第3話 人生の分岐点!
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ゴミ溜めに1人の白髪の少年が増えてから約2ヶ月がたった。今日は快晴だがゴミ溜めの住人達は今日もゴミあさりに励んでいた。住人と言っても人は多くない。そこにはレンを入れても八人しかいなかった。そして、そんな人々はゴミの中から使えそうな物や、リサイクル出来る物、あちこちの部品を集めて新しく作った物などを売り、食費を稼いでいる。そこに仲間意識や喧嘩や強奪はない。相手の物が欲しければ物々交換。それがここの暗黙の了解だった。今日も他の7人は、ゴミをあさっていたがレンはただジッと動かず、地面を見ていた。
(僕は、何故まだ生きてるんだろ。…それは約束があるから。今更生きててもしょうがないだろ。…けど、昔決めたんだ。あの人のために強くなり、守りたいって。あの人のように・・・。周りから何を言われても守ってくれたあの人のように。じゃあ、これからどうするんだ?…分からない、分からない!)
レンは2ヶ月の間、ずっと自問自答し続けてきた。しかし、ずっと答えが見つからずにいた。
その時、いつもは静かなハズのゴミ溜めがざわついた。住民達は高い山に登り、同じ方向を見ていた。レンも彼らが見ている方向に視線を向けると、このゴミ溜めに向かう一台の馬車が目に入った。その馬車は真っ直ぐゴミ溜めに向かってきた。そして、レンが座っている前で馬車は止まった。レンが馬車を見ていると、そこから若い女性と若い男性が降りて、レンに近ずいてきた。その様子をゴミ溜めの住人達はじっと見ており、降りてきた女性を見て、よだれを垂らす、唇を舌で舐める、口笛を吹くなどなど分かりやすい態度を出していた。
彼らの反応は分からなくはない。その女性は恐らく23・4歳位で、肌に艶があり、同じく艶のある黒髪を腰までたらし、黒の服を着ている。服の上からも分かるスタイルは腰が程良い細さで、自己主張の激しい胸が服を押し上げていた。男性の方は黒い髪をオールバックにし、銀の眼鏡をし、女性と同じく黒い服を着ていた。近ずいてきた2人がレンの前で止まったので、レンは2人に目線を向けた。すると、女性は小さく笑い、一歩進み出た。
「君がレン・ブレイズール君だね」
「違う、今はただのレンだ」
質問を力なく否定された女性は最初怪訝そうな顔をしたが、直ぐに得心の行った顔をした。
「私はこう言うものだ」
女性はそう言って、名刺を差し出し、その後に男性も名刺を差し出した。
「[ルベリエール魔法学校 理事長リサリー・ルベリエール]、[ルベリエール魔法学校 理事長補佐ハンツ・ルベリエール]。この国を代表する魔法学校のトップが僕に何か用ですか?」
「流石に知ってたか」
「この位常識でしょう」
この国には魔法学校が100校近く点在するが、その中から毎年優秀な人材、成績、成果を残した学校の12校が選ばれ、優遇される。その12校を[十二魔校]と呼ばれている。ルベリエール魔法学校はその中でも、一度も十二魔校から外れたことがない超エリート校なのだ。
「で、そのルベリエール魔法学校のトップ2人が何のようですか?」
「単刀直入に言う。君をスカウトに来た」
「スカウト?」
レンは意味が分からなかったが、2人の真面目な顔を見て本気であることがわかった。
「どういうことですか?」
レンもその場に立ち上がり、真面目に聞き返した。
「君は去年の十二魔戦大会の成績を知っているか?」
「いいえ」
「ここ数年、我が校の成績がいまいちでね。特に魔法学の方で成績は悪い。」
十二魔戦大会とは、運動会と研究発表会が合わさった大会で、十二魔校同士で争われる大会が十二魔戦大会だ。そこで行われる運動会[魔戦技術競技]の成績と研究発表会[魔学論発表会]の成果は翌年の十二魔校の選出に大きく関わってくる。そして、この大会は魔戦技術競技のみ、夏の部と冬の部に分かれており、冬の部に魔学論発表会がある。また、十二魔戦大会に出場出来ない学校は各学校内のみで行われ、そこでの成績を提出しているだけで終わってしまう。
「我が校は魔法戦が得意な奴が多いからな。しかも、今までのままでは、遠からず十二魔校から外れるおそれが出て来た。そこで、魔学論発表にも力を向けようとしたが私も魔戦学専門でね。魔法学のことはさっぱり分からんし、専門教諭とかとも話したが、結論は出なかった。どうしようか悩んでいたら、コレを見つけたのだ」
