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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
18/162

偽者と取引

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

 地下牢が壊されていると聞いた俺たちは慌てて地下牢へと向かった。


 クウェイトとハロルドのオッサンは部外者であるが、この騒動がオリフィス関連である可能性も考慮して一緒にいる。


 地下牢では二名の警備兵が裁断された鉄格子を集めていた。 


「何があった」


 団長が二名の警備兵に問いかけた。

 

「わかりません。見回りに来たらこうなっていたので」

「今確認出来ているのは逃走者がゼロということです」


 俺は集められている鉄格子の欠片を手に取る。


 切断面に触れてみたが皮膚が引っかかるような突起がない。綺麗な断面だ。鉄をこんな風に切るのは特別な方法が必要だろう。


「オリフィスだぜ」


 問題の牢屋の正面にある牢屋から声が飛んできた。


 オリフィス、という言葉に地下牢にいる人間の目つきが鋭くなる。


 俺は負の感情から左手が勝手に竜化しそうになっているのを押さえ込んでいた。それでも左肩から肘まで竜になってしまっていた。


 深呼吸をして、俺は落ち着かせる。


「おいおいそんな大勢で俺を睨むんじゃねぇよ。おっかねぇ」

 

 声の主は怯えた様子で姿を現す。


 偽オリフィスのハゲたおっさんだ。


 てっきりサルベアの騎士団へ引き渡されていると思っていたがラナティスの地下牢にまだいたようだ。


「今オリフィスとか言ったか?」

 

 団長が話を進める。

 偽オリフィスはニンマリ顔で頷いた。


「取引しようや。俺をここから釈放してくれるなら話してやらんこともないぜ?」


 偽オリフィスの笑顔の意味を理解する。


 情報は欲しい。しかし、悪人を逃がすようなことはできない。

 取引に団長は首を横に振る。


 俺なら悩むところを団長は即決だった。


「それはできないな」

「もう少し考えてもいいんじゃないか?」

「無理だ。お前は過去に何度も魔石を盗んでいる。ここで逃がせばまたどこかで同じ事をするからな」


 とりつく島もない団長の言葉に偽オリフィスは口をへの字にする。

 

