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最弱は最強!!!  作者: ハムハム
合宿編
15/20

第15話 予兆

どうぞ読んでください。

合宿から学校に到着すると、直ぐに解散となった。誰もが重たい体を引きずりながら帰ろうとする。しかし、そこには生徒達の家族が集まっていた。理事長がどうやら親達に事件の事を連絡したらしい。生徒達は疲れを忘れ歓喜に震えながら親の下へ走っていき、抱き合う者、涙を流す者などが続出した。そして、全員が親と一緒に帰っていく。教師達も書類などの提出物があったが、今日は直ぐに帰る事にしたらしく、教材などを置くために学校へ入っていく。そしてレン、ジル、ウラルの3人もルベリエールの屋敷に向かった。屋敷に到着すると使用人達が涙を流しながら、迎えてくれた。そして、もう1人・・・


「お帰りなさいませ、レン様」


「あぁ、ただいま。ユキ」


長い茶色の髪、白い肌、丁寧な物腰、見た目15歳位の巫女服姿の女の子だった。その姿は誰もが見ほれるだろう。そんなユキを見て、ウラルは驚きに目を見開く。そして、ウラルもユキと同じように腰まである薄い青色の髪、白い肌、見た目17・8歳位と誰もが見ほれる、まさに人外の美しさだ。そんなウラルの姿を見て、使用人達がその美しさに驚く。


「主様、此奴もしかして・・」


「あぁ、ウラルと同じ魔人だよ」


ウラルが驚いていたのはレンが自分以外の魔人と契約していたからだ。つまり、レンは若干16歳で魔人を2人も従えたと言う事。その事実にウラルは2度目の驚きを見せた。


「レン様?此方の方は・・」


「紹介するよ。今度俺らの家族となる魔人ウラルだ」


レンが紹介するとユキはウラルへ近づき、丁寧にお辞儀をする。


「ウラル様。はじめまして、私はユキと申します」


「妾はウラル。よろしく頼む、ユキ」


ユキがお辞儀をすると、ウラルも同じく丁寧なお辞儀で返す。2人とも貴族の人間と見間違うほど礼儀が出来ており、使用人達は居心地悪そうにソワソワしていた。すると、玄関近くの階段から下りてくる二つの影があった。


「お!帰ったのか、レン」


「お帰りなさい、レン君」


「ただいま、姉さん、ハンツさん」


下りて来たのはリサリー・ルベリエールとハンツ・ルベリエールだった。


「2人はこれからお出かけですか?」


「面倒な事にこれから王立魔法師団に行かなければならなくなった」


リサリーは面倒くさいように肩を下げる。


「どうやら先の大戦の報告をしろとの事らしい。面倒くさい限りだよ」


「それなら俺も行った方がいいですか?」


「いや、レン君は来ない方がいいね。あれやこれやと質問攻めにされるだけだからね。それにやっと合宿から帰ってきてんだ。レン君とジル君は部屋でゆっくり体を休めるといいよ。ウラル君の部屋も用意しといたから」


「何から何までありがとうございます」


「全くだ。その分はしっかり働いて返せよ」


「まったくもう、姉さんは・・。では、私達は行くよ」


「はい。いってらっしゃい」


そう言うとリサリーとハンツは屋敷から出て行く。その途中、使用人に何かを渡されていたが、レンは興味がなかったので自分の部屋へと向かった。


「ところでウラルの部屋はどこにしたんだ?」


レンは歩きながら後ろにいるユキに話しかける。


「はい。レン様の隣の部屋を用意しました。丁度開いていましたし、リサリー様もここならいいとおっしゃっておりました」


「そうか。ユキ、良かったらウラルにこの屋敷を案内してやってくれないか?」


「はい。お任せください」


「よろしく頼む、ユキ」


「はい」


なかなかいいコンビなのかもしれない、とレンは思った。そうこう話しているうちにレンの部屋の前に着いた。ついでに、右隣がユキ、左隣がウラル、そしてお向かいの部屋がジルの部屋になっている。


「部屋の備品は好きに使って構わないよ。それと後で研究所にも一緒に行こう」


「研究所?」


部屋の前に着くとレンはウラルに話しかけた。


「俺は学生であると同時に研究者なんだ。暇なときは研究所に行って研究している。その研究室を案内するよ」


「そうじゃったのか。了解じゃ」


「それじゃまたあとで」


「あぁ」

「うむ」

「お休みなさいませ、レン様」


ジル、ウラル、ユキがそれぞれ挨拶するとレンは部屋に入っていく。ジルも同じく自分の部屋へ戻り、ウラルは早速屋敷を見て回りたいのかユキに頼んで屋敷の探索を開始した。レンは部屋に入ると荷物を抛り捨て、ベットにうつ伏せになり、深い眠りに落ちた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


