警備初日と石遊び
初投稿です。
誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。
警備初日、警備対象の保管庫の前でクウェイトがご立腹だった。
原因は明白だ。
「イヴァンさん、遅刻するのはどうかと思いますが?」
俺が盛大に遅刻したため、クウェイトの口調が鋭い。
「すまない。考え事をしていて気がついたら時間が過ぎていた」
昨晩、酒場で団長の話から魔素の乱れに原因が何なのか理解した俺は夜通しでその実証方法を考えていた。それが原因で警備交代時刻を過していたことに気がつかなかった。
腹が鳴って時間を確認していなかったらもっと遅れていただろう。
「何かイヴァンさんの身に危険なことが起こったと思うではないか。まぁ、貴方なら何事もなさそうですが」
刺々しい言葉の中にクウェイトの心配していたことが窺える。
戦いが絡まないときのクウェイトは戦闘狂ではなく善人なのかもしれない。
「しかし、酷い隈ですね。寝てないのですか?」
――また隈ができてるのか。
誤魔化して遅れている警備の仕事を全うしようとしたが、事実を言うことにした。
隈がある以上、隠しても意味が無い。
「寝て、ないな」
クウェイトが呆れたように大きく溜め息をついた。
「貴方は大事な戦力です。無理はしないで頂きたい。さて、ギルドメンバー集合! 警備の順番を変更する!」
クウェイトが保管庫の周りにいたギルドメンバーを集めた。人数はクウェイトを含めて十二人いた。
ハロルドのオッサンの姿は見えなかった。
何やらクウェイトがてきぱきと指示を出しているようだ。
「では、皆警備に戻ってくれ!」
「「「わかりました!」」」
クウェイトの指示に素直に従うギルドメンバーたち。
俺の知ってるクウェイトって戦闘狂のところしかなかったけどちゃんとしているらしい。
真剣な顔をしたクウェイトが俺の所に戻ってきた。
「イヴァンさんの警護時間を昼から夜にしました。なので、これから三時間ほど仮眠を取って下さい」
「は、はい」
周りの雰囲気につられた形で返事をしてしまう。
なんというか、みっともない。
「その、気を遣わせてすまないな」
――昨日から俺、謝ることばっかだな。俺が全面的に悪いから仕方が無いんだが。
「意外ですね。貴方が素直に謝る人だとは思いませんでした」
どういう風に俺は見られてたんだ。
「保管庫の裏に野営用のテントを設置しているのでそちらで寝て下さい」
テントの場所まで俺はクウェイトに背中を押される。
そのままいくつかあるテントの中の一つに俺は押し込められた。
ここで寝ろということらしい。
中の広さは大人が三人横になれるかどうかだろう。
クウェイトの言葉に甘えて俺はテントの中で横になる。
俺の意識は抵抗することなく、まどろみの中に消えていった。
―― ◆ ―― ◆ ――
すっきりした目覚めを迎えた夜。
俺はクウェイトと二人で保管庫の正面入り口を守ることになっていた。
「おはよう、元気になったみたいですね」
クウェイトが話しかけてきた。
「おかげさまでな」
「寝た分は働いてもらいます」
昼間はわからなかったが、クウェイトが纏っている空気が手合せ前と違う気がする。注意するとき以外の話し方が前の時より大人しくなってたような。
気のせいかもしれないけど。
「わかってるさ」
俺は持ち場に着くといつも着けている腰の鞄から紙とペン、インクを取り出す。
紙には魔法陣と実証実験に必要な計算式を書いていく。
「イヴァンさん、さっき良い返事をしたばかりなのに何をしているんですか」
クウェイトが俺のやっていることを注意してきた。
これが本職なんだぞ、俺は。
「今やってる調査のために必要な土地の広さの計算と魔法陣の作成。今のうちやっておこうと思ってな」
魔素の乱れの実証するため必要な資金とかはメリアに頼めばどうにでもなると思うが、土地の広さはあらかじめ計算しておかなければ実験候補地が決めれない。また実験が失敗するだけなら別にいい。
