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56話『リアム・レッドリード・ライトヘルツの場合』



武の一門たる貴族に名を連ねているリアムには才能が欠けていた。一族全員が何かしらの才能に特化しているのだがリアムにはそれが無かったのだ。良く言えば万能、悪く言えば平凡。それが一族の中でのリアムの立ち位置だった。


だがその代わり、リアムには一族には欠けていたある才能が芽生えていた。それは魔法。一族には簡単な魔法は扱えても戦闘で使えるような魔法を扱える者がいなかったがリアムは一族史上で初めての高い魔法適正値を備えて生まれてきたのだ。


武の一門の貴族は通常学園に通うことはしない。一族の中で技術を教えられ、その力の扱い方を教えられるのだ。これは一族全員が人に教えられる程秀でていることと、教えることが肉弾戦や剣術に特化していることが関係している。


しかし、リアムの場合はそうはいかなかった。魔法の才能があるリアムに魔法を教えることが出来る一族がいなかったのだ。故にリアムは幼少期を親や兄による剣術の手解きを受けて育ち、そして学園に入学したのだった。


入学したリアムはその頭角をメキメキと表した。高い魔法適正値と理解力、そして想像力を兼ね備えたリアムは魔法を扱う上で必要なモノを全てを満たしていたのだ。学園内でも屈指の魔法使いとしてその名を馳せた。


だがリアムはそれで満足することはない。自身をさらなる高みへ行かせる為に努力を惜しまない。魔法と剣術の複合、魔法剣を編み出したのだ。これにより学園内でのリアムの名声、そして序列は不動の物となった。



「大きいな…」



目の前に聳えるがの如く存在する魔皇姫を前にしてもリアムは動じない。自身の持てる技の中で最適な解を導く。



「対質量戦、それなら僕にも考えがあるさ」



遥か後方に避難した四人から向けられる心配そうな視線。それならそもそも全員で戦った方が良いのだが誰もそれを指摘しない。


下段に剣を構えて集中。体内に流れる魔力と剣にだけ意識を向ける。



「ふぅ…」



皇国内で扱われている剣術の多くはリアムの一族が扱う剣術から派生した物だ。一族が扱う剣術を見て我流で手を加えた物、見様見真似で真似をした物、様々な剣術が枝分かれして存在している。その中でも流れの主流に当たるリアムの一族が使う剣術は一族にしか扱うことが許されていない、秘密の剣術である。


とはいえシャーロットは例外だが。


リアムの持つ剣に雷光が疾る。全身から稲光りが発生、バチバチと音を立ててその存在感を醸し出す。



「第三奥義・極光」



小さく呟いた言葉とは裏腹に引き起こされた現象は絶大の一言だ。


リアムの編み出した魔法剣は幾つもの対戦相手、状況に応じて種類が分かれている。今回使われた第三の剣は対質量戦に使うことを想定した物である。


極大の雷が魔皇姫に落雷。眩い放電をしながら超高電圧でその体を焼く。しかしそれだけで終わることはない。同時に振るわれた剣から雷光を纏った斬撃が幾つも飛び、魔皇姫の体を斬ると同時に傷口を焦がす。轟音を轟かせながらその現象は暫く続いた。その最中、空にはオーロラの如く煌めくカーテンが揺れ動いていた。



「シャーロット嬢の言うことが確かならこいつは不死身。 この程度じゃ死ぬことはない、か」



未だに迸る落雷を前にリアムは手を緩めない。さらなる一撃を繰り出す為に集中力を高める。



「第二奥義・雷霆壱式」



剣へ魔力を圧縮。高密度に圧縮した魔力を電撃へと変化させ、剣へと帯電させる。そのまま帯電した雷を剣の形で大きく、大きく、変化していく。


第二の技は超高速から繰り出される連撃。小さな剣に帯電させ、その帯電した雷を巨大化させることによって攻撃範囲と威力を底上げした技である。そしてその奥義であるこの技はリアムの技術と才能の塊を思う存分に振るわれて発揮される。


雷を纏ったリアムの動きは最早目に捉えることが出来ない。残像と雷の残滓を残しながらの高速移動はそれだけではあり脅威的な威力を周囲へ飛び散らせる。


雷光の速度で移動し、剣を振るう。下段から上段へ向けて一閃。返す剣で再度の斬撃。その威力を殺すことなく体を捻って回転させ、斬撃にその回転の威力を上乗せして放つ。一連の行動を終えると即座に移動し場所を変えてさらなる連撃を魔皇姫へと見舞わせる。



