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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
28/162

焦る銀と笑う黒

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 俺は瓦礫の影からオリフィスの居場所を探る。


 瓦礫の山を二つ挟んだ奥の壁にオリフィスはいた。

 大剣を抱え込むようにして壁にもたれ掛かっている。


「ヴァンー、お前のことだからこっち見てるンだろー。さっさと出てこいサー」


 視線で気づかれたか。


 ――なら、お言葉に甘えよう。


 全身竜化は維持。

 魔法陣を書いた紙を持って俺は走る。


生成(ライズ)!」


 俺の声が四方の壁に反響した。

 魔素の分解反応で光る魔法陣。そこから稲妻が放たれる。


錬成(ライズ)付与(エンチャント)」 


 砂がオリフィスの周りを舞う。

 大剣に砂を宿して地面に突き刺した。

 砂の壁が出来上がり、俺の稲妻を無力化する。


「しばらく出てこないと思ったら魔法陣書いてたンか」

「お前に対抗するのに魔法なしは辛いからな」

「魔法が使えたら勝てるなんて思ってるンなら間違いサ!――付与(エンチャント)


 大剣が竜殺しの魔素を纏って青白く発光する。

 オリフィスが大剣を振りかぶって突進してきた。


 俺は右手を鞄に入れて薬を()ねる。


「恨むなよ、ヴァン!」


 竜殺しの大剣が振り下ろされる。

 俺の右腕に直撃した。


 右腕に痺れがくる。でも――脱力感はない。


 俺は残っている左でオリフィスの脇腹を捕らえる。 

 瓦礫の山へオリフィスが吹き飛ぶ。

 

「まずは一発だな」


 少しだけ気が晴れた。

 でも、許す気はない。


 オリフィスが瓦礫の山から這い出てきた。


 竜殺しの攻撃を喰らった俺が動いているのが意外なのか、驚いた顔をしていた。


「な、なんで動けるサ――って、なんサ! そのベトベトしたものは!?」


 オリフィスは俺の右腕を見て、さらに驚いていた。なぜなら、右腕はスライムでコーティングされていたからだ。


 ――竜殺しの魔素に直接触れれば確実に身動きできなくなるが、間接的な場合はどうなるのか。

 そんな実験的思考から生まれたのがスライムの小手だ。


 攻撃をもらった時、痺れを微弱な電気を通されている程度の緩和してくれる。しかも脱力感なしというこれ以上にない成果を出してくれた。


「なんでもいいだろ。これでお前の攻撃は怖くなくなったぜ」

「調子に乗るのはいいけどサ……ベトベト以外のトコは普通に効くンだろっ」


 ――正解だ。 


 オリフィスが俺の足を執拗に攻撃してくるようになる。

 俺はスライムの小手とジャンプを駆使して躱す。


 魔法を交えて応戦するが、オリフィスは剣で弾いてしまう。


「さっきまでとなんも変わらんサ!」


 剣戟の速度が上がる。

 俺は焦る。


 状況が好転しないこの状況に対してではなく、俺の狙っている事象が発生しないことに対してだ。


 ――まだかよ。まだ魔素が残ってるのかよこの空間に! 計算上ではもうそろそろだ。早く。早く。早くッ!





 ――そして、時が来た。





 俺とオリフィスのいる地下に突如、七色の光球が出現する。

 一つや二つではない。無数の光球が地下空間を明るく染め上げた。


 幻想の中にいるのではないかと思わせる光の数々は宙にゆっくり浮かび上がる。


 俺は望んでいた光景を目にして、ほくそ笑んだ。

 

「なんサ、この光。……魔素の枯渇?」


 オリフィスの剣に戸惑いが移る。

 すぐさま俺はスライムの小手に魔法をかけた。


生成(ライズ)!」


 俺の右手を守っていたスライムはオリフィスの大剣に纏わりつく。

 大剣を全てスライムが飲み込む。


 ――さぁ、実験を始めよう!


