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最弱は最強!!!  作者: ハムハム
合宿編
9/20

第9話 合宿前夜

どうぞ読んでください。

ルベリエール魔法学校の合宿は1年に一回行われ、一年が山、二年は海、三年は学校で合宿をしている。そして、今年の一年生達を乗せたバスは草原を抜け、荒野を抜け、辺りは薄暗くなったころ、山の麓にある合宿場へと到着した。ルベリエール魔法学校から約一日、バスは合宿場の駐車場に停まり、生徒たちは伸びをしながら降りてきた。


「やっと着いたなぁ~」


合宿場の駐車場に停まったバスから、ジルは疲れたように降りてきた。


「これから合宿だろ。しっかり・・・」


ジルに続いてレンも降りてきた。


「でも、なんかもぉ~面倒になってきた」


ジルはやる気を無くしたように肩を落として歩いていると、後ろの方から大きな声が聞こえてきた。


「おーほっほっほっほ。お久しぶりですわね、シリカさん?わたくしの事覚えていらっしゃいますか?」


バス付近でB組の女子がシリカ・ブレイズールに話しかけているようだ。あまりに大きく、高音な声であったため、木霊となって反響していた。


「あん?」


レンは声のする方へ振り向き、ジルも垂れた頭を持ち上げ声のする方を見た。そこでは、並んで歩いていたシリカとリエラに対面して立っている赤い髪の女子が扇を広げて、口元を押さえながら話しかけていた。そんな彼女の後ろには同じクラスと思われる1人の女子生徒と何人もの男子生徒が就き従っていた。


「お久しぶりね、ミクサ・イフルートさん。お元気そうでなによりです」


シリカはただ涼しい顔で挨拶を返していた。頭を下げて、挨拶をしているシリカを見て、ジルはレンに話しかけた。


「おい、レン。あれ誰だぁ?」


「あぁ、ミクサ・イフルート。イフルート家の次期頭首候補だよ」


「なるほどねぇ、イフルート家かぁ。なら、あの高飛車な態度も納得できる。血は争えないねぇ~」


ミクサ・イフルート。火属性魔法の名門イフルート家の次期頭首有力候補で、国内ではブレイズールに次ぐ力を持っているが、本人たちはブレイズールより力は上だと思っている。そのためか、イフルート家は代々高飛車で立場が上の者に対しても不遜な態度をとっている。


「ほら、俺たちも関わらないようにさっさと行くよ」


「りょ~かい。俺もあいつ等とは関わりたくないからな」


そういうと2人はさっさと建物内へと入って行った。


---------------------------------------


「は~、やっと解放されたわ」


シリカは疲れたよう肩を落とし、合宿場へと向かった。


「お疲れさまでした、シリカさん」


シリカの隣で心配そうな顔でリエラが労ってきた。


「ありがとう、リエラ。まったくイフルートには毎回悩まされるわ」


バスから降り、ミクサ・イフルートに話しかけられてから実に20分の間、ずっとミクサの話しを聞かされ続けられた。シリカは話し出す機会を見つけられず、結果相手が話し終わるのを待つしかなかった。


