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半竜の研究者は世界の秘密が知りたい  作者: 紺ノ
竜と魔導と教師のお仕事?
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忠告、ですか?

「やれることはやった、よな」


 資格試験当日。

 俺は一人でアーバンヘン魔法学校の校門前にある木陰で座っていた。


 学校全体が魔法師試験の会場になっており、朝から筆記試験が行われている。

 俺の生徒四人も今試験中だ。


 キャンプから帰ってきてからは筆記試験対策とキャンプで学んだ技術の定着を重点的にやった。

 ガリオンの作った教科書は一回も使っていない。魔法の基礎知識を叩き込んで応用のやり方を教えた。


 俺はもう信じることしかできない。


「しかし、ネルシアの婆さん遅いな。このままだと午後の実技試験に間に合わないぞ」


 校門付近に座ってもう二時間経つ。

 何かあったのだろうか。


「そこにいるのは『ルーカス』先生ではないですか」


 気味の悪い笑みを浮かべたガリオンが『ルーカス』を強調してきた。


「『ホーランド』から話しかけてくるとは珍しいな」


 お返しとばかりに俺も強調する。

 不機嫌なガリオンの顔が見れると思った。だが、ガリオンの顔は余裕たっぷりだった。

 

「貴方の生徒四人とも午後の試験は受けないほうがいいですよ」


 何か妨害工作でも仕込んできたのだろう。

 

 最初から想定済みだ。

 どんな妨害でも乗り越えれるように生徒たちに個別授業をした。


 ――ちょっとやそっとのことじゃ妨害にすらならないぞ。


「受ける受けないは俺じゃなくて生徒たちが決めることだ。つまらないことを言いに来るな」

「忠告はしましたよ。一応、私の甥がいたのでね」


 高笑いをしながら校舎に戻っていくガリオン。


「一応な。血の繋がりってのは人間大切じゃねぇのかよ」

「人間にも色々いるさね。半竜の孫弟子が一番わかってるだろう?」


 俺の後ろの木からネルシアの婆さんが顔を出した。


「婆さん、しれっと現れんなよ」

「私もいるよー!」


 抱きついてこようとした金髪上司メリアの額を手のひらで押し返す。


「孫弟子、さっきの男のことを『ホーランド』って呼んでたけどアレが『ガリオン=ホーランド』かい?」

「そうだけど婆さん知ってるんだな」

「まぁね。しっかし、ハルトマンの馬鹿は何であんなの自由にさせてるかね」


 ――ハルトマン……あぁ、校長のオッサンのことか。


「さっきの男の人ってどこかで見たような?」

「メリアは会ってるだろう。ユビレトで」

「むむむむ? あー!! イヴァンに嫌味言ったヤツだ!」


 メリアの認識は少しズレているように思うが合ってはいるの俺は無言で頷く。

 見えなくなったガリオンにメリアは獣が爪でひっかくような仕草をしていた。


「ところで、仕事はちゃんとしたんだろうね?」

「してなかったら仕事クビになるだろうが」


 金もなくなり、世界の秘密を調べる環境もなくなる。

 ついでに半竜の俺が安心していられる居場所もなくなってしまう。


「とはいえ、一つだけ出来なかったことがある。魔物か魔獣との戦闘経験を積ませれなかった」

「イヴァン、何言ってるの? 教え子に危険生物と戦わせるなんて」

「メリアの考えもわかるが。監視役付きで戦える状況なんて魔法師になってからはありえないから今のうちにやっておきたかった」


 俺は師匠のように魔物群れの前に生徒を放置して見ているだけじゃない。

 何かあったら絶対に助ける。


「どこで戦う予定だったんさね」

「山の中だな。魔獣が掘ったとしか思えない穴とか縄張りの印はあったから魔物はいなくても魔獣は確実にいるはずだ」

「おかしいね。昔は野外演習中、毎日のように魔獣が食い物欲しさに襲ってきたもんさね。テントも何度潰されたかねぇ」


 ネルシアの婆さんは教師時代の師匠のストッパーをしていたらしいことを話していた。

 だから近隣の山のことも知っているのだろう。


 環境が変わったとしても数年で人間よりもはるかに生命力の高い魔物が絶滅することはない。

 

 おかしい点はそれだけじゃない。

 俺が山で見つけた魔獣の生活痕の新しさだ。年単位で痕跡が残っているはずがない。

 少なくとも一か月前はいたと思われる痕跡ばかりだ。


「気にはなるが本題は魔法師の試験さね」

「それもそうだな。午後の実技試験は模擬戦らしいんだが面白いものが見れると思うぞ」


 本職の魔法師も交えてチーム戦をすると聞いた。


「面白いものって?」

「見てのお楽しみってな」

「孫弟子の今の顔……エルがろくでもない事をしでかす前の顔にそっくりだったさね……」


 ――俺、そんなに悪い顔してるか?

5/24更新予定

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