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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
22/162

酒場と絶叫

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 サルベアにある大衆酒場の店内で俺はマイロに頭を下げていた。


「マイロ、本当にすまない」

「ホントだぜ。散らかすだけ散らかして俺を資料庫に一人にするんだからな」


 料理とエールの入ったジョッキが並らんでいるテーブルの上にマイロは肘をついていた。


「悪かったって。ここの飯を奢るから許してくれ」


 俺が研究室に帰る途中、夕日が差し込む資料庫で泣きながら本を戻しているマイロを見つけたのだ。

 

 一言と謝った後、二人で資料を整理した。そして、マイロの仕事が終わったので飯を一緒に食べることになり、現在に至っている。

 

 メリアに魔素の乱れと竜の関係を確認しに行くことで頭がいっぱいになり、手伝いを忘れていたのが申し訳ない。


「まぁ、俺はお前が研究のことになると周りが見えなくなるのは知ってるからいいけどな」


 お互いに何か悪いことをすると飯を奢るのが俺たちの中で暗黙の了解となっている節がある。


 マイロも理解しているのか、許してくれたようだ。

 エールの入ったジョッキをマイロが前に突き出す。


 俺は数種の果汁を混ぜたジュースを持って、乾杯する。

 酒は飲まない。思考が鈍る。


「で、研究の方はどうなんだ?」

「研究というか調査だな。はっきり言って最悪だ。進捗が悪すぎる」


 記録石(スフィア)が調査に絡んできていることは決して言わない。

 細心の注意を払って会話をする。


「へぇ、珍しい。イヴァンのことだからサクっと終わらせると思ってた」

「トントン拍子に作業が進むことの方が稀だ。答えが存在するかわからないものに立ち向かうことだってあるからな」


 研究者としてやっていく上で必要な物は三つあると俺は思う。失敗しても挫けない精神力と研究につぎ込めるだけの潤沢な資金、そして答えを導き出すキッカケを掴む運だ。


 どれか一つでも無くなってしまうと研究者として生きて行くには厳しいだろう。


「それ、やめたくならないのか? オレなら辛すぎてやめてるわ」


 マイロの言葉に俺は鳥肉のフライに食らい付くのを止めて思考する。


 研究者をやめることなんて考えたことがなかった。

 やめるときは世界の真実を教科書に載せた後だろう。その後のことは正直思いつかない。


「研究者をやめたらすぐに警備団の方でお前を貰ってやるよ」


 俺とマイロのテーブルの横ででかい声を発する中年がいた。


「ギネック団長!?」

「おう! お前たちが見えたから来た。俺も混ぜてくれ!」


 マイロがおっかなびっくりした表情で隣の席に団長を座らせた。

 俺は周りの人に大声を出してすみません、と頭を下げる。


 団長とマイロと俺という組み合わせの食事が始まった。


 ―― ◆ ―― ◆ ――


 一時間ぐらい経った頃――。


「あのクウェイトとかいうねぇちゃん綺麗だったろ!」

「オレはメリアさんの方がカワイイと思います!」


 酔っ払った中年と青年が異性の話で張り合い始めていた。


 俺は話を余所に追加で頼んだサラダを食べる。

 あ、ドレッシングさっぱりしてて食いやすい。


「「なぁ、イヴァン! どっちが上だ!!」」


 男二人が俺に判断を委ねてきた。


 どっち選んでも地雷じゃないか。


 クウェイト選んだ場合、なんかの拍子にメリアまで伝わったらグチグチ言われるだろう。メリアを選んだ場合は団長が酔っ払った勢いで喧嘩吹っ掛けてきそうだし――どうしろと?


「俺があと三十年若かったらクウェイトのねぇちゃんに告白してたな」

「ギネック団長、奥さんに言いつけますよ?」

「うるせぇ! 綺麗な女見て綺麗って言って何が悪い!」


 マイロのツッコミに団長がキレていた。

 ――あれ、今三十年って団長言ったか?