「も~、イフルートは好き勝手に話し終わったら、さっさと行っちゃうし~、何なのよ、も~。リエラもごめんね、待っててもらって」


「いえ、気にしていません。それよりもシリカさんは大丈夫ですか?」


「大丈夫よ、ありがとう。相手はイフルート家だから無下にも出来ないし、かといって話したい相手でも無いし、困ったわ」


「ま~とにかく、今は合宿に集中しましょう。この合宿からクラスの出来が決まるんですから」


「そうね、リエラにも何かと相談するかもしれないけど、よろしく」


「は、はい。お役に立てるように頑張ります」


お互いに笑顔で語り合いながら、2人は合宿場へと歩いて行った。


---------------------------------------


合宿場に入ると生徒たちは各々の部屋へと向かった。部屋はすでに決められており、生徒たちにも知らされていたため、生徒たちは自分の部屋へと向かっていた。


「いいか、荷物を降ろしたら食堂に集合だからな。忘れるなよ」


ゴルバ・シギールが大声で自分の部屋を探している生徒たちへと呼びかけていた。


「俺たちは一階の101号室かぁ。めっちゃ端っこじゃねーかぁ」

「文句言っててもしょうがないよ、ジル。さぁ、行くぞ」


「私とリエラは同じ部屋ね。どこにあるのかしら」

「女子は二階ですよ、シリカさん。二階の201号室ですね」

「そっか、じゃー行きましょ」


「部屋どこだよ、イルサ」

「ダイキ、もう少ししっかりしてください。私たちは102号室ですよ」

「だるいなー、もー」


各々が自分の部屋に荷物を置きに行き、1時間もすると食堂に生徒たちが全員集合した。食堂の前のカウンターには先生達が並んでおり、食堂全体を見渡していた。全生徒が集まったのを確認すると、前に並んでいた先生たちの中からゴルバ・シギールが一歩前に出た。


「全員揃ったな。まず、こちらの方を紹介する。こちらはこの合宿場の管理人、セネール・ベルナディンさんだ。この合宿でお世話になる人だ。では、ベルナディンさん挨拶をお願いします」


ゴルバが言い終わると一歩下がり、セネール・ベルナディンと呼ばれた年老いた女性が前に出てきた。年の頃は60代前半、茶色の髪をパーマにし、160㎝ぐらいの身長で少し腰が曲がっている。


「ルベリエール魔法学校新入生のみなさん、ようこそお越しくださいました。私は当館の管理人を任されております、セネール・ベルナディンと申します。当館で分からないことがあったら、なんでも聞いてください。どうぞよろしくお願いします」


セネールは人のよい笑顔で全員に挨拶をした後、直ぐに下がった。そして、ゴルバが一歩進み出た。それから一時間ほど注意事項などを話した後、息を吐きながら「最後に」と付け加えて話し始めた。


「大浴場は女子が七時から九時、男子が九時から十一時の間に入るように。入り損ねた者は部屋のシャワーを使うように。では、明日から強化合宿が本格的に開始になる。今日は夜更かしせずに早めに休むこと。以上、解散」


ゴルバの号令を合図に全生徒がいっせいに立ち上がり、それぞれの部屋へと戻って行った。全生徒がいなくなったのを確認すると、ゴルバは「ふぅー」と小さな溜息をついた。


「今年も大変な時期が来ましたね、ゴルバ先生」


「セネールさん。いや、まったく。毎年新入生は必ず何かしらの問題を起こしますからね。夜中も目を光らせておかないといけません。正直、この年で徹夜は厳しいのですがね」


「どういうことですか、シギール先生」


ゴルバとセネールが話しているとルナシスが話に加わってきた。


「そうか、ルーナリア先生は今年が初めてだったな。毎年この合宿では問題を起こす生徒が多くなるのだ。二年、三年と学年が上がるごとに少なくなるが毎年新入生は限度を知らずに問題を起こす。特に多いのは覗き。思春期なのは分かるが時々それが度を超える時があるのだ」


