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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と遺跡と国の秘密
129/162

白い部屋

 視界に映っていた細い通路が一瞬で白い部屋にすり替わった。

 棚とテーブルと椅子まで白い。

 

 埃一つもない無機質な空間の中に俺たち四人は放り出される形になる。


「何が起こったの? さっきまで遺跡にいたのに」


 メリアが棚を物色し始めた。棚から本らしきものを引っ張り出す。

 本らしき、と疑問に思ってしまうのは革表紙ではないツルツルとしたよくわからない材質に紙が数百枚も挟まっているからだ。

 色も白、青、半透明と様々ある。そしてタイトルがない。


「躊躇なしで触るなよ」

「だってきになるじゃん?」


 メリアはそのまま本らしきものを開いて見始めた。


 ラッドが壁と床をノックする。


「この部屋の壁や床……遺跡の一部にあったよくわからん鉱石だぜ。まだ遺跡の中ってことか?」

「コップと皿が奥にたくさんあったのん。人が住んでてもおかしくないのに人の気配がないのん」


 いきなり強い光が目を刺激した。目を思わず瞑ると、カシャっという軽い音がした。


「おやおやおやおや、エリカとオルガの反応がしたから出てきてみれば君たち誰?」


 丸いガラスの付いた変わった黒い箱を持った男が部屋の奥から姿を現す。

 袖の短い白い服と分厚そうな生地の青いズボンを履いている。ただ俺の見たことのない造りをしていて、縫い目らしい縫い目が見当たらない。


「もしもし? もしかして言葉が通じてないとか? 言語体系まで変わってたらどうしたものか」


 男は言葉を発すると同時に手や顔が激しく動かした。


「通じてるのん。たださっき奥を見たが、誰もいなかったはずなのん」

「そりゃ慌てて転移してきたのさ。久しぶりに知り合いに会えると思ったんだけどね」


 男は何の躊躇もなく俺に近づいてくる。


「キミだね。反応の原因は。ふむふむ、なるほどなるほど」


 俺を観察するように見回した男はため息をついた。


「飽きたや。お帰りになるならそのままもう一度、部屋の壁にキミの腕輪を近づけてくれ。帰らなくてもいいけどモノは壊さないでくれ。じゃ、そういうことで」


 男は好き勝手なことだけ言ってまた部屋の奥へと歩いていく。


「待ちなよ、蒼竜(サイファ)

「その声は……」


 俺の胸から一冊の本が飛び出した。

 

「悪いね、エリーでもオルガでもなくてさ」


 サルミアートの写本は平然と宙を舞う。 

 トリトンが喋る本に目を見開いて言葉を失っていた。


「お前、トリトンの前だっていうのに!? それよりも蒼竜(サイファ)ってことはコイツ竜なのか」

「そうだよ。おそらく黒竜くんに一番近い存在だよ」


 男は身体をよじりながら恍惚とした表情を浮かべた。


「サルミアート! サルミアートじゃないか!! 私の愛しいサルミアート!!」


 浮かぶ写本に抱き着こうとした男の頭を容赦なくサルミアートは本のカドを叩きつけた。


「誰がキミのものなもんか。相変わらず言動すべてが自分勝手な奴だね」

「はは、はははは! いつ振りだろうか、サルミアートに叩かれたのはっ!! これは記念に写真を撮っておくべきだ!!」


 蒼竜(サイファ)はまた変な黒い箱を持って、強烈な光を撒き散らす。

 

「カメラの光にみんな困ってるからやめなさいって!」


 サルミアートが高速回転して男の腹部へぶつかる。


「えっぐ。あれ絶対痛いぜ……」


 騒いでいた男が顔を青くしながら歓喜の表情をして、メリアの前で倒れた。


 メリアは本らしきものに集中しているのか、まったく周囲の騒ぎに気が付いていなかった。


「あー痛い痛い。でもサルミアートにやられたと思うとアリよりの大アリだよっ。いいね! 最高!!」


 満面の笑みで親指を突き出してくる蒼竜(サイファ)に俺は頭が痛くなる。


「誰と誰が近い存在だ……」

「性格面は除くって注釈ついてるから安心して」


 ――現状、不安要素しかないが? 

次回、6/20更新予定

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