「情報を吐かせるために拷問でもしたらどうだ?」


 クウェイトが物騒なことを口走った。


 金髪の目立つ髪と真面目そうな顔つきから想像を超えることを当たり前のように言っていることにちょっと引く。


 偽オリフィスも牢屋の奥まで後ずさり、小さくなっていた。


「ハーヴェン隊長、少し黙っていて下さい。ギルドの品位に関わります」

「間違ったことは言っていないはずだが?」

「発言が過激なのです。大体さっきの手合わせだってルーカスさんが――」


 ハロルドのオッサンがクウェイトを窘めていた。

 クウェイトは地雷を踏んでしまったという顔をしていた。


 あっちはあっちに任せよう。


「おっさん、釈放以外にして欲しいことなんかないか?」


 俺はオリフィスの情報が欲しいので、偽オリフィスに他の条件を尋ねる。


「え、あ、そうだな。うまい飯と酒。あとは女ぐらいか」


 欲に忠実なハゲだった。


 俺は団長の顔を伺う。

 団長は腕を組んで思案した後、口を開いた。


「女は無理だが、飯と酒は用意しよう」

「俺がここいる間ずっと手配してくれるか?」

「情報が正しいものであればそうしよう」


 団長もオリフィスの情報が欲しかったのだろう。罪人にここまで譲歩することはまずない。

 偽オリフィスは数秒腕を組んで悩んでいた。


「わかった。話すぜ。代わりに普通に生活してたら食えないようないいモン食わせてくれよな」


―― ◆ ―― ◆ ――


 偽オリフィスとの取引が成立してから三十分後、偽オリフィスに飯が届けられた。


 見たことのないぐらい分厚いステーキと焼きたてのパン、水が鉄格子の中にある。


 地下牢に肉の焼ける香ばしい匂いが籠る。こんな牢屋どこに行っても存在しないだろう。

 偽オリフィスはご馳走を目の前に不満そうだった。


「酒は?」

「オリフィスの事を話終わってからだ」

「っけ、気前悪いの」


 偽オリフィスが悪態をつく。


 団長はそれを眉一つ動かさないで聞き流していた。


 今、地下牢に残っているのは俺と団長とハロルドのオッサンの三人だ。

 他の人間はそれぞれの仕事に戻った。一人は追い返される形だった。誰とは言わないけど。


「で、何があったんだ。正直に話せ」

「わーってるよ。何から話したもんかな。――」


 パンと肉を頬張りながら偽オリフィスは話し始めた。


 偽オリフィスの話を聞く限り、オリフィスは近々何かをやらかしそうなことを仄めかしていたようだ。


 具体的な内容はない。しかし、銀髪で男か女かわかりづらいという容姿は俺のよく知るオリフィスの特徴と一緒だった。


 ――やっと師匠の資料を取り返せる。


 師匠の夢である教科書作りのためには師匠の資料が必要だ。

 一刻も早く回収しなければいけない。


「ルーカスさん、どうかしましたか? 随分と険しい顔をされて」


 ハロルドのオッサンが俺の顔を見て眉を下げていた。


「いや、なんでもない。研究について考えていただけだ」


 適当に誤魔化すことにした。


 俺とオリフィスが兄弟弟子であることが露呈してしまうと今後の行動で変に勘ぐられる可能性があるからだ。

 

「なぁ、酒くれよ。話すこと話したぜ」


 偽オリフィスが団長に催促していた。

 団長は後で持って来させる、とだけ言い残して地下牢から立ち去った。ハロルドのオッサンも団長と一緒に立ち去る。


 俺はというと、オリフィスが入っていたという牢屋を眺めていた。


 何故、あいつは牢屋の中にいたのだろうか。


「おい、イヴァン」


 偽オリフィスが俺の名前を呼ぶ。


「お前に名乗った覚えはないぞ」

「その辺はいいじゃねぇか。なぁ、お前さん――オリフィスの弟なのか」


 左腕がざわつき、一瞬で竜になる。


 俺は思わず鉄格子の隙間に竜の手を突っ込んで偽オリフィスの顔を握っていた。


 人の骨が壊れないぎりぎりの力を加え続ける。


「――テメェ、それ以上喋ってみろ。ぶち殺すぞ」


 偽オリフィスが涙目になって首を縦に振る。


 俺は偽オリフィスを解放した。


 咳き込む偽オリフィスの顔には握られた跡がくっきり残っている。


 ――事情も知らない奴がノコノコ俺のこと探ろうとするからそうなるんだ。


 俺はむしゃくしゃしながら地下牢を後にする。


「あ、警備の話聞きそびれた。明日でいいか」


 また俺はいつもの調子に戻って記録石(スフィア)の調査に戻るのだった。


読者の方、いつもありがとうございます。紺ノ(こんの)です。

『やっぱり1ページ使ったよ、これ・・・・・・』というのが書き終わった後の感想です。

ここ数ページは更新ペース早めでお送りしています。


この後の展開は頭の中にあるので文字に起こしていく作業をするのみです。(なお、2018/03/11現在未着手な模様)

ちゃっちゃと書くべ。頑張んべー。(汗)


―― ◆ ―― ◆ ――


イヴァン「この作品、『竜と魔法と世界の教科書』だろ?」

メリア「そうだね」

イヴァン「俺、戦ってばっかだけどいいの? てか俺、研究者なんだけど」

メリア「あーそういえば、私も最近出番がないなー? 私、ヒロインだと思ったんだけどなぁ」

イヴァン・メリア「作者、どういうこと(かな)?」

紺ノ「大人の事情です・・・・・・」

メリア「都合のいい言葉の代名詞だよ!?」

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