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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
20/162

古い資料と手掛かり

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 地下牢の騒動があった翌日。


 俺はまたラナティスの警備部へ来ていた。

 昨日聞き損ねた警備の内容の確認をするためだ。


 団長を探していたがどこにもいない。代わりにマイロを見つけた。


 小さな木箱を五個積み重ねて歩いている。

 木箱が重いのか、おぼつかない足取りだった。


「マイロ、なにやってるんだ」


 俺は見ていられず、マイロから木箱を三つ奪い取る。


「へ? あ、イヴァン。サンキュー」


 マイロは汗を掻いている。


 木箱にはぎっしりと本と紙が詰められていた。

 重量としては子供一人分はあるだろう。一人の人間が一度に運ぶ量ではない。


「アホだな」

「出会ってすぐにアホって言うのは酷くないか?」

「んじゃ、バカだ」

「そういう話をしているんじゃないんだけど」


 マイロは呆れたように言った。しかし、口元は笑っている。


「で、この木箱の中身はなんだ」

「古くなった資料だとよ。元々複写師に頼んで複製するつもりだったらしいけど、資料とか開放厳禁になったから資料庫に戻すんだよ」


 資料庫まで警備側から十五分ほどかかる。

 一気に運べれば楽かもしれないが、さすがに重量の観点からみたら無謀だろう。


「やっぱバカだな」

「イヴァンはさっきからオレを貶して楽しいのか?」

「どうしてそう思うんだ」

「ですよねー。お前は本心からそういうことを言うよなー。傷つくわー。超傷つくわー」


 俺とマイロは資料庫に着くまでの間、他愛のない話を続けたのだった。


―― ◆ ―― ◆ ――


「いやー、イヴァンいて助かるわ。マジで」

「黙って本を戻せよ。さっさとしないと日が暮れるぞ」


 資料庫では指定されている棚に戻す作業をしていた。


 本は全てで六十二冊。紐で纏められた資料の束が二十八束もある。

 なかなかの重労働だ。これは絶対に一人でやるものではない。


 マイロはかなり面倒な仕事を押しつけられたのではなかろうか。


「そういや、イヴァンはなんで警備のところにいたんだ?」


 俺の後ろで作業をしているマイロが質問してきた。


「そうだ。俺、昨日警備の内容聞いてなかったから来たんだった」


 こんな手伝いをしに来たんじゃなかった。

 俺は資料を戻す手が止まってしまう。


「あー、クウェイトさんとの模擬戦の後に地下牢の騒ぎだったからな」


 そういうとマイロは警備兵の鎧の隙間から紙を取り出した。


「えーっと。イヴァンは――予告されていた満月の日の前日から保管庫の警備だな」


 紙には配置や時間などが書かれていたようだ。


 ――重要な情報を持ち歩くのはどうかと思う。

 

 しかし俺には注意できない。今日もポケットに記録石(スフィア)を忍ばせているからだ。


「満月の日って何時だよ」

「明後日だな。ん? お前、クウェイトさんと同じ班じゃないか」


 マイロの言葉に俺は脱力した。


 俺は護衛ギルド組に組み込まれているらしい。

 というか、いいのかよ外部の人間に保管庫任せて。


「あー、そうか。了解した」


 クウェイトは悪い奴ではないのだが妙な部分で過激になる。

 ハロルドのオッサンがいるからバランスがとれているのだろう。


 俺は気を取り直して、資料を棚に戻す作業を再開する。

 木箱に手を突っ込んで、資料のタイトルを確認する。


 ――『魔素の定期計測記録』


「あっ!?」

「イヴァンどうした!」


 俺の声に驚いたマイロが振り返る。


「いや、すまん。ちょっと探していたものがあったからな」

「手伝って貰ってるから見てもいいけど見つからんようにしてくれよー」

「わかってる」


 不意打ちにもほどがある。


 俺は観測記録に目を通す。

 時期を確認すると四十年前のものだ。


 文字が少々かすれているが読めないこともない。

 読むにつれて疑問が沸く。


「なんでだ?」


 俺は小さく呟く。


 ――計測された数値にバラつきがないのだ。


 三十年前の資料には乱れた値を平均化したものが載っていたはずだ。

 慌てて俺は三十年前の観測記録を棚から探し出す。


「マイロすまん。手伝いは一時中止だ」

「へ、イヴァン!?」


 俺は三十年前の資料と四十年前の資料を机に並べて比較する。


 この数値の乱れは計測道具の品質の問題ではないと仮定した場合、何が原因で乱れたんだ。


 三十年前に何が起こったんだ。


 どこかに近隣で起こった事件がまとめられた資料があったはずだ。


「マイロ! 事件まとめたりしてる資料棚どこかわかるか?」

「左から三番目の棚に警備部の日誌があるけど」

「それだ!」


 俺は言われた棚から三十年前の日誌を取り出す。

 計測日時と日誌の日付が同じページを開いて、一ページ一ページ確認していく。

 

「イヴァンは何調べてるんだよ」


 マイロが作業を止めて俺の方に来る。


「竜だ。竜がサルベアの街に来ていたんだ」


 日誌にはこう綴られていた。


『見慣れぬ紅い竜が空から降ってきた。竜は怒り狂っており森を火の海に変えていた。街を守るために騎士団とともに戦い、竜を追い返すことに成功。しかし、死傷者は百を超えていた』と。


 魔素の計測の乱れは竜の来る一週間前から竜が立ち去るまで続いていた。


「竜のことはメリアか……!」


 俺は資料庫の扉を力強く開ける。

 そして、メリアの研究室まで全力疾走するのだった。


―― ◆ ―― ◆ ――


 資料庫に残されたマイロは誰も見ていないところで呟く。


「片付け、誰がすると思ってるんだよ」

 

読者の方々のアクセス数でモチベが左右される紺ノ(こんの)です。


なんとか今日も更新出来た。

多分この調子でいけば十ページぐらいでこの章は完結するのではないかなーとか思ってます。

いつも想定より膨らむのでなんとも言えないですけどね。


あと、あらすじを更新しました。

なろうでアクセス数稼ぐにはあらすじちゃんと書けよ、とか書いてあったので・・・・・・。


とりあえず直近の目標としてはPV1000超え。その後は評価50pt超えかな?


頑張って更新していくので今後ともよろしくお願い致します。

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