生徒達が合宿から帰って来た日の夜、ブレイズール家ではヴァイアス・ブレイズールとホムラ・ブレイズールがメアリとシリカから合宿での出来事を聞いていた。


「そうか。それが今のレンか」


「えぇ、そうです。お父様」


ヴァイアスとメアリが真剣に話しこんでいる。


「あんな無能者が魔人を1人で・・・」


ヴァイアスの隣でホムラが愕然と呟いた。そんなホムラをシリカが見つめている。


「で?メアリ、お前はまさかレンをブレイズールへ戻せと言うつもりではあるまい」


そのヴァイアスの言葉にホムラとシリカが驚いた顔でメアリを見た。


「そ、そんなの反対です。父様!」


ホムラがヴァイアスに詰め寄りながら言う。


「あいつは無能者です。確かに今は魔人を倒せるだけの力を持っているかも知れませんが炎の扱えない者がブレイズール家に入れるわけにはいきません。それに・・・」


「落ち着きなさい、ホムラ」


熱くなりながらヴァイアスを説得するホムラをメアリが話の途中で止めた。


「しかし、メアリ姉様!」


「いいから。落ち着きなさい」


メアリに睨まれてホムラは体をビクリとさせて引きさがった。そして、メアリは顔をヴァイアスの方へ向ける。


「もちろんお父様の言う様な事をするつもりはありません。ただ・・・」


「ただ・・・、なんだ」


「・・・ただ、彼の力は分離。つまり結合しているモノを分けて離すということです。その力なら、もしかしたらお母様の事も治せるのでは、と」


メアリ以外の3人が驚愕に顔を歪める。


「そんな事が出来るのですか?メアリ姉様」


3人が驚いている中でシリカがメアリに尋ねる。


「もちろん何の確証もないのだけれども。私は試してみる価値はあると思うわ」


「あいつにイリアの治療をさせる、か」


静寂の中、ヴァイアスが目を閉じ、ポツリと呟いた。そして、少し考える素振りをすると静かに口を開く。


「仮に出来たとして、あいつが我らに力を貸すとは思えんな」


「そうですよ、父様。母様は僕達の手で治しましょう」


ヴァイアスの重い声にホムラは嬉々として返した。


「でも、今の所何の手も無いわ。もうお母様の体力も限界。もう手段なんか考えていられる時間はないの。試せるモノは何でも試さなければお母様は死んでしまうわ」


メアリの言葉にヴァイアスはそっと目を開いた。


「そうだな。メアリの言う通りかもしれん」


「父様!」


「シリカよ。明日、レンをここまで連れてこい」


「よ、よろしいんですか、お父様」


「仕方あるまい。でなければイリアが助からない」


「・・・・・」


シリカは沈黙したまま、ヴァイアスとメアリを交互に見つめる。そんなシリカにヴァイアスとメアリは静かに頷いた。


「わ、わかりました。明日、声をかけてみます」


シリカは渋々納得したように頷く。


「ちょっと待ってください。あいつは無能者なんですよ?あんな奴呼んだ所で役に立つわけがありません。そもそもあいつが来るわけありません!」


3人がレンを呼ぶという事に納得しようとしている中、ホムラが激情して3人に突っ掛かる。


「シリカで駄目なら私が交渉するわ」


「なら、わざわざ交渉して連れてくる必要が何処にあるのですか!あんな奴倒してから引きずって来ればいいじゃありませんか!」


「レンは今や魔人を倒すほどの実力者だぞ。お前に倒せるのか?」


ホムラの言葉にヴァイアスが冷たく返す。


「そ、そんなの・・・」


「いい加減にしろ、ホムラ!」


ヴァイアスの怒鳴り声にホムラが身を竦めた。


「私の決定だ。異論は認めん」


「わ、分かりました」


ホムラはまだ納得していない様子だが、ヴァイアスの殺気に身を竦ませ、引き下がるしかなかった。


「シリカ。明日、任せたぞ」


「は、はい」


シリカは声を震わせながらもハッキリと答えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「レン様。お食事の用意が出来たようです」