リサリーは後ろを振り向き、ハンツの持っていたアタッシュケースから5・6枚の紙の束を取り出した。それを見て、レンは目を見開いた。
「覚えがあるか?これはお前が小学校3年、つまり一年前に書いたお前の作文だ」
「何故それをあなたが…」
「お前の通っていた学校はルベリエールの系列でね。その学校を視察に行った時に見つけたのだ」
リサリーは紙をパラパラとめくり、ながら話した。
「コレは作文というより研究レポートだな。しかし、中身は面白い内容だったぞ。…なるほど、物を使った新魔法とその可能性か。クックックッ、お前本当に小学生か?」
笑いながらリサリーはレンの書いた作文を読み続けた。レンにとっては余り思い出したくない物だった。その作文で、クラスや先生からも馬鹿にされ、学校中に広まり、しばらくレンを見るたびに笑う奴らがいたからだ。そんなレンを見て、リサリーは笑みを向けてきた。
「どうだ?この研究を我が校でやってみないか」
レンはその一言に今日一番驚いた。こんな夢想を信じ、力を貸してくれるというのだ。レンの頭には驚きしかなかった。
「本気ですか、こんな夢想を信じて力を貸すなんて」
「本気も本気だ。それに、今のお前は帰る家が無い子供だ。我が家に来い」
「僕には魔法が使えません。魔法学校に通うのはまずいのでは?」
「そんなもん、我が家の子になればどうにでもなる」
「学校に通うお金もない」
「我が家の子になれば金などいらん」
「魔法が使えない子を養子にすれば白い目で見られるかもしれませんよ?」
「私の権威をなめるな。そんなことでは揺るぎはせんし、これが完成すれば賞賛の目に変わる」
「例え、研究が成功したとしても何年先になるか分かりませんよ」
「少なくとも5・6年は我が校も保つさ。お前が高校卒業までに何とか形にすればいい」
矢継ぎ早にレンは質問したが、その全てにあっさりと答えたリサリーにレンはもう何も言えなくなった。それを見て、リサリーはニヤッと笑い、声を大きくしていった。
「四の五の言わず、家に来い。私達にはおまえが必要だ」
リサリーはそう言いながら右手を差し出した。それを見たレンは呆然とその右手を見た。そして、レンの頬を温かい雫が流れた。それは涙だった。レンは涙を流していることに気付かず、右手を見続けた。そんなレンの様子を見て、リサリーとハンツは驚いたが、直ぐに笑みを浮かべ、2人で右手と左手を差し出した。
「我が家はお前を歓迎する」
それを聞いたレンはようやく自分が涙を流していることに気付き、涙を拭いた。そして、
「よろしくお願いします」
レンは決意した顔をし、2人の手に握手した。この瞬間、ただのレンは、レン・ルベリエールとなった。
ルベリエールの屋敷に帰る馬車の中でレンはリサリーに膝枕されながら眠っていた。
「しかし、涙を流されたときは驚きました」
ハンツは眼鏡をかけ直しながら言った。それにリサリーは膝の上のレンを見ながら言った。
「それは、しょうがないことなんだろうな。コイツは産まれてから、気味が悪いや、役立たず、落ちこぼれと言われてきたんだ。人に優しくされた記憶なんて殆ど無かったんだろうな」
リサリーはレンの頭をそっと撫でながら言った。
「しかし、私には家族がここまでする事の方に驚いたぞ」
「それは同意しますね。彼の体の傷は酷すぎる。火傷が酷くて炭化した皮膚に、何度も骨を折られた後、殴ったり蹴られたりした痕は最早分からない数ですし、刃物での切り傷なども多い。とても信じられない。歴戦の魔法師でもこんなに多くの傷は出来ない。姉さん、簡単に見ただけでも怪我の数が桁違いだ。彼は一度病院で検査して貰った方がいい」
「分かってる。私だってそうするつもりだった」
2人は、それぞれの感情の籠もった目でレンを見た。ハンツは悲痛な目でレンを見て、リサリーはこの傷を負わせた奴らへの怒りを籠こもらせた目をしていたが目を閉じ、気分を落ち着かせて、レンを見つめた。
「今まで、良く耐えたな。今はゆっくり休め」
リサリーは、そう言ってレンの白い髪をなで続けた。
そして、レンはルベリエール家に養子に入り、一年間を研究の準備に費やし、レン達の研究チームが研究を開始してから、5年の歳月がたった。
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