二話目
十の月はれ。
かれはおうさま。このもりの、おうさま。
少女が青年に拾われてから数日が経ちました。
数日、その僅かな間に、少女は青年に絶対の信頼を置いたのです。
何故って、前の生活では考えられない、三食昼寝付きにからだを清潔に保っていられる綺麗な水場があるということ。他にも、以前のように空腹で死にかけることもなく、軽い風邪をこじらせてボロ雑巾のようになって這いずる必要もないからです。
そこで少女は思いました。自分が青年にできることはないだろうかと。そして少女はうんうんと唸り考え始めてからあることに気づきました。
少女は青年の住処にいます。住処はお城ではありませんでしたが、とても広く大きいお屋敷でした。青年一人で住むには広すぎるものです。
そのお屋敷には青年以外に誰もいないようで、少女の足で行けるところまで探してみたにもかかわらず、広すぎるお屋敷の中で姿を見せる者が見当たりません。
一日で行ける範囲を少しずつ増やし、恐らくようやくほぼ全てを見終わった頃に、ようやく、このお屋敷には青年と自分しかいないことに気づいたのでした。
「おうさま、どうしてこのお屋敷にはだれもいないの?」
「……お前と私がいるだろう」
「えっとねー、そうじゃなくてねー」
言葉遊びのように言い分を取り下げる青年に、ちがうんだよー、と困り顔になります。うんうん思案して、ことばを探す少女に、青年は少し呆れた顔でやっていたことを再開しました。
「んー…………」
黙々と何か手仕事をする青年は、少女がやってきた日からずっとこうでした。少女がどこへ行こうと、決まってこの部屋で何かを書いているようです。書くのをやめたとしても、壁一面の本棚に収まっている一冊を読んでいます。
そこで、ふと、少女は思いつきました。もしかしたら自分は役に立つことができるのではないか、と。
「ねえねえおうさま! きいて! わたしね、このお屋敷を毎日きれいにするよ! いいでしょう?」
少女はにこにこと笑って青年に言いました。勿論、もう決定付けたことで、きっと取り下げることはないでしょう。なにより、誰もいないこのお屋敷で自分が役に立てることなんて、これくらいしかないと少女は思っていたので、断られたとしても実行するつもりでした。
「……好きにしろ」
青年の一言に、少女はぱあっ、と目を輝かせてにっこりと笑いました。
その後、先ずは道具を揃えることからだね!とお屋敷中を駆け回りかねない少女に、見かねて立ち上がる青年が見えるのも、時間の問題でした。