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最弱は最強!!!  作者: ハムハム
因縁編
18/20

第18話 面会

忙しい中、少しずつ書いていったので、前後で文脈がおかしくなっている所があるかもしれません。その時は連絡をお願いします。

空が紅く染まる頃、レン達はブレイズール一族本家宅へ案内された。ブレイズール家の使用人により案内されている本家宅は和式の屋敷で広く、何十人も住めるほどだ。レンは久々に見る屋敷に感慨深いものを感じていた。そんな事を感じているといつの間にか隣に来ていたジルがレンの方を向いて口を開く。


「レン。俺は正直言ってお前が手を貸すとは思ってなかった。お前は確かに甘いと思う。でも、この一族に対する憎しみは本物だった。それが一体どういうわけで手を貸そうと思ったんだぁ?憎しみが消えたってわけじゃぁないだろぅ?」


ジルが真剣な眼差しでレンを睨んでいる。それをレンは受け止めながら返した。


「当り前だ。憎しみなんて簡単に消えるものでもない。この件が片付いたらケリをつけるさ」


「ケリをつける?なんでさっさとやらねぇ」


「今回の件、少し面白そうだからだよ」


「面白そう?」


「あぁ。予想だけど、俺にとっては面白いモノが見れそうだから引き受けた。それだけの理由さ」


レンは正面を向き、ジルから視線を外す。その横顔をジッと見続けるジルにはレンが笑っているように見えた。レンは基本的に心から感情を表に出すことが無い。いつもまるで仮面を付けているような錯覚すら覚える時すらある。しかし、ジルにはそちらの方が親しみが持てた。だが今の・・・、いや、本日のレンは本心から楽しんでいる事がジルには分かった。そんなレンにジルは久しぶりに背筋が寒くなるのを感じた。


「それで主様、何が面白そうなのじゃ」


レンとジルが話していると後ろから付いてきているウラルが聞いてきた。その隣にはユキもおり、ユキも口には出していないが同じことを思っていたのか真っ直ぐな視線をレンに向けてきていた。


「今は何も分からない。けど、何かを隠している事が分かった。と言うか、俺にだけ分かった、かな」


「どう言う事じゃ?」


ジル、ウラル、ユキが怪訝そうな顔をレンに向けている。今の答えでは誰も分からなかったのだろう。その3人の顔を見て、レンは先ほどの不気味は笑みではなく、年相応の少し幼さが残る笑顔で笑った。


「簡単な話だよ。何があるかは分からないけど何かが俺の力に引っかかった」


「「「!!」」」


今度は3人とも何かを察したように驚き顔を浮かべた。


「ってことは俺達は誰かの術中ってことか」


ジルは呆れたように言う。


「しかし、妾とユキまで術中とは何か納得いかないのぅ」


「そうですね。正直に申しますと人間が私達に術をかけるなど不可能だと私は思います。特に私は・・・」


「ユキ、そこまでだ」


「!!」


「それは秘密事項だろ。むやみに口にするな」


「失礼しました。我が主」


何かを呟きそうになるユキをレンは片手で制す。そんなレンにユキはハッとなり直ぐに頭を下げながら謝罪した。


「しかし、ユキの考えももっともだな」


「だなぁ。それは謎だなぁ」


レンは顎に手を当てて考え始め、ジルもユキの問いに同意する。そんな事を考えているうちに4人は案内された部屋に着いた。案内していたブレイズール家の使用人は結局、一言も話さずに部屋の前に着くと一礼して離れて行った。その使用人の事はレンも知っていたが別に何の関わりが無かったため、別に話さなくてもどうとも思わなかった。案内した部屋の襖には所々赤黒い汚れが付いており、そこだけ他とは違う重苦しい空気を感じた。それでもレン達4人は気にした様子も無く、平然と襖を開ける。しかし、開けた瞬間その平静は何処かへ吹き飛んだ。