「度を超える、とは?」


「例えば見張りをしている先生方への魔法攻撃、通風孔を通っての覗き、時には先生方の目をすり抜け堂々と突入しようとする者までるのだ」


「そ、そこまでするのですか?生徒たちは・・・」


「とは言っても、これはあくまで極端な例だ。毎年このようなことは起こらんよ。しかし、」


ゴルバの言葉にルナシスは生徒たちの想像を超えた行動力に驚きを隠せなかった。そんなルナシスに気付かず、ゴルバはこめかみを押さえながら話を続けた。


「それ以外でも未成年の飲酒、女子が男子の部屋へ行っての談話、夜更かしからの授業中の睡眠、といったことが生じる。まったく、手が回らんよ」


「毎年新入生を担当する先生は帰りには生気が抜けたように帰って行かれます。今年は新任のルーナリア先生も気が抜けなくなると思いますが頑張ってください」


とセネールはルナシスの肩に手を置きながら言った。そんなセネールにルナシスは苦笑いで答えるしかなかった。


「大丈夫ですよ、ルーナリア先生。俺がついているのでどうぞ安心してください」


ルナシスが苦笑いでセネールの話を聞いていたら、横から空気を読んだのか読んでいないのか分からない声が飛んできた。


「ローラン先生」


ルナシスが顔を向けるとガイウス・ローランが三人の会話に加わってきた。


「ルナシス先生は強化合宿は初めてですからね!分からないことがありましたら私に聞いてください。なんでもお答えします」


「は、はぁー」


詰め寄りながら言ってきたガイウスにルナシスは少し引き気味に答えた。


「とにかく部屋へ戻り、今後の見張りの確認をしますから部屋へ戻りますよ」


「そうじゃな。早く戻らんと見張りの時間になってしまうぞ」


ゴルバと今まで黙っていたウリウスがルナシスとルナシスに詰め寄っているガイウスに言った。


「そうですな。急ぎ、戻りましょう」


そういうとガイウスは1人足早に戻って行った。そんなガイウスに溜息をついたゴルバと「フォッフォッフォ」と笑っているウリウスが続いた。そして、最後にルナシスとセネールが続き、教師たちも部屋へと戻って行った。


---------------------------------------


夜が更け、現在は深夜の八時を回った頃、レンは部屋で紙資料に目を通しており、ジルは同じく部屋で寝ころんでいた。部屋には時々教師たちの怒鳴り声が聞こえてきていた。


「へっ!今年も頑張っている猛者共がいるなぁ」


「そのせいで毎年、この合宿を無くすかどうか検討されているけどな」


寝ころびながら話すジルにレンは資料を見ながら淡々と答えた。するとジルは急に起き上がり、レンを見て言った。


「ところでお前は何の資料を見てるんだぁ?」


「シギール先生がハンツさんから渡されたという資料だ。最近の魔物も動きの資料以外にも入っていてな」


「へー、どんな資料だぁ?」


ジルは立ち上がり、レンの隣に移動するとレンの見ていた資料を覗き込んだ。


「まずはあの魔法の実験記録だな。お前以外にようやく成功者が出たらしい」


「そいつはめでたいじゃねぇーか。お前の考えは間違っていなかったんだな」


「まーね。でも一回使ったら倒れたらしい。他の魔導師たちも同様らしい。やはり魔力の燃費が悪いな」


隣で喜んでいるジルを落ち着かせるように、レンは小さな声で言った。


「そいつは最早テクニックの域だからなぁ。構造を変えるだけで何とかなるのかぁ?」


「難しいだろうな。今のところ解決策は何もないよ」


「そもそも研究者の人数が少ないのもあるだろぉ。テスタ―だって俺を含め、ヒロにミリアリア、セッテ、デボンの5人だけだ。研究者だってお前とセンがメインであとはサブが5・6人いるだけだろ?もっと増やさねーかぁ?」


「あまり大掛りにやると王宮から目をつけられるし、今信用できるのは彼らだけだからね。増やす気は無いよ」


「そーかよぉ!でぇ?他の資料は?」


ジルはレンの説得を簡単に諦め、話を変えた。レンとジルはかれこれ5年近い歳月を一緒におり、一緒に死線を潜り抜けたこともあるため、お互いの事は良く知っている。そのため、ジルの提案をレンが絶対聞き入れないことがジルには分かった。だからジルは素直に納得するしかなかったのだ。ただ、それ以上に

(大変なのはこいつ等で俺は言われたことをやってりゃーいいだけだからな)

という気持ちもあった。


「他は大した資料じゃないね。レベリー結晶の売上やら生産数の確認やらそんな感じ」


「なら、もう風呂に行かないかぁ?九時も回ったし、明日から楽しい楽しい合宿が始まるからな。早めに寝るとしようぜ」


「賛成だ。じゃー行こうか」


そういうと2人はお風呂セットを持つを大浴場へと向かった。

この日、誰もその数日後にある大事件の事を予感できる者はいなかった・・・・。

誤字脱字があったら、報告をお願いします。

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