「主様、食事じゃ。早く起きるのじゃ」


レンはベットで眠っているとドアを叩きながら二つの声が同時に聞こえてきた。


「あぁ、今行くよ」


レンは目を擦りながら重たい体を持ち上げる。そしてドアに近付き、開けるとウラルとユキの2人がレンを迎えに来ていた。


「やっと起きたか、主様。よく眠っておったのぅ」


「流石に疲れていたからね。ウラルの方はどうだった?ユキに案内してもらったのだろう?」


レン、ウラル、ユキは食堂に向かいながら言葉を交わす。


「面白かったぞ。この屋敷は隅々まで掃除が行き届いておったし、人当たりのいい人間しかいなかった」


「このルベリエール家は現当主のリサリー様があの性格ですから、使用人の方々も大抵の事には驚かなくなったそうです。それが例え魔人を家族として迎えても」


「確かに魔人でも平気に挨拶してくる者が多かった。妾としては過ごしやすそうじゃ」


「それは良かった」


3人が話しながら食堂に入っていく。すると、既にリサリー、ハンツ、ジルの3人が揃っており、ウラルとユキは全然姿を現さないレンを呼びに来てくれていたようだ。3人が席に着くと使用人達が食事を持ってきた。この家では必ず家族全員で食事をとる。食事中もリサリーがふざけた事を言い、ジルがそれに乗っかり、ハンツが嗜め、ユキが優雅に笑い、ウラルが色々と質問し、レンが答えるという楽しい食事をする。レンはこの食事の時間が好きだった。ブレイズールにいる時は母親と2人か、1人で食事をすることしかなかったからだ。


「さて、全員食べ終わったか?」


食事が終わるとリサリーが唐突に喋り始めた。これもこの家のやり方だ。食事の後は簡単な報告会となっているが、大抵そんなに報告することは無い。全員に一応知っておいてもらう事しかここでは報告しないからだ。


「どうかしたんですか?」


レンはリサリーに聞いた。


「あぁ。お前達は[フォルティス]という国は知っているな」


「確かアルファスの一つ向こうの小国ですよね。この国と同じ魔法大国と言われ、友好国でもある・・」


「そうだ。実はその国、フォルティスが滅んだ」


「なんですって!」


レンとジルは驚きに口を開け、茫然となった。周りの使用人達も驚き作業を中断していたが、そんな中ウラルとユキだけは興味が無いのか眉ひとつ動かさずに静かに聞いていた。


「事実だよ。先ほど諜報部に顔を出し、姉さんと私で聞いてきた。反乱だったそうだ」


ハンツが静かに話した。それを聞いたジルが確認するように口を開く。


「でもよぅ、あそこは前国王は生粋の屑王だったらしいが現国王は穏健で立派な王だと聞いた事があるんだけど・・・。反乱なんて考えられねぇ」


「簡単な事さ。王の就任が遅すぎたのだ。今までの王は民に圧制をし、それを見て楽しんでいたらしい。だが、現国王はそれを改善しようと動き出した瞬間、反乱が起こったらしい。しかも、その反乱軍は民のみの軍だったそうだ」


「普通に考えたら、そんなの成功するとは思えませんが・・」


「そうだな。だが、そこにもまた過去の王政の呪いと言うべきものが残っていたのだ。過去の王は臣下を信用せず、自分の意見を通していた。反対した者も意見した者でさえ殺してきたのだ。その結果残ったのはヤル気の無い者と腹に一物を抱える者、過去の王と同じような者しか残っていなかったらしい。そんな中反乱が起き、臣下達は我先に逃げる者と敵に寝返る者が出たらしい。軍も同じく、な」


「最悪な結果ですね」


「私もそう思う。だからこそ、城はほぼ無条件で解放、全ては現国王のせいにされ、反乱は終わったらしい」


「嫌だねぇ」


「確かにね。それで、今その話をしたのは何故なんですか?」


レンはリサリーを真っ直ぐ見ながら聞いた。


「実はフォルティスの現国王、いや元国王か。まぁその王は我がルベリエール魔法学校に通っていた時期があってな」


「それは初耳でした」


「私の先輩で世話になった事もある。頼りになる人だった」


「姉さんが頼りになると言わせる人ですか」


「そうだ。実はその人から今朝、手紙が来てな。反乱軍に殺されそうになったが、一家全員何とか逃げ延びたらしい。そこで一家全員匿ってもらえないだろうか、とな」


「なるほど」


「私はこれを了承しようと思う。そこで皆の意見を聞いておこうと思ってな」


「私は姉さんに賛成です」

「俺も同じくぅ」

「僕も姉さんに賛成します」

「私はレン様の意見を尊重します」

「妾もユキと同じじゃ」


ハンツ、ジル、レン、ユキ、ウラルの順にリサリーの提案を了承した。


「では、一家はいつ来るか分からんが匿うと言う事で話を付ける。以上だ、これにて解散」


リサリーは立ち上がり、一番に食堂を出ていき、ハンツもリサリーの後ろに付いて出ていく。ウラルとユキも一度レンの方を見たが、レンが無言で頷くと一緒に食堂を出ていった。残ったレンとジルも立ち上がり、ジルがレンとすれ違う瞬間、小声で話かけてきた。


「レン、その一家がこの屋敷に辿りつけると思うかぁ?」


「難しいだろうね。何人いるか知らないけど、また面倒事になりそうだよ」


「はぁー、いい思い出が出来て嬉しいですよぅ」


ジルの皮肉にレンは苦笑いで答え、2人は部屋を出ていった。

そして数日後、レンの勘は的中する事になる。

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