表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺羅と嘘とその先  作者: 蛍灯 もゆる
嘘つきの承
19/102

それは、れんたいかんをうむ


緑川は料理がうまい。

見た目は何の変哲もないポテトオムレツだが、雪之丞が作るものとは雲泥の差だ。

雪之丞の料理は、人に出してもまぁ問題ないレベルの料理だが、緑川の料理は胸を張って人に出せるし、お金を取っても良いくらいだ。

派手な料理は作らないが、家庭料理にかけては天下一品だと雪之丞は常々思っていた。


「報告できるほど、解ったことがありませんけど」


出された朝ご飯を確実に消化しながら、雪之丞は肩を竦める。

その答えに、身体ごと振り返った緑川が眉を顰めた。


「なに言ってる? 第一印象が肝心じゃねぇか。インパクト与えろよ」

「過ぎたことを言われても、今さらどうしようもありません」


僅かに片目を眇めて、緑川は少しばかり悩むように腕を組む。


「何考えてるんですか」

「吊橋効果と共戦はどうだ? 手っ取り早く仲良くなれるだろ」

「どんな例えのつもりですか?」


唐突な台詞に雪之丞が眉を顰めると緑川はにやりと笑った。


「死に立ち向かった二人が、思いがけず生き延びて結ばれるってのは良くあるだろ?」

「ドラマの見すぎです」


あっさりと切って捨てて、雪之丞はロールパンを口に運びながら溜息をつく。


「だいたい、結ばれる必要はありません」

「お前、その餓鬼に口説かれたいんだろ?」

「誤解を生む発言は止めてください。頼まれたのは、あくまで原因究明です」

「青柳社長の話じゃ、お前に惚れさせてこっぴどく振るってニュアンスだったぞ?」

「確かに、始めはそういう話でしたけど、青柳さんも納得してくれましたよ」

「どうだろうな」


嫌そうな視線を向けると、緑川が微かに笑った。


「まぁ、頑張れよ」

「他人事だと思って、楽しそうですね」

「お前、本当お人よしだよな」

「褒められてる気がしません」

「褒めてるだろ。だから、こっちもよろしくな」

「ちょ、」

「打ち合わせの日程は、調整してまた連絡いれる」


それきり振り返らずにひらひらと手を振って、緑川が部屋を出ていく。

机の上のCDと絵本をちらと眺めて、雪之丞はもう一度小さなため息を零した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