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最弱は最強!!!  作者: ハムハム
入学編
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第5話 入学式

どうぞ、読んでください。

『これより、ルベリエール魔法学校、入学式を始めます』


ルベリエール魔法学校、魔法学専門棟の一教室では今、入学式が行われている。そこには、当然シリカ達も出席していた。入学式の席順は、入学試験の成績順になっており、ステージに向かって右側最前列が入学試験首席で左側最後尾が入学試験最下位の順に並んでいる。今年入学した人数は312人、その内309人の新入生が出席し、学年首席と次席、最下位の3人が欠席した。そんな中、入試3位のシリカは最前列の右から三番目の席に座っており、左側の席、つまり学年首席と次席の席を睨んでいた。


(これからライバルになる人の顔を見ておきたかったのに何で来てないのよ!)


常に上を目指すシリカにとって、下位の生徒には興味が無かった。それは仕方なかったと言える。入試は数学、科学、歴史、魔石学、魔学論、魔法属性学、魔戦術学の七科目、700点満点のテストでシリカは658点、4位は589点と下位の者達を大きく突き放したのだ。ついでに、学年次席が698点、首席は700点満点だった。しかし、それでも下位の者達にとっては、シリカも超えるべき存在だった。学年首席と次席がいない今、注目はシリカに集まっている。それでもシリカはその視線に気付いていながら、それを無視していた。その時、シリカの右肩が叩かれ、シリカは視線を右側、つまり学年4位の生徒に向けた。学年4位は女子生徒で、黄色い髪をショートカットにし、身長155㎝位の小柄な少女だった。シリカが美人なら、この少女は可愛い顔立ちをしていた。


「あ、あの…。わたし、リエラ・ハイヒールと言います。宜しければ、お友達になってください」


リエラ・ハイヒールと名乗った少女は、顔を赤らめ、シリカの制服の腕の裾を摘みながら言った。それに対し、シリカは目をパチクリさせた。いきなり自己紹介して、「お友達になってください」と言う少女に気恥ずかしさを覚え、シリカは


(入学式の最中に言うこと!?)


と、思いながらも、内心少し嬉しかった。シリカは中学時代、勉強でも、魔法でも、周りより優秀過ぎたため、友達と呼べる人はいなかった。そのため、高校では魔法と友達作りを頑張ろうと思っていた矢先にリエラに声をかけられた。


「す、すいません。ご迷惑でしたか?」


「え、あっ、ちっ違うわ。私はシリカ・ブレイズール、よろしくね」


半分涙目になっていたリエラにシリカは急いで返事をした。しかし、それは早計過ぎたとシリカは思い始めた。何故なら彼女は…、


「ブレイズール……」


彼女も気付いたように目を丸くした。彼女の名前、ハイヒールは光属性最強の一族、ブレイズールと同じく魔十導家の一属性を統べている家系だ。魔十導家の家系はあまり交流が無く、仲は悪く無いが良くもない。どの家系も積極的に交流を持たなかった結果、魔十導家の家系には[他家の魔十導師とは友と見ず、敵として競い合え]という暗黙の了解が出来てしまった。しかし、シリカ自身は仲良くしたければすればいいし、そもそも、人を本気で嫌いになる事はそうそう有ることでは無いと思っているため、暗黙の了解など、どうでも良かった。しかし、それはシリカの考えであり、相手も同じ考えであるか分からないため、内心焦った。リエラは少し考える様子を見せ、顔を上げ、シリカを真っ直ぐみた。


「あ、あの…。私も魔十導家の家系ですが、お友達になっていただけますか?」


シリカは又、目を丸くし、リエラを見返した。


「アナタはそれでいいの?暗黙の了解の事はアナタも知っているでしょ?」


「はっ、はい。知っていますが、わたし達ハイヒール家は元々その言葉を支持していませんから、わたしは気にしません」


シリカはリエラの言葉に嬉しさがこみ上げてきた。自分と同じ考えの人がいて、嬉しかったのだ。実はシリカの通っていた中学にも魔十導家の者がおり、シリカを必要以上に追い詰めてきた。そのため、シリカは自分の考えを曲げることは無かったが、他の魔十導家の家系を信用出来なくなっていた、今日この時までは。リエラの目は本気だった。ブレイズール一族の直系の直感がそう判断した。そう判断したのと同時にシリカは口を開いていた。