「これは・・・、すごいなぁ」


4人を代表してジルが呟く。部屋の内装はいたって普通の畳に掛け軸、机といった和式の内装で金をかけているのが一目で分かるほどの装飾だったが、4人が驚いたのはその内装の所々に襖と同じく赤黒い染みが着いていた事だ。壁や襖、果ては天井にさえ赤い何かが飛び散った跡があったのだ。流石にその異様な光景に4人は平静ではいられなかった。そんな中で一際異様だったのは布団に寝かされている人物だ。布団も元は白い布団だったのだろうが今は赤と白の斑模様となっていた。そんな空間にヴァイアス・ブレイズールを始め、メアリ、シリカ、ホムラ、そしてヒザンの5人が渋い顔でレン達が来るのを待っていた。


「入ってくれ」


ヴァイアスはいつもより更に低い声でレン達4人を招き入れた。レン達も別に許可を待っていたわけではないが、ようやく部屋の中へと入って行く。そして、そのまま布団に寝かされている人物の近くへと歩みより、枕の近くで腰を下ろした。布団に寝かされていた人物は口と鼻以外全身を包帯で巻かれており、布団の中から伸びる管で輸血されており、包帯のせいで誰だか分からない状態だったが、レン達は名を聞かされていたため、それがイリア・ブレイズールだと分かっていた。レンは部屋を見た時こそ驚いたが今は冷静にイリアを見つめ、血で赤く染まっている包帯を解いていく。その光景を見て、他の面々は息をのむ。


「・・・」


そんな面々を無視してレンは包帯を解き続け、イリアの顔部分だけ顕わになった。イリアの顔を見た瞬間、レンは目を細め、ジルは目を見開き、ウラルとユキは興味なさそうに見ていた。魔人2人に関してはレン以外の人間に興味は無いのだろう。イリアの顔は所々ヒビが入っており、まるでパズルが崩れかけているような状態だった。ヒビ割れた箇所からは今だ血が流れ出ており、輸血されていなければ死んでいただろう。場所によっては肉が腐り始めている箇所もある。そんな顔を見て、レンはそれが何処まで進行しているのか確かめるために布団を剥ぎ、足の先から頭の上まで触りながら確かめた。


「ほぼ全身、足からおでこの中心ぐらいまで進んでいるね」


イリアの全身を確かめた後、レンは静かに呟いた。


「そうだ。今から四年ぐらい前、イリアが足の痛みを感じ始めた。始めは爪が割れる、足の皮膚が少し裂けるといった小さな出来事だったのだが、それが少しずつ進行していき遂には立てなくなり、起き上がる事が出来なくなり、喋る事すら出来なくなっていった。今では寝たきりで、食事の流動食を食べる時以外眠ったままだ」


ヴァイアスは悔しそうに言う。ヴァイアスもイリアを助けたいが何も出来ない自分に苛立ちを覚えていたようだ。


「レンよぉ、これってまさか・・・」


ヴァイアスの言葉を聞いていたジルは思い当たるフシがあるようにレンに問いかける。


「いや、魔人の力ではないだろう」


しかし、ジルの言いたい事を瞬時に理解したレンは直ぐに否定した。そして、後ろに控えているウラルとユキに視線を向ける。


「これは魔人の力じゃない、そうだろ?」


「そうじゃ」

「その通りです」


レンの問いかけにウラルとユキは直ぐに肯定した。


「魔人の力と言ってもそんな万能と言うわけじゃない。魔人の力とは本来の力、魔法なんかの力の援助的なモノが多いんだ」


「そうなのかぁ」


「だから、こんな直接的な能力と言うわけではない」


じっくりとイリアを見つめるレンの顔は少しずつ不気味な笑みへと変わって行く。


「面白いね。こんなの見たのは初めてだ」


「面白いだと!!」


ジッと4人の話を聞いていたヴァイアスは厳つい顔で立ち上がろうとした。


「お待ちくださいお父様。落ち着いてください」


しかし、それはメアリによって押さえられた。それを横目に見ていたレンは鼻で笑った。


「何なんだろうなぁ、これ・・」


ヴァイアス達の行動を気にも留めていないジルが言った。


「もしかしたら、俺達は相当凄いモノを見ているのかも知れないよ」


ただ口にしただけのジルの質問にレンが訳知り顔で返す。


「何か分かったのかぁ?」


「これを行っている術師は稀代の天才かもしれないね」


「どういう意味だ!!」


レンの回答にヴァイアスが詰め寄ってきた。他の面々も汗を垂らしながら驚いた顔でレンを見つめている。


「貴様、イリアに何が起こっているのか分かったのか!!」


「推測だけどね」


「一体イリアに何が起こっているのだ!!」


焦り顔で立ち上がり、詰め寄ってくるヴァイアスにレンは冷ややかな視線を向ける。ヴァイアスだけでなくメアリやヒザン達も何を言われても受け止める覚悟を持った顔でレンを見ている。


