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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と遺跡と国の秘密
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黒竜の逃亡

 オリフィスがメリアの前に立った。


「お久しぶりサ。小さな研究者さん」

「捕まってた時以来かな。助けてくれてありがとう」

「むしろ遅れたくらいサ。そこの緑帽子が手紙を暗号で残していったせいサ」


 俺は目の前の騎士を蹴り上げる。

 騎士が塞ぐ道をこじ開けてオリフィスの顔を間近で睨む。


 オリフィスと周りの敵両方を相手になんてしていられない。

 トリトンとオリフィスが共闘関係にあるならば俺たち側のはずだ。


 俺は歯を食いしばる。

 そして腹を決めた。


「殴り飛ばすのは今度にしといてやる。手を、貸せ」

「弟の頼みを兄は断れないもんサ」

「誰が弟だ!」

 

 周り騎士たちがにじり寄ってくる。


「まずはここを切り抜けるサ」

「わかってるっての」


 俺とオリフィスが背中を合わせる。


「二人の護衛任せるサ」

「勝手に仕切るのやめるのん!」


 俺は俺の前の敵に集中する。


 どれだけ頑強な鎧だろうと耐久度が存在する。魔法で上げているなら魔法の速度よりも早く乱打する。

 ヒビが入れば終わりだ。


「まずは一人っ」


 俺が一人を気絶させていると後ろで膨大な魔素が分解されていた。


錬成(ライズ)付与(エンチャント)!」


 大剣に炎を纏わせて鎧を焼き切るオリフィス。

 笑顔のオリフィスが首を縦に小さく動かした。


「なら、ありがたく使わせてもらうぜ」


 オリフィスの魔力の主導権をすべて俺が奪う。

 純度の高い綺麗な魔力だ。


 なんでも出来る気がする。


 ――作り出せ。描け。一番強く、誰も防ぐことができない魔法(そんざい)を。


「――生成(ライズ)!」


 俺の声と共に頭上に生まれる炎の塊。

 灼熱の塊から竜が顔を出す。


「な、なんだあれは!」


 竜は手が生え、翼を得る。

 炎は俺が知る中で一番恐ろしい竜の形をしていた。


「さぁ、お前たちが大好きな紅い竜だ。紅い竜に殺されるのは本望だろう!」


 生まれたばかりの竜は敵の鎧を溶かしていく。


 炎の竜がいる限り俺たちを敵だと認識している人間たちに超高温の熱波を飛ばし続ける。


「焼けちまう!」

「こんなの着てられるか!!」

「剣も溶けていく」


 敵の武器も防具もすべて熱によってただの鉄になる。

 

 状況を騎士たちは察したのか、竜から距離を取った。


「私たちは熱くないよ?」

「ヴァンが敵だと認識した相手にのみ有効な魔法なんサ。まったく相手を焼き殺さないなんて優しすぎるサ」


 オリフィスが小動物を撫でるように炎の竜に触れた。

 

 ――焼け。


「あっづ!? 急にあっづ! ふー! ふー!」

「で、何で来たんだ」

「質問の前に火傷させる奴がどこにいるサ!?」

「殴って喋れなくなられたら困るからな。火傷で許してやる」

「さっきまでピンチだったクセに何言ってるサ」

「お前がいなくても何とか出来たっつーの!!」


 俺とオリフィスの間にトリトンが入ってきた。


「兄弟ゲンカは後にするのん」

「兄弟じゃねぇ!」


 上から焼ける音がして、上を見る。


 炎の竜が水をかぶっている。

 竜はすべての水を蒸発させている。


「どっから水が……」


 騎士団を見るとさっきまでいなかった頭巾をかぶった集団がいた。

 水を作り出しては竜に攻撃している。


「魔法師、か」


 俺の魔力切れを狙っている。

 魔力が切れると形を維持できない。その後でもう一度攻撃を仕掛けようという魂胆だろう。

 

「一回引くサ」

「なんでだよ。魔法師相手なら俺は負けないぞ」

「竜神教の反逆者としてヴァンが指名手配されることが決定したんサ。でもって、そこの研究者二人はヴァンを手引きしたってことで嫌疑がかけられている」

「逃げるなら街の外にいる今ってことかよ。トリトンの方はどうなってるんだ」

「トリトンに変装したオリフィスの手下がいるってデマ流してきたトコなんサ」


 トリトン本人は無罪だと言いくるめれる下地を作ってきたらしい。


「別行動をした方がいいのん」

「オレとトリトンに追っ手をまかせナ」


 オリフィス以上に頼もしい仲間はいない。

 だからこそ疑問だ。


「なんでお前は俺を生かそうとする。お前は何をしたいんだ!」

「知りたきゃ教えてやるサ。オレたちが別れた『あの場所』で」


 オリフィスはトリトンと共に跳躍する。騎士団と魔法師のいる中心に飛び降りた。


「逃げるか、戦うか」


 目の前にいる人間ぐらいすぐに倒せる。


 メリアとラッドを戦いの真ん中に置いていくことは俺にはできない。

 オリフィスの言う通りにするしかない現状に嫌気がさす。


「イヴァン?」


 心配そうな顔をするメリア。

 俺は自分の頬を軽くたたいた。


「くそがっ。逃げるぞ」


 オリフィスとは反対方向に全速で走る。

 ラッドとメリアも一緒に走る。


「逃げるってどこに逃げるんだぜ?」

「俺のすべてが始まった場所だ」


次回10/31予定


――

追われる身になったイヴァンたち。

オリフィスの最後の言葉に従って、すべての始まりである『ノーザスの森』へ。


『ウィン・ホートの森』はイヴァン、オリフィス、師匠ことエルシー=ルーカスが共に暮らした場所だ。

オリフィスがどうして『ウィン・ホートの森』を指定したのか。どうしてオリフィスは師匠の研究資料を奪い、今イヴァンを助けようとするのか。


すべて語られることになる。


次回『弟子と師匠と始まりの場所』

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