「私も同じ考えよ。改めて宜しく、リエラ」


「はい、宜しくお願いします、シリカさん」


リエラの顔はパーっと明るくなり、満面の笑みを浮かべて言った。


(やっぱり、この子可愛い)


シリカの方は嬉しさと共に新しく妹が出来た感覚を持っていた。




入学式は順調に進んでいき、もう終わりが近づいていた。その間、シリカは隣のリエラと小さな声で話していた。


『続いて、試験優秀賞授与。受賞者は起立』


進行役の先生がそう言い、シリカ、リエラ、イルサの3人が立ち上がった。 この学校では毎年入学試験順位5位以内の生徒は表彰されている。今年は出席していない首席と次席、シリカ、リエラ、イルサが受賞した。


『入学試験第五位、イルサ・アイリス』


「はい」


名前を呼ばれ、イルサはステージ上り、壇上前に立ち、理事長から賞状を貰った。


『入学試験第四位、リエラ・ハイヒール』


「は、はい」


リエラも同じように賞状を貰い、席についた。


『入学試験第三位、シリカ・ブレイズール』


「はい」


シリカが呼ばれた瞬間、建物内に大きな拍手がおきた。これはルベリエール魔法学校の伝統で、本来なら学年首席の時に生じるのだが、首席、次席共に欠席だったため、三位のシリカに拍手がおきたのだ。そして、シリカが同じように賞状を貰い、席に戻った。


『えー、入学試験首席、次席は本日欠席なため、省略させていただきます』


進行役の先生がそう言い、次に進もうとした時、いきなり会場の扉が開かれ、2人の新入生が入って来た。レンとジルだ。会場の視線が2人に注がれたが、2人は気にせず、自分たちの席に向かった。


(えっ!!!)


シリカやブレイズール分家の者達の視線すら無視して、レンは最前列の一番右側に座り、ジルは右側二番目の席、つまり首席と次席の席に座った。


「なっ、何でテメーがそこに座ってんだよ!」


ダイキが怒りを顕わにし、立ち上がった。この2人を知るもの達もダイキと同じく怒りを顕わにしており、下手なことを言えば、大乱闘になりそうな雰囲気だった。そんな雰囲気の中、レンとジルは無言のまま座っていた。2人の態度に怒りが頂点に達したダイキはつかみかかろうとした瞬間、


『静粛に、欠席者2名が来られたので試験優秀賞授与式を再開します。入学試験第二位、ジル・アースガン』


「はい」


先程まで、騒いでいた者達は先生の言葉で静まり返り、口を開け、茫然とした。そんな中、ジルはノラリクラリと賞状を貰い、席に着いた。


『入学試験第一位、レン・ルベリエール』


「ハイ」


レンの名を呼ばれた瞬間、ブレイズールの関係者達は今度こそ、大口を開けて、驚いた。そんな事を気にもとめず、レンは賞状を貰い、席に着いた。シリカ達の驚きが冷めない中、入学式は淡々と進んで行き、残るは閉式の言葉だけとなった。


『これを保ちまして、ルベリエール魔法学校入学式を終了します。この後、クラス分けを正面玄関に張り出します。自分のクラスを確認後、解散してください。明日から、ルベリエール魔法学校の一員として頑張って下さい』


進行役の先生はそう言い、下がった。新入生達は先生に言われた通り、全員正面玄関へと向かった。レンとジルも立ち上がり、正面玄関へと向かおうとした時、ブレイズール一族が2人の前を塞いだ。最後尾には、シリカと一緒に行こうとしていた、リエラがオタオタとしながら、状況を見ていた。しかし、レンとジルは興味無さそうにしながら、ブレイズール一族の面々に視線を向けた。


「何か用ですか?」

 