「雷霆弐式!」



斬撃からの雷速で放つ突きへと変化。突き刺した対象へ電撃を流し込み、体の外も中も焼く攻撃に魔皇姫が僅かに動く。


血が吹き出ることもなく、肉片が飛び散ることもない。自分が何に攻撃しているのか理解出来なくなってきたリアムは混乱手前の頭を振り、攻撃へ集中する。



「参式っ!」



その言葉を合図に剣へ流れる魔力がその量を増やす。極厚の剣へと変貌を遂げた剣を上段へ構えて振り下ろす。そこらの魔物なら剣の威力で死ぬ前に圧殺されるだけの範囲と重量、そして放たれる紫電に魔皇姫は潰れる。だがそれでも死ぬことはない。


爆炎と爆煙、辺りに飛び散る紫電、眩いばかりに輝く雷光が魔皇姫を覆い包む。それでもその中から感じられる確かな存在感にリアムの顔が曇る。



「これでもダメージは少ないのか…想像以上だなあっ!?」



飛来する触手。思わぬ反撃に反応が遅れ、腹部を掠める。それでもただ掠めただけなのにリアムの腹部の肉が削ぎ落ちる。



「ぐぅ!」



その威力と痛みに集中が途切れ、剣に纏っていた雷が霧散。尚もリアム目掛けて襲い来る触手を斬り払い、距離を取る。



「くっ…雷霆零式!!!」



壱式から参式まで存在する第二奥義。コンボとして繰り出すのがリアムの中での黄金パターンであるがそれでも実戦で使うのはこれが初めてである。上位としての権限にギルドでの行動が許されているが貴族としてそんなことは許されていなかった彼は対人でこれを振るうことを自粛していた。


初めて使っただけにリアムは満足する動きが出来ていない。だがそれは本人の感想であり、傍目から見ていた凪にはそれだけでもリアムが本当に強いことが理解出来た。


そしてそんな第二奥義である雷霆。終の型として存在する零式は消費する魔力量に加えて本人に掛かる負担が大きく、リアムもなるべく使用は控えるつもりで編み出した技である。だが第一種の魔皇姫を前にそんな悠長なことは言っていられない。そう判断して零式の使用を決断する。



技名を叫ぶのには一族としての暗黙の了解であることに加えて、ある利点が存在する。それは叫ぶ瞬間に発動させる為、通常状態から一気に発動状態まで体を持っていくことによる、魔力操作と肉体操作の精度の向上である。それ故に直前まで相手に悟られることなく技の発動を行うことが出来る、一つの利点であった。


それが骨の髄にまで染み込んでいるリアムは技名を叫ぶだけで自らの肉体がどんな状況でも必ず技を発動させるまでの状況へ持って行くことが出来るのだ。


リアムを中心に稲妻が迸る。それを纏うリアムには電撃が及ばない。術者を纏うようにして発動される技は術者本人へその影響を及ぼすことはないのだ。



「無駄だ」



しつこくリアムを襲う触手はリアムの纏う雷光に焼かれてその身を貫くことが叶わずに焼失。それを確認し、剣を構える。紫電が辺りの地面を焼くがリアムはそれを気にしない。



「ふぅー…はあっ!!!」



リアムの姿が消える。対象物を見失った無数の触手が一瞬動きを止め、困ったように空中を漂う。


魔皇姫の周囲に光が奔る。次の瞬間、魔皇姫の体に無数の切り傷が生じる。その光は一ヶ所に留まることなく魔皇姫の周囲を奔り、切り傷を量産していく。



「これでおしまいだっ!」



神の木、その中腹にまで届くほどに巨大な雷剣が姿を見せる。その柄部分には雷を身に纏い神々しさすら感じられるリアムの姿。


振るわれた雷剣は魔皇姫を覆い潰し、木々を焼き払い、轟音を上げて炸裂する。吹き荒れる突風に木々が吹き飛び、静かに見守っていた凪達も思わず目を伏せる。




荒い息を上げ、リアムが土埃の中から姿を見せる。肩で息をするその姿はまさに満身創痍。それだけになるまで全力を尽くした結果でもある。魔力量も既に残り僅か。大技を連発した弊害で肉体も軋んでいた。



「はぁっ………ど、どうだ!?」



未だ晴れぬ煙の中を睨み、気配を探る。殺せるとは思っていないがそれでもある程度はダメージを与えられた自信と自負がリアムにはあった。だが仮にも第一種に位置付けられた魔皇姫はそこまで甘くはなかった。



「っ!」



煙の中から無数の触手がその姿を自由自在に変化してリアムへ迫る。躱せる程の体力が残っていなかったのか、完全にタイミングを逃したリアムへ殺意に満ちた一撃が襲い掛かる。



「っ…くそ」



肉薄する一撃はリアムを死に至らしめる一撃。避けることが叶わないと悟ったリアムが目を閉じ、来る衝撃へ備える。



「リアムもまだまだですの」



百以上の触手が切断。奇怪な音を響かせて枯れるようにして落ちていく。



「バトンタッチだね、シャーロット嬢」


「お疲れ様ですの。 後は私に任せてくださいですの」




鬼哭剣を片手にシャーロットが魔皇姫と対峙する。

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