婆さんと孫弟子
初投稿です。
誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。
「これで最後か」
俺は最後の計測記録に目を通し始める。
メリアはというと――。
「えへへ、竜がいっぱい・・・・・・」
机を枕にして寝ていた。
だらしない顔で涎を垂らしている。
「マイロはこんな奴の何がいいのか」
独り言を呟きながら次のページをめくる。
今読んでいる記録は三十年前のものだ。現在の計測道具よりも品質が悪いためか数値にばらつきが出ている。計測後に数値の平均を出して、それを正式採用している。
――アテにならない・・・・・・。
また進捗が悪くなってきた気がする。
俺が記録を最後まで読み終えたところで書庫の扉が開いた。
視線を向けると白衣を着た老婆がいた。背筋は曲がっておらずしっかりとした足取りで入ってくる。
「竜の小娘はこんなところでおねんねかい」
竜の小娘とはメリアのことだ。
「ふあぁぁ、ネルシアさんおはようございますぅ・・・・・・」
白衣の老婆――ネルシアの婆さんの言葉でメリアが起きた。
ネルシアの婆さんこそラナティスで一番偉い人だ。魔法の教科書を最初に作った人でもある。
俺にとってはラナティス抜きにして重要な関係があったりする。
「あぁ、おはよう。相変わらずあんたらは一緒に行動してるね」
「婆さん、なんか用か?」
「口の利き方の直らないガキんちょだね。アンタはアタイの孫弟子なんだから敬語をちゃんと使いな」
婆さんはいつものように俺の口調を注意する。
俺のことを孫弟子と呼んでくるネルシアの婆さんは俺の師匠の師匠。血縁関係に当てはめると孫にあたるから孫弟子らしい。
『人化』と『竜化』について婆さんは知っている。
「歳に気を遣う必要はあっても、敬語を使う必要はないだろ」
「エルは魔法の才に溢れていたが教育者としての才は無かったってことかね」
ネルシアの婆さんはため息をついた。
エルというのは俺の師匠のこと。正確にはエルシー=ルーカス――俺の母親だ。
俺も師匠に教育者としての才はないと思っている。
師匠の口からは無茶苦茶な事か、擬音や擬態語でわかりづらい内容しか出てこなかった。
「孫弟子の態度の悪さの話は置いておこうかね。もう手の施しようもないだろうからね」
「どういう意味だよ婆さん」
俺のことを婆さんは無視して話し始めた。
「オリフィスの件はあんたらも知ってるだろ?」
「知ってるよ。盗みに来るんだよね」
婆さんの問いにメリアが答える。
「そう。そうなんだけど、何が盗まれるのか見当が付かないのさ」
婆さんは腕を組んで、困ったような声を出した。
――俺のポケットに入っているものだと思うぜ、婆さん。
メリアを見てみると、固まっていた。本当に嘘が下手な上司だ。
「見当が付かないから、ラナティスの警備と護衛ギルド共同で研究資料などを全て守ることになった」
「護衛ギルドって何でまたそんなところに手を貸して貰ってるんだ。ラナティスの警備で全て賄えるだろ」
ラナティスの警備員の数は約八十人だ。
他の研究組織と比べても倍近い数字である。これはラナティスの資料保管庫が多数存在しているため、必要な人数らしい。しかし、毎日全員が警備しているわけではない。休日をとっている人もいる。
今回は緊急事態なのだから、休日返上で警備すれば問題はない。ただし、どう足掻いてもオリフィスには敗北するだろう。
「相手がオリフィスだから用心してるのさ。一番の原因は最近大量に発掘物を保管庫にぶち込んだバカがいてね」
婆さんがメリアをジト目で睨んでいた。
「な、なんのことかな~? わかんないな~?」
大量の発掘物――メリアの申請した発掘物のことか。
「竜の小娘、アンタしかいないだろうが」
しらばっくれようとしたメリアに婆さんが詰め寄る。
――メリアの急な申請と登録に結構怒ってるな。
資料の申請資料を最終確認するのは婆さんだ。
大量の申請に苦労したに違いない。
「そこで、イヴァンをこの一件が終わるまで警備に籍を置くこととする」
「俺に飛び火してないか」
――あと、そこでの意味がわからんぞ。
「孫弟子が上司の資料を守るんだよ。ちなみに資料及び遺物の開放も持ち出しも厳禁にしているからね」
「え、なにそれ! 私がこの前申請したモノは!?」
「例外はないさね」
「そんな~!」
資料庫にメリアの悲鳴が反響した。
なかなか『投稿してもいいかな?』と思えるレベルにまとまらない。
もっとペース上げたいですね。
じゃないとこの作品がいつ終わるのか・・・・・・。頑張るべー。