアッパー気味にオリフィスを裂きにいく。

 爪先がオリフィスの顎の皮を薄く裂いた。


 魔法なしの肉弾戦。

 虹色の世界の中で剣と竜爪(りゅうそう)が火花を散らす。

 

 ――体力ぐらい持っていけ。今ここでオリフィスをねじ伏せることが出来るのなら、いくらでも持って行け。


 俺は一歩前に出る。


 ――俺は真実を絶対に知るんだ。誰だろうと邪魔するんじゃねぇよ。


 また一歩踏み出す。


盗人(オリフィス)如きが後継者(おれ)の邪魔するんじゃねぇよ!!」


 大剣の防御の上から俺は殴りかかる。

 オリフィスも威力を殺しきれなかったのか、足が地から離れた。


 俺は間髪無くもう一発入れる。


 ――流石(さすが)に空中では力を逃がす所がないだろう!


 何かが砕ける感覚があった。


 オリフィスの身体が背中から岩の壁に埋まる。


 鮮血を口から吐き出すオリフェス。

 発散できない竜の馬鹿力が全身に伝わって骨や臓器にダメージを与えたようだ。


「強くなって、お兄ちゃんは、嬉しいサ・・・・・・」


 息も絶え絶えでオリフィスは笑う。

 何を考えているか分からない。不気味だ。


「何笑ってるんだよ」

「いやー、ヴァンに殺されるなら、いいかなってサ」


 そのことか。


「あ、それ止めたから」

「ハァ!?――あ、イテテテ!」


 オリフィスは横っ腹を押さえる。

 大きな声を出すから傷口に響いたようだ。


「お前をどうこうするのは師匠の研究について話して貰ってからだ。――どうせ、研究資料見たんだろう」


 俺の問いにオリフィスは答えない。

 吐く意志はないのか無表情だ。


 仕方が無い。サルベアに連れ帰ろう。

 クウェイトに拷問してもらうか。


「とりあえず、ここから出るか」


 人一人ぐらいなら担いで地下空間を出ることぐらい造作もないだろう。

 オリフィスにできるだけの処置をして壁を上ろう。


「――アレを喋るなんて真っ平ごめんサ」


 オリフィスは吐き捨てるように台詞を吐いた。

 大剣を杖代わりにしてフラフラの身体を支えている。


「お前を死なせて、師匠の研究が無意味にこの世から消えるのは耐えられないんだ」

「あんなもの! 消えた方がいいサ!!」


 血を吐き出しながら講義するオリフィス。

 眼には強い想いの火が灯っていた。


 ――お前、何を見たんだよ。


 何かを成し遂げようとする熱い火がオリフィスを包み込む。


「喋るぐらいなら、ここで一緒にくたばろうサ!!」


 オリフィスが最後の力で地面に大剣を叩き付ける。

 地下が音を立てて崩れる始める。

 魔法の爆発や俺とオリフィスで崩壊寸前だったようだ。

 

「クソ野郎が!」


 俺はオリフィスを捕らえようと掴みかかる。


 ――崩れて落ちてくる石と砂が邪魔だ。


 オリフィスは俺の行動を読んでいたのか、俺の鳩尾(みぞおち)を蹴りあげた。

 痛くはないが、臓器が圧迫される。


 俺はオリフィスを睨む。

 ボロボロ身体でオリフィスは大剣を振る体勢を取っていた。


「――ウソだよ。エル先生の息子を死なせるワケないサ」


 ただただ、優しい顔だった。

 

 下から振るわれた大剣が俺を空へ打ち上げる。


 落下する岩や土と逆方向に俺の身体が飛んだ。


 身動き取りづらい状態で吹き飛ばされてしまった。このままだと地上までノンストップだ。つまり、オリフィスの回収が出来ない。

 

 ――オリフェスの奴、死んで師匠の研究をなかったことにする気かよ!


「ヴァン、研究のことなんて忘れて生きろ! 生きて、幸せになるといいサ!」


 地下からオリフェスの声が響いてくる。


「ふざけるんじゃねぇぞ! テメェは昔っからそうだ。勝手に決めて勝手に意見押しつけて! 俺の言葉なんて聴きやしねぇ! ――勝手に死ぬんじゃねぇよ! クソオリフィスがぁぁぁッ!!」


 満月の夜、俺は兄弟子のオリフィスに吠えた。

 崩れゆく地底向かって、ただ吠えた。

 

 地上に俺が着いた頃、俺とオリフィスが戦っていた地下空間は土砂に埋まっていた。

章設定ってどうやるの? どうも、紺ノです。


先に読者の皆様に感謝の言葉を――。

この度『竜と魔法と世界の教科書』は月刊アクセス数が1000突破しました。

ありがとうございます。

読者がいないと私、こんなに連日書き続けてなかったと思います。


本当にありがとう。



以下、今回の内容に対しての私の考え(そんな大層なものでもないか?)なんで飛ばしちゃって問題ないです。

―― ◆ ―― ◆ ――



イヴァン.VSオリフィスはオリフィスの行動によって強制幕引きとなりました。


師匠の夢を追う弟弟子のイヴァンとそれを諦めさせようとするオリフィスの対立。そこからのオリフィスの願い。


――色々考えた結果、今回はこうなりました。

展開に読者さんの中で納得出来る出来ないがあると思います。


『なろうの受ける終わり方、受けない終わり方』みたいな記事をどっかで見たんですけど、こういう終わり方――今回の展開みたいなの――はあまりよろしくないとか。


知ったこっちゃと。


書きたいこと書いていきます。

自分が面白いと思ったことを書き殴ります。


こんな作者の作品ですが、お付き合いいただければ嬉しいです。

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