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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
26/162

竜の怒りと竜の毒

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

「だってすぐに燃やしたからサ」


 オリフィスは信じられないことを淡々と言った。

 ――糸が切れる様な音が俺の中で聞こえた。


「イヴァンさん大変だ! ハロルドの班が守ってる別の保管庫でも奇妙な集団が現れたと連絡が入った!」


 クウェイトの声が遠く感じる。

 実際は数歩歩けば届く距離。しかもクウェイトは大きな声で俺に情報を伝えようとしているはずだ。

 なのに遠い。


「悪いクウェイト、警備とか後のこと任せる。あと、逃げた連中とかの捕縛も可能なら頼むわ」


 俺はクウェイトに顔を見せることなく話す。

 多分、メリアの依頼を受けた時以上に酷い顔をしている。

 

 俺の理性が『味方がいるから暴れるな』と指令を出していなかったら――醜い顔で竜の力を全開にしていた。確実に巻き込んで殺していた。


「私もオリフィスと戦うぞ」


 剣を抜く音が聞こえた。


「クウェイトッ! ……頼む」


 ――オリフィスと二人にしてくれ。

 思いを込めて言葉を紡ぐ。


「……わかった」


 クウェイトは理解してくれたのか、剣を収める音がした。

 

 ――恩にきる。もう、限界だ。


 護衛ギルドの面々の気配が俺から離れたのを感じて、一息つく。


「オリフィス――今からお前を殺す」

「ガキの頃からオレに勝てなかったヴァンが? どうやってサ」


 鼻で笑うオリフィス。

 

 ――もう、暴れていいぞ。


 俺は理性のスイッチをオフにした。


「こうやってだよ!」


 竜の左腕でオリフィスを至近距離から腹を殴りつける。

 俺の拳は回避されることなく命中する。


 そのまま力任せに振り抜くと、オリフィスはパチンコの玉のように一直線に森の中へ飛んでいく。


 俺の拳に人を殴った感触はない。あるのは金属を殴った感触。

 間違いなくあの古ぼけた大剣で防がれた。


 ――竜化の速度についてくるのかよ。


 俺は内心驚きながら、オリフィスが吹き飛んだ方向へ走る。

 防いだということは勢いを殺しているはずだ。そこまで遠くないだろう。


「イタタタ、いきなり殴るのは酷いサ」


 オリフィスの声が聞こえたのは保管庫の形が見ることの出来ない森の深部だった。

 葉と葉の間から差し込む月の光が唯一の光源だ。


 竜の全力を受けたはずなのに元気みたいだ。

 俺はオリフィスの大剣の射程外から対峙する。 


「ヴァン、本気でオレを殺すつもりだったんサ。怖い怖い」

「テメェが師匠の研究を無にしたからだろうが!」


 何も考えずに突っ込む。

 オリフィスの大剣についている魔石が暗闇の中、光を放つ。


錬成(ライズ)付与(エンチャント)!」


 風を纏った大剣が俺の前で空を切る。

 さっき見た暴風が向かってきた。


「しゃらくせぇ!!」


 俺は竜の爪で風を切り裂いてかき消す。

 爪の風圧が周りの木々を揺らした。


「やっぱ普通の魔法じゃヴァンには意味ないねェ」


 余裕そうにニヤついて大剣を肩に載せていた。


 ――イライラするんだよ、その顔が。


「ッたく、こっちはオレの名前を騙るやつらを退治しに来ただけなのにこんな目に遭うなんて思っても見なかったサ」

「なら俺はあの不審者どもに感謝しないとな。お前を殴り殺すチャンス貰ったんだからなぁ!!」


 俺はオリフィスの顔面目がけて飛びかかる。

 狙うは顔面一択。


錬成(ライズ)付与(エンチャント)


 またオリフィスは魔法を行使する。

 今度は剣の周りに砂が集まっている。


 ――やばい!


 見たことのある魔法に俺は全身を竜化させて守りを固める。

 

「串刺しサ!」


 オリフィスが剣を地に突き刺す。

 地面から砂の棘が生える。


 白衣の袖やズボンが砂の棘で破かれ、俺を覆っている黒い竜の鱗が空気に晒される。


 少し砂が口に入った。丈夫な竜の鱗の身体は無傷だ。


 口の中で嫌な食感をさせている砂を吐き出す。

 オリフィスは俺から距離をとって、拍手をしていた。


「全身竜に出来るようになってたンか! 昔は左半分しか出来なかったのに。いやぁ、成長するもんだねェ」


 随分と気の抜けた内容だった。


「ふざけた口を閉ざせよ、クソ野郎が」


 俺は竜の爪でオリフィスの喉笛を掻ききるべく、再接近する。

 オリフィスは大剣で俺の爪を弾いた。

 

「お前さん、もしかしてエル先生の研究を引き継いだンか?」


 ――エル先生だと? オリフィス、資料を燃やしたお前がどの口で師匠をそう呼ぶんだよ。


「だったらなんだよ!」

「なら――止めないといけないサ」


 オリフィスから表情が消えた。


錬成(ライズ)付与(エンチャント)


 大剣が青白く光る。


 これは俺が一度も見たことがない魔法だ。


 オリフィスの魔法――付与(エンチャント)は物に本来持ち得ない特性を宿す魔法だ。不審者を殺した時と俺への初撃は風。二撃目は砂を大剣に宿して攻撃してきた。

 

 ――今は何を宿しているんだ。見当がつかない。様子を見て動こう。


「遅いサ」


 あっという間に背後を取られた。


 背骨に固い塊をぶち当てられて、息が一瞬止まる。


 俺は吹き飛ばされて地面を転がる。だが、どうということはない。竜の身体になった俺は簡単に死なない。


 片肘をついたところで俺は異変に気づく。


 ――立ち上がれない。


 立ち上がろうと力を入れる度にピリピリと走る痺れ。

 筋肉が俺の命令を拒絶していた。


 俺はこれによく似た感覚を最近左腕に味わったことがある。

 記録石(スフィア)の事を思い出す。


「竜殺しの魔素……か?」


 ――なぜ、オリフィスが?

 

 俺の頭は理解不能の現実に襲われるのだった。

情景描写むずかしくね? 紺ノです。


平日は更新するにしても、早くてこのぐらいになりそうです。

書く速度もっと早くて、溜めれたらいいんだけどね。


読者の皆様、いつもありがとうございます。

更新をする度に見てくださる方がいて嬉しいです。


ようやく小説書くのに慣れてきたのか、まともになってきたかと思います。

前書きでも書いてますが、『ここ間違ってるよ』とか『おかしくないか?』とかなんかあったら言ってください。


即修正します。


これからも頑張って参りますので、お付き合いくださると幸いです。


―― ◆ ―― ◆ ――


明日、3/20は更新はしません。多分、帰宅して書けるようになるのが日付変わったころだと思うので。続きは3/21です。

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