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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と遺跡と国の秘密
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黒と緑の遺跡探索

「貴様らは……一体何なんだ……」


 槍や剣が地面に音を立てて石レンガの上に転がった。横には鎧を着た人間が武器の数と同じだけ倒れている。その全員が胸に付けた竜の爪のペンダントを首から下げていた。


「制圧完了なのん」


 地下室の壁にあるロウソクの明かりに照らされながら緑の帽子が揺れていた。


「こっちも結界破り終わったぞ」


 結界があった木の扉の前には一枚の紙が貼られている。

 紙には結界を阻害する図式が書き込まれ、結界は発動しているにもかかわらず効力が無に等しくなっている。


 完全に結界を無効化してしまったとき、別の魔法の起動させてしまう懸念があった。

 結界魔法の半端な起動状態の維持。そうすることで他の魔法は起動しない。


「結界通るときに若干痛みがあるだろうがそこは我慢してくれ」

「二分かからずで反転式を魔法陣に編み込むだけで十分なのん。まったくラナティスはとんでもない存在を抱え込んでいた物なのん」

「魔法陣丸見えならどんな年代、形式でも読めば一発だ」

「それができる人が今どき何人いるものやらなのん」

「結界破りができなきゃ街の中心に穴開ける必要があっただろうが。仮にそんなことしてみろ。近隣の人間たちに見つかって大騒ぎになるに決まってる」

「竜神教の教会を襲撃してる時点で問題なのん」


 俺は倒れている人間たちを見た。


 ――これで『ルーカス』に新しい悪名がついたかもなぁ。


「そういうトリトンも顔見られたらヤバいのは一緒だ」

「幻惑魔法でちゃんと認識ゆがめてるから平気なのん。もちろんキミのことも認識できてないのん」

「魔法使ってるのは感覚で分かってたけど、やっぱり魔石の魔法は何を使われてるか見切りづらいな」


 俺とトリトンは扉の向こう側へと足を踏み入れる。


 最初の数秒は肌が強い日の光に当てられたような焼ける感覚を襲った。

 竜化して入ればよかったと結界の効力外に出た後に気が付いた。


「さて、ここから本格的にマイアット博士たちの救助に向かうわけだけど、よく夜まで待ってたのん。前回は朝まで待たずに飛び出したと聞いたのん」


 トリトンが言っているのはユビレトの事件のことだろう。


「結局、オリバーに助けられたからな。一人じゃ無理だった。今回は紅い竜が敵だって言うんだから二人でもきついけどな。成功確率は上げたいだろう。そっちは何かわかったのか」

「そんなに早くに集めれないのん。でも下地は作ってきたから何かあれば護衛ギルドに情報が入ってくるのん」


 紅い竜にグリムワンドが裏から支配しているようなら人間は竜の餌となるための家畜だ。

 ワムが紅い竜と不可侵の約束を取り付けているらしいがすべて意味をなさなくなるだろう。


「しかし、不思議なところなのん。なんで灯りもないのに明るいのん?」


 遺跡に入ってからずっと優しい光が道を照らしている。

 魔導ランプも蝋燭もない俺たちにとってはありがたいことだ。


「壁に彫られている魔法陣の効果だな。かなり古いが魔力を流せば明るくなる」

 

 壁も床も見たことのない灰色の固形物でできている。石に近いが石にしてはあまりにも滑らかだ。

 風化している様子もなくしっかりと踏んでも欠けることがない。


 いつの時代の遺跡かわからないが少なくともグリムワンド建国よりも前だ。紅い竜が生まれる前の可能性だってある。


 ――だというのにこの綺麗さはなんだ? 壁の魔法陣の形式が古すぎる。新しく整備してるわけでもなさそうなのが気味悪いな。


「色んな形の魔法陣があるけどこれ全部わかるのん?」

「わかると言いたいが、魔法陣の形に似せた意味不明なものが混じってる」


 俺は壁に描かれている魔法陣の一つを指差した。


 円の外にはみ出すまで書かれた三本の斜め線が特徴の図だ。

 似たように三本の斜め線が描かれた図はいくつもあるがすべて魔法陣として機能していない。


「この斜め三本のせいで魔法陣として機能してない。ただそれを失くしたところで魔素の分解すらできない不完全な魔法陣だ。意味が分からん」

「効力のある魔法陣はどれぐらいあるのん?」

「さっき言った斜め線が入ってないものはすべて効果あるぞ。だいたいは強化の魔法だからこの遺跡の強度あげてるんだろうな」


 ――もっとも、人除けに使う幻惑の魔法陣だけに反転式が組み込まれてるから一度は魔法陣を理解した人間が遺跡に入ったのは確かだな。


 ワムが言っていた遺跡は調査済みというのは事実なのだろう。


「生贄づくり。今でも嘘であって欲しいと思う」

「それは同感なのん」


 遺跡の中は一本道で迷うことはない。

 奥へ進んでいくと少しずつ遺跡の中が荒れていく。


 遺跡を構築する建材も名前は知らなくとも見たことがあるような石や木になっていく。

 同じ遺跡の中で明らかに経過年数が違う。


「遺跡の中に入ったのは初めてだがこんなことあるのか」

「うーん。先に奥を作って外に伸ばしていったのかもしれないのん」

「ここは地下の遺跡だぞ。普通は外から入口作って奥の方を作るんじゃないか」

「確かになのん」


 時折会話をして、進み続ける。


 メリアたちに会えること信じて。


 


次回、4/25更新予定

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