「ちょ、ちょっと団長! 三十年って言ったか?」

「おう! 俺が警備団に入って二年目ぐらいの頃だな。モテモテだったんだぞ?」


 ――そんな話は聞いてない。俺が聞きたいのは別の話だ。


「三十年前に何か変な事がなかったか? 例えば――竜が街を襲った、とか」


 俺はあくまで例えば、という風に話を振ってみる。

 団長は酔いが覚めたように真顔になった。


「来たな。俺は当時、下っ端(したっぱ)だったから物資の補給と怪我人の救護の手伝いしかさせてもらえなかった」

「その当時のことを教えてくれないか? 今やってる調査で三十年前の事が知りたいんだ」


 団長は腕を組んで、静かに目を瞑っていた。

 数秒後、団長にしては珍しく小さな声で話し始めた。


「竜は街の西側の森で暴れていたんだ。ちょうど今ラナティスの保管庫が建っている付近だな。さっきも言ったが俺は戦闘には参加していないから戦況までは詳しくはわからない。だが、三日ほど戦ったところで竜は急に大人しくなって飛び去っていった」

「竜は退治しなかったんですか?」


 マイロの質問に団長は首を横に振る。


「馬鹿を言うな。退治しようとすれば死人は千人単位だ。竜が勝手にどこかへ飛んでいかなければこの街そのものがなくなっていただろうよ」


 団長の言っていることは間違っていないだろう。


 半分竜の俺が本気で壊しにかかれば、十日ぐらいで街の建造物をあらかた壊せる。ただし、邪魔が入らないケースに限る。

 本物の竜であれば邪魔が入ろうが二日あれば余裕だ。


「竜が来る一週間ぐらい前は何もなかったのか」


 魔素の乱れが発生し始めた頃の情報を俺は聞き出そうとする。

 うーん、と団長は唸った。


「あ、そう言えば魔法が使えなくなっていたな」

「魔法が?」


 俺は思わず同じ言葉を繰り返す。


「あぁ、魔法の練習をしていたときに急に魔法が使えなくなっていたな」


 警備団の日誌にはそんなこと書いてなかったぞ。誰か知らないが書いてなかったな。


「あのときは魔法の研究しているやつらに言ったら、計測がどうのこうのとか言ってたような。すまん。そこまでしか思い出せない」


 定期計測の話でも研究者たちは言っていたと俺は推測する。

 なら、魔法が使えないと言う状況はどうして起こったのか。

 

 ――心当たりが一つある。


「団長。そのとき発光現象――正確には光の球を見なかったか?」

「え、イヴァンはなんでそのこと知ってるんだ?」


 ――確定だ。

 俺の頭の中で一つの結論が導き出された。


「でもどうやって実証すればいいんだよぉぉぉ!」


 俺はテーブルを力強く叩きながら叫んだ。

 

 ――答えがわかったのにどうやって実証したらいいかわかんねぇぇ!! 費用はどれぐらい掛かるんだよ。実証するために広大な土地とか必要だし!


「お客様! テーブルが! テーブルが壊れてしまいます!」

「おいマイロ! イヴァンが壊れたぞ!?」

「あー、研究関連のときどきこうなるんすよ……」

「わかんねぇぇぇ!!」


 俺の絶叫が大衆酒場を支配していた。


 ――余談であるが、このあと俺はこの店から出入り禁止を喰らったのだった。

読者がアクセスしてくれるので、モチベが上がって毎日投稿できます。

どうも、紺ノ(こんの)です。


読者の皆様にありがとうを言う前に言わせて欲しい。


『今回の話長くね!? 大丈夫かこれ!?』


いつも2000文字ぐらいで投稿しようとしているのですが、なんか長くなります。


――閑話休題。


読者の皆様ありがとうございます。二日続けてアクセスが100超えるとか思ってもみませんでした。

今後の予定なのですが、仕事に復帰した関係で夜に更新します。


私、書き溜めとかしてないので家帰ってから書いて、出来上がったら更新するって感じでやっていきます。


あともう一点。

加筆修正について。

これ、前にも書いたと思いますが章が終わったら今まで書いた物見直して修正します。

早さを求めるとなんか描写少なくなったりしてるんですよね。

始めからやれよ、と言われる方がいると思いますが――すみません。紺ノにそんな技術はないです。


温かい目で見守っていただけたらなぁ・・・・・・と、勝手ながら思っています。


さぁて、創作活動頑張るべー!


―― ◆ ―― ◆ ――


イヴァン「この小説の世界で酒が出てきたけどいいの? 俺十八だぜ?」

紺ノ「十八でお酒飲めるってファンタジーじゃね?」

イヴァン「ファンタジーなめんなよ、作者」

紺ノ「あ、痛い! アイアンクローはやめてっーー!?」

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