「端的に言うと、おそらくこの人は呪術にかけられている」


レンの一言は誰もが予想し得なかった回答だった。ブレイズールの面々だけでなく、ジルやウラル、ユキもがレンの言葉に目を丸くした。そんな中でヴァイアスが放心したように膝を付き、呟く。


「呪術、だと!!」


「えぇ。人類最初にして最古、今は使用方法すら分からない魔法。それを誰かが復活させ、使っている」


「そんなもの、一体どうすればいいのだ。呪術は失われた魔法。使用方法はおろか解呪方法すら分からぬ魔法だ」


ヴァイアスは畳に手を付き、青い顔で言った。ヴァイアスだけではなくシリカもホムラも呪術の事を知っているため、ヴァイアスと同じように青い顔で放心しきっている。しかし、ヒザンとイリアだけは青い顔をしているがそれでもまだ何かを信じているようにレンを見つめている。


「しかし、レン。貴方なら呪いを打ち消せるのではなくて?」


メアリの一言でヴァイアス達は顔を上げ、レンに視線が集まった。


「貴方の分離の力を使えばお母様の体と呪いの力を離す事が出来るのではないかしら」


「無理だね」


メアリ達の希望をレンは一言で切り裂いた。


「確かに病気、毒なども俺の力で何とかなるけど、呪いは訳が違う」


レンはブレイズール達の視線を真っ直ぐ見返して話を続ける。


「呪いとは対象者を決める事から始まり、呪い続ける事で対象者を苦しませ殺していく魔法だ。今この場で呪いを切り離したとしても所詮一時凌ぎでしかない」


「そ、そんな・・・」


メアリまでもが悔しそうに目を伏してしまった。しかし、ヒザンはまだ諦めていない顔でレンに視線を向ける。


「では、レンよ。何か方法は無いのか。確か呪いとは術者を倒せば消えるのではなかったか?」


「そう言うのもあるけど、本来は術者が死んでも呪いは続くモノがほとんどだったそうですよ。しかし、その場合は術者ではなく呪術に用いている道具を壊せば術者からの力の供給は無くなり、後は対象者の体に残っている呪いを打ち消せばいいだけらしい。俺も本で読んだだけだから詳しくは知りませんがね」


ヒザンからの質問にレンは丁寧に返した。


「呪術を解く方法がお前の言う通りでも術者が何処にいるか分からぬこの状況ではどうすればいいのだ」


レンが呪術の解呪方法を言っても、それがどれだけ無謀な事か正確に理解したヴァイアスは今にも消えそうな声で呟く。それは何処にいるか分からない術者を見つけなければならないと言う途方もない事への絶望の表れだった。かつて恐怖したヴァイアスのそんな光景を見て、レンは軽蔑せずにはいられなかった。