レンは緊張など全くない、いつも通りの言葉で言った。それに対し、ヴァイアスは怒気をはらんだ声で言った。


「貴様、何をした」


「何、とは?」


「貴様のような無能者が魔法学校に入学し、首席を取れるわけが無い。ルベリエールの名を使ったのか?」


「安い言葉ですね。俺もちゃんと試験を受けました。首席は実力です。それに入学試験は筆記だけですからね。魔法の有無は関係ありません」


「魔法を使えぬ者に魔法の知識が身に付くはずが有るまい」


「魔法は多少使えますし、現代の魔法論はレベリー結晶の事が主体ですからね」


「レベリー結晶が主体だから、何だというのだ」


「レベリー結晶は俺が造りましたからね。分かるのは当然です」


「何を言っている。レベリー結晶はレベリー・クライスタールが造った物だ、貴様が造った物ではない」


「レベリー・クライスタールは、俺の事です」


「「「「!!!!!!!!!!!!!!!」」」」


「おい、レン!!」


ジルが慌てて、レンの腕を引っ張った。


「何だ、ジル?」


「何だ、じゃねーだろ。その名は秘密だろ?ホイホイ教えてんじゃねーよ」


「別に秘密にしていたつもりは無いけどね」


「いや、ちげーだろ。その名は今、どれほどの大きさか分かってるだろ」


「まぁ、いいんじゃない?どうせ遅かれ早かれ知られることなんだから」


「楽観視し過ぎだよー、お前はー」


ジルは頭をかくきむしりながら叫んだ。一方、ヴァイアス達と近くにいて話を聞いていたリエラは何を言われたのか分からず、言葉を失っていた。最初に我を取り戻したのはシリカだった。


「お兄様がレベリー・クライスタール?」


「そうですよ。驚きました?」


「ッ!!!!!」


レンの笑みにシリカは顔を赤くしてたじろいでしまった。


「レベリー・クライスタールという名は俺の偽名です。レベリーはレン・ルベリエールの略称で、私が造った結晶という意味でレベリー・クライスタールと名乗っています」


シリカはまた、言葉を失ってしまった。その時、後ろから声が飛んできた。


「コラ、お前たち、さっさと移動しないか」


レンとジルの後ろからルベリエール魔法学校理事長リサリー・ルベリエールが声をかけてきた。


「今から移動するよ、姉さん」


レンは後ろを振り向いて言った。


「なら、さっさと行け」


「ルベリエール」


リサリーがレンに注意していると、ヴァイアスがリサリーを睨みながら呼んだ。


「何かな?ブレイズール現頭首殿?」


「貴様等がこの無能者を養子にしたというのは本当か」


「えぇ、本当ですよ、現頭首殿」


「何故、こんな無能者を養子にした」


「何故と仰られても、確かにレンは魔法に関しては無能者かもしれませんが、魔法学に関してはこの上が無いほど優秀な人材ですよ?」


リサリーの言葉にヴァイアスは黙って睨みつけた。シリカ達は反論すら出来なかった。このルベリエール魔法学校を救ったのは正真正銘レベリー・クライスタール、つまりレン・ルベリエールが造ったレベリー結晶のおかげだったからだ。そして、レベリーを憧れていると言ったシリカは最早どういう表情をしていいのか分からなかった。


「魔法学が優れていようが、魔法を扱えない事に代わりはない。ここが魔法学校なのだぞ、魔法が扱えない者がいて良い所ではない」


「魔法学校は魔法を学ぶ所です。魔法が使えようと使えまいと関係有りません」


そう言うとリサリーはレンとジルの方を見た。


「お前達は早くクラスを見に行け。この後、仕事があるのだろ?」


「そうだね、行こうジル」


リサリーに言われ、レンとジルはブレイズールの者達に目もくれず、その教室を出て行った。


「それでは、私もこれで失礼します」


リサリーはヴァイアスに一礼した後にその場を去っていった。

その場に残されたヴァイアス達は去っていくリサリーを見ていることしか出来なかった。


「あっ、あの…」


今まで一言も喋らず、オタオタとしていたリエラが口を開き、一同の視線がリエラに集まった。


「そっ、そろそろクラス分けを見に行きませんか?」


一同の視線にさらされながら、リエラは小さな声で発言した。それは最早見ていられないほどの挙動不審気味だった。そんなリエラを見て、居た堪れない気持ちになったシリカは、リエラの提案に賛同した。


「そうね。ここにいてもしょうがないし、行きましょう、お父様」


「あぁ…」


そう言い、一同は会場を出て行った。そして、最後尾にいたシリカにリエラが近づき、小さな声で話しかけてきた。


「さっきの人のこと聞かない方が良いですか?」


「ごめん。私も混乱しているから、また今度説明するわ」


シリカの答えにリエラは納得し、一同はクラス分けを見に行った。そして、そこでも、驚くことになった。

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