 大剣をスライムの上から掴む。


「ヴァン、一体何をするつもりサ!」


 オリフィスが大剣を俺から離させようと暴れる。

 大剣は竜の力で押さえつけてるため、人の力ではピクリとも動かない。


「なぁ、オリフィス。マキラネトって植物を知っているか?」

「なんの話サ」


 ――知らないよな。師匠は魔法と魔導は教えてくれたけど薬学は教えてくれなかったからな。


「マキラネトってのは魔素の濃い場所でも生存できるように進化した植物で魔素や魔力を遮断する性質を持つんだ。――で、問題だ。お前の大剣は付与(エンチャント)された状態でスライムにはマキラネトの種を使った薬を混ぜてある。さぁ、どうなると思う?」


 オリフィスの顔が青くなる。

 

 俺の問題は魔法の問題だから理解したんだろう。

 

 付与(エンチャント)という魔法を逃がすことなく封じこめてしまう。つまり――。


「魔法の滞留現象ッ……!」

「正解だ。褒美を受け取りなッ!」


 俺は力いっぱい想いを込める。

 ――夢を諦めてたまるか、と。


「――生成(ライズ)! 炸裂(インパクト)!」


 大剣を中心に白い爆発が起こる。


 爆風で俺は壁に叩きつけられる。でもそこまで痛くない。

 竜の身体様々だ。


 オリフィスは大剣を地面に刺して吹き飛ばされないようにしていた。頭から血を流している。


「なんつーコト考えつくんサ……至近距離で滞留している魔法に魔導使うとか普通は思いついてもやらないと思うサ」


 肩で息をしているオリフィスが立ち上がる。


 体力を削ったと言え、まだ動けるようだ。

 オリフィスは剣を構えた。


「さすがにネタ切れなンだろ!――錬成(ライズ)付与(エンチャント)!」


 オリフィスは魔法を使おうとする。

 しかし――大剣は何も宿さない。


「な、錬成(ライズ)! 錬成(ライズ)!!」


 何度叫んでも魔法は発動しない。


 オリフィスの魔石――記録石(スフィア)が明滅する。


 魔素分解が上手くいってない証拠だ。

 俺は今自分が戦いの最中であることを忘れて笑う。


「ヴァン、お前何をしたんサ!」


 出会ってから一番の慌てた声をオリフィスは発した。

 俺は優越感に浸りながら答える。


「魔素を乱して性質を変えたんだよ。まぁ、どんな風になるかはわからなかったがこうなるとはな」


 酒場で団長の話を聞いたとき、俺は魔素の乱れがどうして起こるか一つの仮説を立てた。


 それは『魔素の少ない空間で規模の大きな魔法を行使すること』だ。


 魔法が使えない状況はいくつかあるが『光の球』が出てくる状況は一つしかない。


 魔素の急激な減少下でのみ見られる現象だ。


 オリフィスもどうやら気が付いていたみたいで『魔素の枯渇』と言っていた。

 でも、光の球が出るうちは魔法が使える。


 光っている球の正体は魔素だからだ。完全に魔素が枯渇していれば光球すら無くなる。


 光球は魔素。では、なぜ光るか。


 魔素が低濃度の場所で魔法を使用すると魔石や魔法陣の魔素操作範囲外で魔素が分解されてしまうからに他ならない。そして、魔素が分解される状況なんていうのはたった一つ――『魔法の行使』だけだ。

 

「乱す? もしかして、お前が魔素の枯渇させたンか」

「俺だよ。正確にはこの地下にばらまいておいた魔法陣だけどな」


 オリフィスと地下で戦闘を始める前に俺は魔法陣をいたるところに設置していた。


 魔法陣をいつ書いたか、と聞かれればクウェイトに石を投げられていた頃と答える。


 俺は戦闘中、設置した魔法陣を用いて魔素を分解し続けていたのだ。

 現象の発生という『魔法構成』の一つを実行していないから、魔導陣とでも言うべきだろうか。


「最後の決め手はオリフィス、お前の魔法だったけどな」


 仮説の『規模の大きな魔法』という部分は俺が今まで『魔素低濃度下における実験』で見たことがなかったから思いついた。

 

 魔素が低濃度なのに、規模の大きな魔法を使用することは通常では不可能だ。

 規模に見合っただけの魔力を用意しなければ魔法は不発する。魔力の源は魔素なので低濃度の場所では実験のしようがない。

 

 ――しかし、俺はやってのけた。

 

 地下という空間で魔素を一気に消費し、オリフィスの付与(エンチャント)をベースに強力な爆発魔法を行使した。

 

 結果はご覧の通りだ。

 魔素は乱れた。魔法を使うために分解したくても乱調の魔素の分解なんて出来やしない。

 

 俺の動きを止めるものはもう何もない。


「さて、これで本格的に怖い物は無くなったワケだ。決着、付けようぜ。オリフィス!」


 歯ぎしりをするオリフィス。

 俺は指を鳴らして、悪い顔をしていた。

日付変わる前に更新したかった・・・・・・。どうも、紺ノです。


どう書けばいいのかとか考えてる間に日が変わっていた。モン◯ンをやっていたわけではないです。


読者の方々、読んでいただき、毎度ありがとうございます。

今後もダラダラと書いていくのでお付き合いよろしくお願い致します。

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