「まぁ、方法が無くも無いんだけどね」


その言葉にまたも全員の視線がレンに集まった。


「どういう事だ」


ヴァイアスは手を付いたままレンに言った。


「今まで不思議に思わなかった事の方が俺にはどういう事だって思ったけど、全員よくこんな所でジッとしていられるよね」


全員が困惑したような視線を向けてくる。


「何年もいて気付かなかったの?人間がこんだけ血や肉が腐食しているのに何とも思わなかったのか?」


その一言でジルが理解したように大声で叫んだ。


「そうか。臭いか」


全員が驚愕に顔を歪める。しかし、ウラルとユキだけは今だ得心がいかないような視線を向けている。


「臭いがどうしたと言うのじゃ。確かにこの部屋は臭うが別にどうという程の事ではなかろぅ。なぁ、ユキ」


そう言うとウラルは隣に座っているユキに同意を求めてきた。


「そうですね。人が死んでいる臭いなど今更どうという事はありませんが・・・」


レンは2人の話に溜息をついた。それにジルも呆れたように2人に視線を向けている。


「つまり、術中だったのは人間だけでこの2人は気付いていなかったってことかぁ・・・」


「そう言う事だね。今更ウラルとユキには人一人が死にかけている臭いは関係ないみたいだね」


「何じゃ2人して妾達が悪いと申すのか?」


レンとジルが呆れている傍でウラルとユキが納得いかないという顔でレンとジルを見返した。


「まぁ、2人は置いておくとして確かにこの状態で何の臭いもしないなんておかしいぃ。何かされていると考える方が妥当だなぁ」


ジルはレンに向き直ると真剣な面持ちで呟いた。


「しかし、そんな術が一体何処でかけられたというの?相手が私やシリカ、ホムラが気付かせないほどの超一流でもお父様やヒザンお爺様に気付かせずに術をかけるなんて難しいのではないかしら。ましてお母様の呪いの事もお母様は一族随一の魔力の探知力を持っているわ。それを気付かせずになんて・・・」


「別にイリア・ブレイズールに呪いをかけてから何かしたという事は無いだろう。何かをしてから呪いをかけた。それなら簡単だ」


「して、その何かとは何なのじゃ」


全員が真剣な面持ちでレンの言葉を聞いている。それほどまでにブレイズールにとってイリアは大切な存在であり、レン達にとっては未知の脅威と興味を抱かせる事だったのだ。


「恐らく感覚を鈍らせる類の術だと思う。だからこそ臭いに気付かなかったし、術にかけられている事にも気付かなかったんだろうね」


「そんなものが一体いつかけられたのかしら・・」


「いつじゃ無いだろうね」


「え?」


「何処でだよ」


全員の疑問の表情になった。


「この類の術はある特定の場所に仕掛けて、そこを通る事によって術をかけたり、解除したりするのが一番効果的なんだ。こんな用意周到な奴なら恐らくそうしていると思う」


「この屋敷内の何処かに仕掛けられているという事かしら。でも、貴方も知っているとは思うけれど、この屋敷には探知結界が張られているのよ?そこを通ったり、術が発動していたりするなら、私達が気付くわ」


メアリが真剣な眼差しで聞いてきた。


「でも、その結界は永続的ではない」


「!」


「必ず張り替える時がある。その時にやられたと思うのが普通じゃないかな?」


メアリは顎に手を当てて、考え始めた。


「確かに辻褄は合っている。しかし、推察の域は出ないな」


今度はヴァイアスがレンに視線を向けて口を開いた。


「まぁ、そうだね。だから確認しに行くしかないね」


「確認?」


「さっき言っていた感覚を阻害する術を確認しに行けばいい」


「何処にあるのか分かったのか!」


「予測だけどね」


ヴァイアスの驚き顔にレンは平然と答えを返した。そして、静かに立ち上がり襖の前まで行くと首だけを回し、座ったままでいる面々を見返す。


「行くよ」


「あ、あぁ」


ヴァイアスが慌てて返事をし、立ち上がると他のブレイズールの面々も急いで立ち上がる。その後にジルが面倒くさそうに立ち上がり、ウラルとユキは既に立ち上がっており、レンの両隣りに並んでいた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


一同はレンに連れられてブレイズール一族の敷地への出入り口である門の前まで来ていた。


「ここがそうなのか」


ヴァイアスは門の一点を見ながら呟く。


「恐らく」


と、レンは返した。一同はレンが指を指している一点を見ている。そこは人が出入りをする所の丁度真上にあるブレイズールの紋章が描かれた黒曜石の板が飾られていた。ブレイズールの紋章は火の大地から飛び立つ火の鳥をモチーフにしており、それはブレイズールの誇りとなっている。


「火の鳥、私達の誇りであり、目指すべき所を模したレリーフ。本当にこれなのかしら・・・」


「間違いない」


メアリの言葉にレンは冷たく返す。レンのこのレリーフの意味は知っていた。ブレイズール一族に属した事のある人間ならば誰しも子供の頃に聞かされるものだ。炎すら焼き尽くす火の鳥。これはかつての伝説からきている。


(曰く、その火の鳥、何処から顕わりて、燃ゆる大地を、自らの炎で、鎮めた。か)


