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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
24/162

正体と肉体言語

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

「答えてくれ。貴方は――人間か?」


 クウェイトの質問に俺は固唾を飲んだ。


 どういう意図の質問なんだこれは。


 ――俺が半分竜であることを勘付かれたのか?


 ヘマをした記憶は俺にない。

 クウェイトの前で竜になったのは手合せの時だけだ。


 わかるはずがない。


「どういう意味だ」


 質問に質問で返して時間稼ぎをしてみる。


 クウェイトは俺の腕を離すと伏し目がちになった。

 腕はまだ拘束されたままだ。


「貴方が使う竜になる魔法のことだ。貴方は魔石による魔法が使用出来ないのに、竜になる魔法は例外的に使用出来ていた。それは貴方が人間以外の存在だからではないか?」


 俺が竜化したタイミングと婆さんが喋ってしまった俺の魔素分解の下手さからクウェイトは俺の存在に違和感を覚えていたようだ。


 婆さんが余計なことを言わなければ『鞄の中に魔石が入っていてそれで魔素を分解した』と言い訳出来たがそんなことも無理そうだ。


 俺はクウェイトに返答できなかった。

 世間一般に俺の存在が広まると非常にまずい。


 竜と人間のハーフ――俺と同じ存在はこの世にいるはずがないから。


 世間というのは善悪関係なく、異物を敵にしたてあげて同類を味方にする。

 どっかの竜好きみたいな例外もいるけど基本的に異物に居場所はない。


 その考え方は生物としては間違っていない。


 しかし、異物にも異物なりに意志があり、夢がある。他人から邪魔をされている場合じゃない。

 どうにかして切り抜けないといけない。


 ――ただ、クウェイトみたいなまっすぐな人間を騙すのは躊躇われる。

 

「無言、か」


 クウェイトが一言漏らすと、穏やかな表情で俺の腕を解放してくれた。


 俺にはクウェイトが何を考えているかわからない。


 理解に苦しんでいるとクウェイトは綺麗なお辞儀をした。


「悪かった。イヴァンさんにも事情があるのだな」


 何故か謝られた。

 さっきから何が起こっているのか理解に苦しむ。


「俺は何も答えてないぞ」

「答えてくれたさ。無言ということは私に話すか悩んだのだろう。であれば私の質問の答えとしては充分だ」

「試したのか?」


 クウェイトは首肯した。


「私は一度気になると気になって仕方がなくてな。イヴァンさんの正体が何者か知りたかったのだ」

「気になってるなら答えを言わなかった俺は不合格じゃないか」

「そういう考え方だけであれば、な。なんと言えばいいかわからないのだが、イヴァンさんの悩んでいる間は嫌な空気が無かった。私はこういう仕事をしている関係で様々な人間の嘘を見てきたが、嘘をつく人間は皆嫌な気配をさせていたものだ」


 俺にはそれがなかった、と。


 故意に嘘をつく人間は相手を騙すことを意識した行動をする。それをクウェイトは無意識に察知しているようだ。クウェイトの経験が俺にとって良い裁定を下したことに感謝する。


 俺は緊張の糸が切れて、息を吐き出した。


 喉がカラカラだ。


「あと、もう一つ理由がある。いや、これが一番の理由か」


 クウェイトが声を弾ませた。


 俺は鞄から木製の水筒を取り出して水を飲んでいた。

 ただの水がおいしい。


「私は好きになった人間に嫌われたくない」

「ごほっ!」


 水が変なところに入って()せた。

 

 ――好き? クウェイトが? なんで?


「大丈夫か?」

「こっちの台詞だ。俺はクウェイトに何もしてないぞ」


 出会ってから二日で好かれるような劇的なこともなかった。

 英雄譚の英雄ならいざ知らず、俺はただの研究者だ。


 何かが起こるようなこともない。


「手合わせをしただろう? あれで大体の人柄は掴める」


 わからないのか、という顔をクウェイトにされた。


 そういう戦闘狂だけが理解出来る肉体言語は俺には理解できない。実在する古代語すら読めないのだから無形の言語はより難解だ。


 口ぶりからわかったが恋やら愛やらの好きではなく、単純な人としての好きらしい。

 生まれて初めて好きとか面と向かって言われたから焦った。


「貴方は口や態度は悪い。しかし、ちゃんと物事をよく考えるタイプで周りに最低限の気を遣っている」


 クウェイトが当たっているかどうか判断が出来ない俺の評価を勝手に述べ始める。

 もしかして――。


「クウェイト、お前は俺が素直に謝ると思ってなかったとか言ってたがそれも手合わせで感じたことか」

「そうだな。貴方は敵と味方を区別したがっているようだったからな。出会って間もない私は貴方からしたら敵だ。そんな相手に謝るとは思えない」


 チクチクと身に覚えがあるところを突かれる。

 俺は思わずそっぽを向く。


「一応忠告しとく。人によってクウェイトの言葉は鋭利な刃になる。あと、無駄な敵を作るぞ」


 クウェイトは腰に下げている剣に手を置いていた。


「そのときは切り伏せるまでだ」


 ――クウェイトは脳筋。


 結局そこに落ち着くのだった。

 クウェイトと俺はそこから先は真面目に警備をした。時折俺が欠伸をして怒られることもあった。


 初日の警備は個人的には問題があったが、恙無(つつがな)く終わったのだった。


 オリフィスの予告した時間が着実に迫ってきていた。

書いてる間に寝落ちした紺ノ(こんの)です。


できるだけ毎日更新しますが、今回みたいに寝落ちして更新してないことがあると思います。

遅くとも三日に一回更新したいと考えていますが、現実はわからないです。


この作品は私の処女作なのでエタらない(←最近知ったので使って見たかった言葉)ように完結まで持っていきます。


今後ともよろしくお願いします。

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