表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と盗人とはじまりのお話
12/162

記録石と調査録 3

初投稿です。

誤字脱字の指摘・ご意見など下されば幸いです。

「もうイヴァンの言葉なんて信じない」


 メリアがむくれた顔でバケツをぶっきらぼうに突きだしてきた。バケツには俺の指示した通りに水が半分ほど入っている。

 

「冗談だったんだからいいだろう」


 俺は呆れながらバケツを受け取る。

 砕かせてくれ、という冗談がメリアの逆鱗に触れたらしい。


 今回の件のささやかな仕返しのつもりだった。しかし、メリアの性格を考えたらこうなるのは予想できたかもしれない。


「別にただの冗談だったならまだいいよ。でも、私が砕いてもいいって言ったらどうしてたのよ」

「砕かないまでも、削るぐらいはしたな」


 記録石(スフィア)の魔法陣が壊れなければ、多少魔石が傷ついても情報の保存機能が失われないことを魔法陣の解析で判明した。


 魔石の部分を少し削って小分けにすると、複数の調査を平行してできるから楽になる。

 仮に余ったとしても、今後の研究に使えるからいい案だと思っている。


「その考えがあったから怒っているんだよ」


 記録石(スフィア)の横領なんてことをやった人物に言われたくはない、なんて火に油を注ぐようなことは言わない。言ったら後々面倒だ。


 バケツの中に粉状の薬品を入れる。そして、記録石(スフィア)をゆっくりと水に沈めた。


「何をしてるの?」

「魔素の濃度調査だ。今入れた薬と魔素が反応して、水の色が変わるまで触るなよ」


 俺は次の調査のため、薬品と器材の準備を始める。


 鼻歌交じりで研究室の隅にある薬品棚から数種の検査薬を取り出す。


 そんな俺をメリアはやわらかな笑みで見ていた。

 何か笑顔になるようなことがあっただろうか。


「なんだ」

「いや、イヴァン嬉しそうだなって」

「行き詰まっていた所に光明が見えたんだ。嬉しくもなる。それに世界の謎を解明するきっかけを掴むことができれば、師匠の夢を叶えることができるかもしれない」

「夢って、世界の謎を解明して教科書に載せることだっけ。変わった夢だよね」

「かもしれないな。それでも叶えるさ」


 普通の人が考えないようなことを師匠は考える。


 世界の真実を求める、というだけでも常識から外れているだろう。


 師匠の研究資料などはオリフィスが持ち去ってしまったが、師匠の夢は引き継いだ。

 俺なりのケジメだ。


 ――さて、一通り次の魔力変換時の測量準備は終えた。


 記録石(スフィア)はどうなっているか。反応が出ている頃だろう。

 俺は確認のためバケツの中をのぞき込むと、面を喰らった。

 バケツの中の水は淡い紅色に染まっていた。色が濃くないため、バケツの底まではっきり見える。


「なになに、どうしたの」


 メリアが俺の反応に釣られて無邪気な子供のようにやってくる。


「綺麗な紅色だね。紅竜の瞳みたい」


 メリアの例えはピンとこない。


 俺が例えるなら、色合いや透明度から赤い葡萄酒といったところか。しかし、俺が想定していた色はバケツの底が見えないぐらいの深紅。それこそ人の血と間違えるぐらいのものだ。

 

 顎に手を当てて、思案する。

 記録石(スフィア)に魔素で竜が滅んだと記されていることを俺も確認した。

 ――竜が、か。


「メリア、今から竜化するから――」

「え、なにその宣言は!? さっきの反省した証か何かなの? 鱗を触って、頬ずりしていいのね。サンプルというか、鑑賞用に鱗を一枚ぐらいくれたりはもちろんよね」

「最後まで話を聞けよ」

「なうっ!」


 興奮していたメリアの額を軽く小突く。


 何かさらりと俺の鱗を剥ぐようなこと言っているが、絶対にさせる訳がない。

 普通の人間が生爪剥がされるのと同じぐらいの痛みがある。

 自ら進んでやるのは痛みを快感と履き違えた変態ぐらいだ。


「今からちょっと自分の身体で実験をするから大人しくしてろ。どうなるか俺もわからないから、俺に近づくな」

「えー、生殺しじゃない」

「お前の依頼だろうが」


 俺は左腕を竜化させる。

 肩ぐらいまで黒い鱗に覆われたところで竜化を止める。


「触りたいな。触りたいな」

 

 目端でメリアが指を加えて俺の隣で上半身を揺らしているのを捉えたが、放置する。

 実験優先だ。

 

 俺は人の右腕と竜の左腕を同時にバケツの中に突っ込んだ。

 薬が溶けているせいで、少し水が粘性を持っていて気持ちが悪い。


「イヴァン、その水って魔素が溶けているから毒じゃないのかな」

「そうだな。普通なら」

「何危ないことやってるの!」


 これが一番早いし分かるんだから仕方が無いだろう、と俺が反論しようとしたとき、左腕が痺れ始めた。

 腕の反応に慌てて、腕をバケツから抜く。

 急な出来事で尻もちをついてしまう。

 

 俺はすぐに竜の左腕を曲げたり伸ばしたりして、痺れ具合を確認する。

 左腕を伸ばすと竜化している肩まで痺れるような痛みが走った。右腕も同じようにするが、問題なしだ。

 

 これは魔素が竜に対して神経毒のような作用をしているということ。しかし、人間には同様の効果を持たない。

 現在の魔素とは全くの別物だ。

 

 ――混乱している思考をまとめ上げろ。仮説を立てろ。これは新しい発見だ。


「ちょっと、急にどうしたの」


 メリアは俺の行動に小首を傾げていた。


「今話しかけないでくれ。考えたい」


 今の魔素と記録石(スフィア)の魔石の魔素は何故違う毒性を持つ。

 この毒はどういった意味がある。


 俺の頭の中に何故、どうしての連鎖が生まれ続ける。それを自分の持つ知識で解を出す。

 何度も繰り返した結果、ある仮説を出した。


 ――魔素は時と共に変質しているのかもしれない。


物語書くとき、登場人物と面談(?)みたいなことするんですけど、僕だけですかね?

来週は金曜が祝日なので、土曜日に更新出来たらいいなぁ。


11/13 仕事が忙しすぎて、書くことが困難になってきたので落ち着いたら書きます。多分、12月の中旬ぐらい再開

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