レンは心の中でその伝説を思い出していた。


(炎で燃える大地を同じ炎で消し、大地を創った。普通に聞けば信じられない話だな)


レンは自分で自分を嗜めるとジルに目を向ける。


「ジル、頼めるか?」


「まぁ、やってみてもいいがぁ、無理でも文句言うなよぉ」


ジルはそう言うとレリーフの下に行き、まるで猿のように門を登って行く。


「お、おい」


「大丈夫。ジルはあれでも探知は得意なんだ」


ヴァイアスが何かを言いかけたがレンはそれを制した。確かに一族の玄関口を他家の者が足蹴にしながら登っている光景はあまり気分のいいものではないだろう。ヴァイアスや他のメンツも気分の害したような顔をしているが、レンには関係ないので無視することにした。


「見つけたぜぇ」


ジルがレリーフの所まで到達し、探し始めようとした瞬間、それは簡単に見つかった。


「なら、早く下りてこいよ」


レンは返事を返し、ジルに持ってくるように指示をした。ジルはレンからの返事を聞くと、そのまま飛び降りてレン達の許に戻ってくると見つけた物を見せる。


「札?」


「札ね」


「札なのかしら」


ホムラ、シリカ、メアリの順に呟く。ジルが見せた物は長方形の真っ白い紙、正に札としか思えないものだった。


「これがそうなのか・・?」


ヴァイアスは怪訝そうな顔で聞いてきた。


「これしかなかったのか?」


レンは表情に出してはいないが、確認のためかジルに聞いた。


「間違いない!」


全員が怪訝な顔の中、ジルはハッキリと答えた。


「ジルが言うなら間違いないんだろうね」


「間違いないぜぇ。これ以外に不審な物は無かったし、門にも異常があるようには思わなかったからなぁ」


「で、でもお札と言う事は剥がしてしまえば効果は無くなるのでは・・・」


シリカが2人だけで話しているレンとジルに聞いてきた。


「必ずしもそうとは限らないさ。これは魔力を受けて発動させている。魔力を断たない限り、剥がしたくらいじゃ意味は無いよ」


「しかし、何も書かれていないのに使えているとはどういう事なのかしら。札は大昔に一部地域でのみ使われていた方法で、札に今で言う魔法陣を書いて行使するものでは無かったかしら」


今度はメアリが聞いてきた。


「それは俺にも分からない。俺が知っている事も貴方達と大差ないからね。どんな方法を使ったのか知らないが魔法陣は書かれているんだろう」


レンはメアリの質問に答えると札をジルから受け取り、それをヴァイアスに渡した。


「一応、俺の推測はここまでは合っていた。後は貴方達の仕事だよ」


ヴァイアスはレンから札を受け取ると力強く頷き、メアリ達の方に顔を向けた。


「今すぐ分家達に連絡をしろ。ブレイズールの全ての力を使って敵を叩きつぶすぞ。私も出る。シリカ、ホムラは分家の当主達を呼びに行け。メアリは私の補佐、親父達はイリアの事を頼む。行け」


ヴァイアスは口早に指示を出し、それを受けたシリカ、ホムラ、ヒザンは直ぐに動いた。3人は走り去っていき、その場にはレンとジル、ウラルとユキ、そしてヴァイアスとメアリだけが残った。3人が走って行くのを見届けるとヴァイアスはレンに視線を戻す。


「可能性を貰った事、感謝する。この借りは必ず返す」


ヴァイアスはレンに感謝を言った。それはレンやメアリからは信じられない事だったがレンの意識は別の方に向いていた。


「なら一つ、頼みごとをしましょう」


レンの表情が変わった。レンの顔には陰が落ち、口は不気味な形の歪んだ笑みを浮かべている。レンの周りの空気が変わり、レンの正面にいたヴァイアスとメアリはその表情に身を震わせるほどの寒気を感じ、知らず知らずの内に顔を強張らせレンから半歩、身を引いていた。


「たっ、頼み、とは・・」


レンの表情がまた変わる。今度は真剣な、敵を睨むような視線を真っ直ぐヴァイアスに向ける。






「俺との一騎打ちを。真に命と命を賭けた戦いを申し込む」




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