警備団と会議室
初投稿です。
誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。
ラナティス本部の廊下のど真ん中を婆さんは堂々と歩いていた。
俺がその後ろを歩いていると、周囲の研究者たちから嫉妬や殺意の籠った目を向けられる。
今は俺と婆さんの二人だけだ。
メリアは婆さんから研究室の整理をしてこい、と言われて別行動となっている。ここにメリアがいたら男の研究員たちの視線がさらに鋭くなっていただろう。
――まったく怖くはないけど。
「婆さん、俺に警備させるって本気か?」
「本気も何もアンタのことだから勝手にオリフィスを捕まえに行くつもりだろう」
俺の考えばれている。
婆さんはいつも俺の思考を読んでくる。それのせいで今まで勝てた試しがない。
「孫弟子がわかりやすいだけさね」
俺はさっそく心を読まれたことにげんなりする。
婆さんに初めて会った頃からこの力関係は変わらない。きっとこれからも変わらないだろう。
「具体的には何をすればいいんだ」
俺が観念して尋ねる。
「さっきも言ったが竜の小娘の発掘物全般の警備さね。一カ所にまとめてるからそこを担当してもらう。場所はいつものところだよ」
いつものところ、と言われて俺が思いついたのはサルベアの街を西に出てすぐにある保管庫だった。
発掘直後の品々が一番最初に入る一時保管庫というべき場所だ。
婆さんの査定が通るまで発掘した品を街に入れるのはご法度なのだ。過去に査定前に街に搬入したら盗品が混じっていて偉い目にあったとかなかったとか耳に挟んだ事がある。
「森の近くにある一時保管庫か?」
「そうさ。詳しいことは警備団に聞くといいさね」
婆さんは早足で廊下を進む。
どうも警備団のところに俺を連れて行こうとしているようだ。
警備団の関連はラナティス本部の西側に密集している。俺がいた資料庫は東側にあるのでほぼ端から端の移動することになる。
徒歩で十五分かかって、警備団の会議室前に到着した。
「邪魔するさね」
ノックをして婆さんが会議室に入った。
俺も後に続く。
婆さんの介入により、会議が一時中断された。
部屋の中央にある机には地図が広げられている。それを囲むように四名の男女が座っている。四名のうちにマイロがいた。他は警備団の団長さんに初対面のがたいのいい男と金髪の女が一名ずつだ。
マイロは俺に気が付いたのか、手を振ってくる。
「おうおう、ネルシアさんどうしたんだ」
警備団の団長が婆さんに問いかけた。
「ギネック団長、欲しがってた人材を連れてきたよ。好きにこき使いな」
「イヴァンじゃねぇか! こりゃありがたい!」
団長は声がでかい。
鼓膜が破けそうだ。
「団長さんよ、もうちっと声量落としてくれないか? 俺の耳壊れそう」
「すまんすまん!」
俺の願い空しく団長の声量変わらず。
――慣れないな、ホント。
「あー、すまないがその男は何者だ? 白衣を着ているから研究者だと思うのだが」
団長の後ろにいた金髪の女が俺を値踏みするような視線を送ってくる。
金髪の女は軽装で腰に剣を携えていた。
「そっちこそ誰だ」
「これは失礼した。私の名前はクウェイト=ハーヴェン。今回、ラナティスから依頼を受けた護衛ギルドの者だ」
「俺はイヴァン=ルーカス。魔法専門の研究者だ」
俺が自己紹介すると、クウェイトは俺を中心に観察しながらぐるりと一周する。
珍獣扱いされているような気分だ。
「ギネック団長、私は彼を警護に加えるのは賛成できない」
「ほう、そりゃまたどうして」
「本人を目の前に申し訳ないが、単純に弱そうだからだ」
クウェイトは思っていることをはっきり言うタイプらしい。
振る舞いの端々に凛々しさが捕らえられる。荒々しいギルドの一員というよりも理知的な騎士いうイメージだ。
「そりゃ、イヴァンの戦いを知らないからそう言うんすよ」
マイロが余計な口を挟んできた。
――馬鹿野郎、そんなことを言ったら面倒なことになるだろうが。
「戦いを? マイロさんがそうおっしゃるからにはさぞ強いのだろうな」
「それは俺も保障するぜ」
団長が力強く頷いた。
――やめてくれ。
このままいけばどうなるか予想できた俺は会議室から逃げようとする。
足音を立てないように静かに動く。
「どこ行くさね」
婆さんに白衣を掴まれて逃げられなかった。
あと数歩で逃げることが出来た。
「ふむ。ではイヴァンさん、私と手合せしていただいてもよろしいか?」
――ほれみたことか。
俺は進まない調査と現状に辟易するのだった。
寝れなかったので衝動に任せて書いた。
まさか一ページ分書いてるとは思わなかったです。
そういえば、復帰してからアクセス解析見て驚きました。
『読んで下さる方がいるぅぅ!!』と。
不定期更新ですが、今後ともよろしくお願いします。
この後はクウェイトとイヴァンが手合せして、なんやかんやします。
なんやかんやはなんやかんやです。