失敗した結果、人様に迷惑をかけることは研究者としてのプライドが許さない。
俺はあらゆる意味で安全な場所で実証実験をしたいのだ。
「警備が疎かになられては困るんですよ」
クウェイトが地面から指先ほどの小石を拾ったのを目端で確認する。
「投げてくるなよ」
一応、釘を刺しておく。
「わかっています。私はそんな酷いことはしないです」
クウェイトは言葉と裏腹に投げる体勢だった。
――酷いやつだ。
俺は小石の軌道を読んで首を引っ込める。
投げられた小石は俺の首があった場所を通っていった。
当たっても痛くない程度の早さだった。
「本当に周りが見えているのですか」
「確認のために石を投げるやつがいるか」
クウェイトが自分の顔を指差していた。
――そうだな、お前だな。
「しかし、良くこんな暗がりで物が書けるものです」
俺はペンで空を指す。
「月明かりがあるからできるんだ」
夜空には少しだけ右側の欠けた月が空に昇っている。
明日は予告のあった満月が見えることだろう。
クウェイトが執拗に右腕をポリポリと掻いていた。
「右腕、なんかあったのか」
「昼間に虫に噛まれたようで……痒くてたまらないのです」
俺は症状を聞いて、いつものように腰の鞄から薬品を取り出していく。
三種の薬品――スライム状になる組み合わせ――を掌に垂らして、痒み止めの成分を持つ薬液をさらに混ぜる。
「クウェイト、右腕を出せ」
クウェイトは俺に言われるまま右腕を出した。
俺はクウェイトが引っ掻いていた部分にスライム薬を塗る。
「本来はそういう使い方をするのですか」
「まぁな。傷口を保護するためのものだからな。どうだ?」
「かなり落ち着きました。ありがとう」
俺はまた警備に戻ろうとすると、クウェイトが俺の左腕を掴んだ。
クウェイトは何か言いづらそうな顔をしていた。
まだ痒いところあるのか?
「イヴァンさん、私は我慢をするのが苦手だ」
え、なんだよ急に。
「私は嘘をつくのが嫌いだ」
クウェイトの手が逃がさないと言わんばかりにさらに強く俺の腕を掴む。
「だから、答えてくれ。貴方は――人間か?」
俺はその質問に固唾を飲むのだった。
イヴァン「これより裁判を始める」
紺ノ「待って!? なんで急に裁判やるの!? イビルジョー追加されてないからモン◯ンやってないよ!」
イヴァン「被告人は黙ってろ。てか、追加されたらするのかよ。――まぁいい。マイロ、例のものを」
マイロ「ほいよ」
酒場と絶叫の原稿が紺ノの前に投げられる。
紺ノ「これの前の話じゃん」
イヴァン「そうだな。そこに書かれている俺の強さの表現を読め」
紺ノ「半分竜の俺が本気で壊しにかかれば、十日ぐらいで街の建造物をあらかた壊せる。ただし、邪魔が入らないケースに限る。本物の竜であれば邪魔が入ろうが二日あれば余裕だ、の部分ですよね」
イヴァン「それ――修正後だろ?」
紺ノ「ギクッ!」
マイロ「こっちが修正前の原稿な」
修正前の原稿にはこう書かれている。
『半分竜の俺が本気で壊しにかかれば、十日ぐらいで壊せる。本物の竜であれば二日あれば余裕だ』
イヴァン「めっちゃ修正してるだろうが!!」
紺ノ「確認せず投稿してすんませんしたー!! 読み返したらなんかおかしくね?ってなったんですーー!!」
マイロ「この作者、ダメダメじゃね?」
―― ◆ ―― ◆ ――
失敗もネタにしよう。紺ノです。
読者の方々、本当にありがとう。読んでいる人が増えてると喜びを感じます。
私、どんどん書いていきますよー。
でも、やっぱり更新がこんな時間になってしまう。
遅いとみんな寝ちゃうよね、早い人は寝てると思う。
それもこれも――クウェイトがぁ!
クウェイトを警備のストーリーに絡ませたら、勝手にクウェイトが動き始めて3本ぐらい別の話が出来上がってました。
更新しようかと思ったものもあったんですが『これ、今度使えばよくね?』みたいになって更新遅くなりました。
今後はもっと早く、読みやすく書くようにしますね。