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それは、薄まったコーヒーのようなもの

作者: This



甘美な口づけ。


もうこれで何度目だろう?


そんなことを考えているうちにまた唇が重ねられる。


それを、僕は強引に拒むことだってできるだろう。


でも僕はそうはしなかった。


僕は、重ねられる唇を拒むことなく受け入れた。





最初は悪戯だと思っていた。


そういう遊びなのだと。


いや、僕がそう思いたかっただけなのかもしれない。


年下っていうのはそういうものだと。


でも、繰り返すうちにこれが”遊び”なんかじゃなく


”本気”のものなんだと感じた。


でもそう感じた時には、もう既に遅い。


これはもう罪なんだと自覚した。





思えば、口づけの仕方も変化していた。


最初の頃は、僕の事を下から見上げながら。


素早く。


まるでなんだろう。


何かの小動物のようで可愛らしかった。


そして次は、横から。


僕の手に触れつつ。


この時から僕は違和感を持ち始めていた。


でも、それを確かめることはしなかった。


そして次。


彼女は僕を見下ろした状態で、


僕の顔と背中に手を当てながら。


口づけの時間も長い。


そして何より、僕はそれになんとも言えない心地よさを感じ始めていた。


交際相手とする口づけよりも、その相手の妹とする口づけを。







もうこれがおかしいことには気づいていた。


でも、止めることはできない。


重ねられた唇から可愛らしい舌先がゆっくり入ってくる。


僕はそれに応える。


舌と舌が絡み合う。


ただただ、それだけのことなのに夢中になる。


もう既にそれは心地いい、ではなく、快楽に変わっていた。


きっと彼女も同じ思いなのだろう。


お互い、声が漏れる。


絡み合う妖艶な音がする。








『ブー! ブー! ブー!』


ふと我に返る。


携帯が鳴っていた。


彼女を少し押しのける。


お互いの口の間には淫らな糸が引いていた。


携帯を取ろうと僕は身を動かそうとする。


しかし、彼女は僕から離れようとしない。


華奢な体のどこにそんな力があるのか、ぐっと押さえつけられていて僕は動けなかった。


彼女の目は、


駄目。


と言わんばかりだった。


携帯はずっと鳴り続けている。


また唇が重ねられた。


舌が、また入ってくる。


さっきとは比べ物にならないほど、激しく絡ませてくる。


苦しいと思うほど激しく。







あれから、何度か携帯がなったが


もう気にすることなく、


僕らは口づけによる快楽を貪っていた。






ようやく、彼女が口を離した。


それでも僕はまだ、口づけの余韻に浸っていた。







全く、意識していなかったがズボンの上からでもはっきりと分かるほど、


僕のモノは猛っていた。


彼女はそれに興味を持ったのか、それとも最初から分かっていたのか、


ズボンの上からそれを愛おしそうになでた。


思わず僕は声も漏らした。


彼女は微笑を浮かべているようだった。


そして、僕のズボンをおろす。


下着をおろす。


しばらくお互いの息の音を聞いていたが、


ついに彼女は手をかけ、口をつけた。















それは絶頂と同時だっただろうか。


いや、良く覚えていない。


覚えているのは、ドアが開いていた事、そこに誰か立っていたこと。


そして、


彼女の物足りなそうな顔だけだ。












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