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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
21/162

否定と決意

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 俺はメリアの研究室の扉を力任せに開けた。


 扉と壁がぶつかる音が研究室だけでなく、廊下にも響いた。


 昨日、婆さんに片付けろと言われていたはずなの研究室は相変わらず汚いままだった。その中心にメリアが丸まっていた。


「ごめんなさい! ネルシアさんまだ片付け終わってないです! 別に昔の資料を読みふけっていたとか、竜の角を眺めて時間を忘れていたとかありませんからぁっ!」


 俺を婆さんだと思って口早に言い訳をしていた。

 猫のように丸っこくなっているメリアの背中を優しく叩く。


「メリア、俺だ」

「へ? イヴァン? イヴァンだ……良かったよぉ……」


 メリアは俺の顔を見て安堵したようだ。


 ――婆さん怒ったら怖いからな。


 メリアも十分理解しているはずなのに竜の骨格を記したものや竜の言語解読などといった資料がが散らばっている。

 何らかの骨格の固定器具まで転がっていた。


 前回見ていない固定器具が床にあるところを見るに記録石(スフィア)を受け取った後、さらに酷くしたらしい。


 俺が研究に没頭しているときといい勝負だ。


「竜について聞きたいことがある」


 メリアは生気を取り戻すところか、溢れ出しそうなほど輝いていた。

 竜について、という言葉がキッカケだと思う。

 

「任せて! 竜のことは何でも聞いてよ!」


 メリアは立ち上がって胸を張る。

 竜の知識を持っているメリアなら俺の疑問に答えてくれるはずだ。


「竜が現れるとき、魔素が乱れるとか聞いたことがないか?」


 もし、魔素が乱れるのだとしたらメリアの依頼である『魔素は人を生かした。代わりに竜を滅ぼした』の真偽の手掛かりとなるだろう。


 俺の予想としては魔素が乱れて変質してしまった結果、魔素の毒性が変化すると睨んでいる。


「何それ? 聞いたことないよ」


 メリアの解答は俺を凍り付かせた。


「だいたいそんなことが分かっているなら、魔素の乱れだかなんかを判定して竜探知機とか作れるよね? あれ、自分で言っててすごく欲しくなっちゃうよ」


 確かに、と俺は頭で納得してしまう。

 世の中に竜を探知する道具は存在しない。


 ――もしかして何か見落としてるのか。


「どうしてそんなことを聞いてくるの?」


 メリアの質問に俺は資料庫で見つけた資料と日誌、そして俺の仮説について説明する。

 感慨深そうにメリアは考え込んでいた。


「へぇ、三十年前か。私、生まれてないね。紅竜を目の前で見たかったなぁ」


 出てきた感想はメリアらしいものだった。


「手掛かりだと思ったんだけどな」

「ん? 手掛かり以外の何物でもないでしょ」


 俺が落胆しているとメリアがはっきりと言った。

 メリアには何か分かるらしい。


「竜が怒るって相当のことだよ。何もしてないはずの街を襲う事なんてまずないからね。きっと竜が怒る何かがあったんだよ」

「その何かが魔素の乱れか。いや、でも何があって乱れたのか結局分からず終いじゃないか」


 俺は頭を掻きむしる。


 ――何かを見落としているかまだ情報が足りないか。


 今の俺には判断が付かない。


 メリアは思い出したように口を開いた。


「イヴァンは精霊って聞いたことある?」

「聞いたことはあるぞ。けど、あれはお伽噺の中の存在だろ」


 精霊のお伽噺――俗に精霊物語と呼ばれるものだ。

 子供から老人までどの年代でも知っている話で俺も師匠に何度も聞かされた。


 その中に竜が何回か出てくるのだが、精霊と竜は出会う度に喧嘩をするのだ。喧嘩のキッカケは些細なことだったと思う。お話が終わっても精霊と竜は最後まで仲良くなることはなかった。


「まさか、精霊と竜が喧嘩してたなんて言うんじゃないよな」

「でもそっちの方がロマンチックじゃないかな」


 研究にロマンチックさは必要だろうか。


 俺が研究者になったのは師匠の夢を叶えるためには一番都合がよかったからだ。ロマンを求めて研究者になったわけではないのでわからない感情だ。


「ところで警備の方はどうなったのかな?」

「明日から保管庫に泊まりがけで警備だよ」

「絶対に! ぜっーったいに私の資料を盗ませないでね。あ、それ以外はどうでもいいよ」


 ――どうでもよくはないだろ。


 オリフィスのバカは記録石(スフィア)が目的だと思うからメリアの物なんて目もくれないと思うけど。


「はいはい」

「その適当な返事は何?」


 俺に詰め寄るメリア。

 竜が絡むと性格変わるよな。


「わかったわかった。とりあえず俺の用事は済んだし帰るわ。別の視点から魔素の乱れにアプローチかけないと駄目だとわかったしな」

「あ、ちょっと待って」


 呼び止められた俺は扉の前で立ち止まる。


 メリアは本棚から一冊の本を取り出す。そして、その本を俺に差し出した。

 前にも見た光景のため、俺は恐る恐るメリアに尋ねる。


「この中に記録石(スフィア)が入ってるなんてことはないよな」

「さすがに私もそんなことはしないってば!」


 メリアだからやりかねないんだ。


 俺は本を受け取る。


 ――タイトル、『誰でもわかる竜のアレコレ』。著者、メリア=マイアット。


「お前の本じゃねぇか!」


 俺は思わず本を投げ捨てる。


「あぁ! 善意であげようとしたのに!」

「メリアに聞いた方が何倍も早いだろうが」

「イヴァンもこれを機に竜好きになろうよー。一緒に竜の研究しようよー」

 

 メリアは俺が投げ捨てた本を拾って顔に押し付けてくる。

 

「鬱陶しい! 婆さんに研究室片付けてないことチクるぞ」

「それだけは! それだけはぁ~!」


 白衣を掴んでイヤイヤするメリア。


 俺はメリアを引きはがして研究室から出て行く。

 婆さんのところへは行かない。


「明日の準備もあるし、一旦帰るか」


 振り出しに戻ってしまった感のある調査をまとめるためにも一度自分の研究室に戻ることにしよう。

 竜が魔素を乱さないというショックも抜けきらないので落ち着けるためにもそうしよう。


 きっと今の俺みたいに昔の研究者は新発見と否定に振り回されていたのだろう。これを何度も何度も味わえば心が折れるのも無理はない。


 しかし、俺にはやらなくちゃいけないことだ。

 俺はポケットに入っている記録石(スフィア)を握りしめる。


 ――魔素の乱れがどうして起こったか解明できれば大きく前進することができる。


 そう信じて調査の続行を決意した。

 

『PV1000突破してるぜ? 一日のアクセス100超えてたぜ? どうなってるの?』

そんな事を考えていた紺ノ(こんの)です。


ホント、読者には頭上がらないです。ありがとうございます。

新規の方も私が身体壊す前から読んでくれてた方もありがとうございます。


今後も頑張るので、よろしくお願いします!

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