↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺羅と嘘とその先  作者: 蛍灯 もゆる
嘘つきの承
PR
18/102

それは、せんてをうつつもり


雪之丞が何か言うより先に、緑川がぱちんと手を合わせた。


「悪かった。あいつがあんまり熱心だから、つい。な」

「つい、じゃありませんよ」


額に手を当てて雪之丞は溜息をつく。


「因みに、喋ったんですか?」


流石に長い付き合いで、それが指すものを一瞬で理解した緑川は否定するように、ひらひらと手を振った。


「そこまで命知らずな真似は流石にな」

「嫌がると解っているのに、話を持ってくるのもどうかと思います」

「なんだよ。いつから仕事えり好みできるくらい偉くなったんだ?」

「そもそも、始めから納得した仕事しかしてません」

「まぁそうだな。だったら、良いものを作りたいあいつの気持ちは解るよな?」


返事をしないでいると、緑川が喉で笑う。


「いい加減自覚しろ。お前はお人よしなんだ。何だかんだはったりをかけるくせに、結局は断らないのが良い証拠だろ」


不機嫌に睨んだ雪之丞に、緑川は降参を示すように両手をあげた。


「褒めてるんだからな」

「思い当たる節があるだけに、否定できないところが大変に不愉快です」

「俺は、あのCDが気に入ってるからな。良い目の付け所だと思ったんだよ。まぁ無理強いはできないけどな」


大学時代に、地域に伝わる民話と民謡について研究していた友人に頼まれて、雪之丞は自分の知る物語を語り、民謡を歌ったことがある。

その音源が何故かあれよあれよと広がって、CDにしてもいいかと、友人には端からみても気の毒なくらい謝られて拝み倒された。

声の主の一切が不明のそのCDは、それでも適当に売れたらしい。

売上の何割かを無理矢理渡されて雪之丞も驚いた。

緑川は、その語り手が雪之丞であることを知る、数少ない人間の一人だ。


「あれは、やむにやまれずです」

「こっちもだ。まぁ、少し考えてくれ。お前の希望で名前は出さなくても良い。お前が訳した本をお前が読む。理に叶ってると思うけどな」


立ち上がった緑川は、不意にそうだと振り返る。


「首尾はどうなんだ?」

「何です?」

「噂のイケメン大学生だよ」

「相変わらず、耳が早いですね」


CDと絵本が汚れないようによけて、雪之丞はポテトオムレツを無造作に口に入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。