幕間:疑念を抱く護衛ギルド二人組
初投稿です。
誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。
私――クウェルト=ハーヴェンは宿屋の一室で窓から夜空を眺めながら物思いにふける。
思い出すのはイヴァンさんとの手合わせだ。
先手必勝とばかりに飛び込んだはよかったが一撃もまともに当てられなかった。それどころか一泡吹かせるために奥の手である魔法を使ったのにこちらも綺麗に防がれた。
――あれのどこが普通の研究員なのか。
「しかし、素晴らしいものだった……。願わくば、もう一度手合わせをして欲しいものだ」
私はそれなりに鍛錬を積んでいるがイヴァンさんには遠く及ばないのだろう。
木剣ではなく真剣であれば善戦できたかも怪しいところだ。
彼は私の魔法を止めるときには本気になったと思うが、それ以外は力の半分も出していたかわからない。
底の見えない相手とは彼のことを言うのかもしれない。
頭の中でイヴァン=ルーカスという人物について考えていると、扉を二回ノックする音が聞こえた。
「ハーヴェン隊長、いらっしゃいますか?」
ハロルドだ。
「入ってこい」
私がそういうとハロルドは静かに部屋に入ってきた。
厳つい顔がほんのり赤い。そしてアルコールの匂いがする。
「お前、一階で飲んできたな」
一階にはバー兼レストランがある。そこで部下たちはどんちゃん騒ぎをしているに違いない。
宿はラナティスが護衛ギルド用――私とハロルドを含めて二十四名――に貸切にしてくれているので他の客に迷惑を掛けないのが救いだ。
「すみません。断ったのですが飲まされました。それよりもこれを」
ハロルドはそういうと私に一枚の用紙を渡してきた。
報告書だ。
私はオリフィスの情報を聞けなかったのでハロルドがまとめた内容に目を通す。
――まぁ、情報が聞けなかったのはハロルドが私を追い返したからなのだが。
「報告書の内容は理解した。下がっていいぞ」
ハロルドは私がそういっても部屋を出なかった。
――なんだ。一杯しか飲んでないのに酔っぱらって耳が遠くなっているのか?
「イヴァン=ルーカスについて少し話があります」
「ふむ、聞こうか」
話がある、と言ったときのハロルドは真剣に何かを案じて助言をしてくれることを知っている。
私は姿勢を正してハロルドの目を見る。
「独自で彼の周りを調べました。しかし、彼の正体が掴めませんでした」
「待て、そんなこと私は許してないぞ」
私に断りもなく調査したことも問題だが、それ以上に調査対象がイヴァンさんであったことに腹が立った。
依頼元であるラナティスの一員であり、今後警備をするにあたって仲間となる人物だ。
――不敬も甚だしい。
「わかっています。ですが、ルーカスという姓は魔法師の中であまり良い印象がないので一応調べました」
「ほう、それは初耳だ」
私は魔法を使うが魔法師というわけではない。魔法はあくまで奥の手だ。基本は剣で戦う。しかし、ハロルドは純粋な魔法師だ。魔法の世界については彼の方が何倍も詳しい。
また彼は世間の目を気にする。その性質からか他人の悪口に類することは今まで彼から聞いたことがなかった。
「ルーカスという魔法師は過去に魔法を冒涜した技術を生み出しました。それが発端で魔法界から追放されたと聞いています」
魔法を冒涜した、というのは私にはよくわからない。しかし、魔法の技術という意味であれば今日体験したものがある。
「その技術とは魔導、か?」
「はい。そしてイヴァン=ルーカスは私たちには言っていないことがあります」
「なんだそれは?」
「あの肉体の変化です。竜のような異形になっていた腕です」
それなら確か『竜の身体に変化させる魔法』だと聞いた。
私はその言葉を信じたがハロルドはその言葉に疑念を抱いていたらしい。
「彼は魔石による魔素の分解が下手で他人の魔力を使って魔法を行使するらしいですね」
ラナティスの代表――ネルシア=アルトレイはそう言っていた。
ハロルドは真剣な面持ちで言葉を続けた。
「思い出して下さい。――ハーヴェン隊長が魔法を使う前に肉体を変化させていませんでしたか? 矛盾していませんか?」
ハロルドの指摘で気づかされる。
私は目端で剣を吹き飛ばされるときに人の腕ではないイヴァンさんを見ていた。
しかし彼があのとき魔法が使えない状態なのだとしたら――彼は一体どうやって竜になったんだ?
私の中でモヤモヤとした何かが渦巻くのだった。
衝動で(以下略
なんだかんだ戦闘以外ではクウェイトはちゃんとしてます。
そして、イヴァンの正体バレピンチですね。
このあとは・・・・・・どうなるんだろ?