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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と遺跡と国の秘密
113/162

青いガイド

 ―― ◆ ―― ◆ ――


 まだ日が昇り切っていない早朝。

 時折、吐き出す息が白くなる。


 メリアとラッドが馬車に乗り込む。


 他の馬車には法団の若い魔法師やグリムワンドの騎士たちが乗り込んでいた。

 調査の補佐の魔法師と護衛のための騎士たちだ。馬の手綱を持っているのもグリムワンドの騎士。


 ――御者すら雇っていないところから外部に関わって欲しくない調査なのは本当らしいが……。俺の排除理由が腑に落ちないな。


「じゃ、行ってきまーす!」

「お留守番よろしく頼むぜ」

「二人とも無茶だけするなよ」

「そっちもな。うぉう!?」


 ラッドが含みを持った笑いをした瞬間、馬車が動き始める。

 決まらないのが少しラッドらしいくあり、苦笑してしまった。


「俺も気を付けたいところだが――婆さん誰だ」


 俺の横で遠くへ離れていく馬車に向かって手を振っている婆さんが横にいた。


 丸まった背中のせいか俺の身長の半分ほどしかないように見える婆さんが俺と目を合わせる。


「ん? ワシか? お主が観光したいと聞いたので雇われた街のガイドじゃ」


 ガイドを自称する婆さんのイヤリングに俺は視線が奪われた。

 深い青色の石が光っている。


 魔力かすかに放ちながら。

 

 ――イヤリングの石は魔石じゃないか。


 一般人は魔石をアクセサリーに使わない。

 アクセサリーとして魔石を身に着けるのは他人に魔法師であることを悟られないようにするためのカモフラ―ジュ。つまり、婆さんは魔法師だ。

 

 ガイドと言っているが監視役という方がしっくりくる。俺を自由に行動させる気がないようだ。

 

 何のために、どういった経緯で俺は警戒されているのだろうか。

 グリムワンドという一国が警戒するような存在だと俺自身は思わない。


 実際は竜化に魔導といった危険な能力を持っているが認知されていないはずだ。


「難しい顔せずワシについてきたらえぇんじゃよ。それとも若い女の方がよかったかのぉ?」

「そこは、どうでもいいな」

「もしかして、ワシみたいな年寄がいいのかのぉ?」

「生い先短い命を今ここで終わらせるか、婆さん」

「怒りっぽい最近の若者は怖いのぉ」


 俺の前をゆったりと歩く婆さん。


 婆さんから放たれている魔力は攻撃的なものではない。不気味なほど穏やかなのだ。

 心地いい風を身体全体で感じているように錯覚してしまう。


「最初は博物館に行くとしようかねぇ。あそこは魔法の研究者なら見ておくべきだねぇ」


 博物館の中なら人間がたくさんいるはずだ。紛れて逃げればいい。

 

「なら案内してもらっていいか」

「お安い御用だねぇ」


 俺は婆さんに街の歴史や建造物の話を聞きながら街を歩く。


 ただ歩く道はすべて大通りではなく細くて人間があまり通らないような道ばかりだ。

 薄暗くて、掃除もろくにされておらず虫が飛び回る道。


 そんな道を歩いてる途中、婆さんがぽつりと質問してきた。


「お主、何か悪いことでもしたんかぇ?」

「何も」


 婆さんは俺の顔を見ると、うんうんと頷いた。


「だろうねぇ。でもさっきから気配を消して尾行してくる奴が何人かいるねぇ。おっと、後ろは向いちゃいけないよ。多分こっちが感づいてることを知ったら向こうは逃げるねぇ」


 俺は首を前だけ向くようにして進む。

 

「城を出たときからか」

「気づいていたのかねぇ?」

「いや。婆さんの選ぶ道がどうもおかしいから何かあるとは思っていた」


 婆さんが敵であることもずっと考えていた。


「わたしゃ、お主の味方だよ。『エルシーのせがれ』や」

「師匠の、知り合いか」


 言葉に詰まりながら俺は平静を取り繕う。


 師匠とグリムワンドに来た記憶があるのだから師匠の知り合いがいてもおかしくない。


「んにゃ、それはちょっと違うねぇ。お主とも会っとるよ。もっとも『イヴァン』ではなく『ヴァン』のときにのぉ」

「アンタ何者だ。俺の本当の名前を知ってる奴なんてこの世界には一人しかいないはずだ」


 俺の兄弟子、オリフィス。

 あの男以外に知っている存在はいない。


「詳しい話はあとでしようかねぇ。博物館で待っている人もいることだからねぇ」

「おい、婆さん!」

「そういや名前を言ってなかったね。グレース=パーバルさ。思い出してくれると嬉しいねぇ」



体調不良で一日遅れました。


次回は11/1更新予定です

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