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最弱は最強!!!  作者: ハムハム
合宿編
10/20

第10話 嵐の前の静けさ

どうぞ読んでください。

強化合宿が始まって既に3日が過ぎ、現在は筆記授業の最後の日。初めは真剣に授業を受けていた生徒たちも段々と緊張感を無くし、授業中でもダラけ始めていた。授業は畳の教室で、生徒たちは座布団の上に座って本日最後の授業である魔学論、ゴルバ・シギール先生の授業を受けていた。


「というわけで、現在我々が持ている魔力は10種類の属性魔力に分けられる。魔力は人それぞれ違っており、10種類の内のどれかに属性魔力は偏っている。それは、血筋や偶然など様々な言い伝えがあり、我々はその属性魔力を用いて、自身にあった魔法を使用している。また、他属性の魔法を使用したとしてもその威力は限られており、たとえ使用しても自分にあった魔法に比べ、魔力の消耗が激しく、酷いと昏睡に陥る者もいる事が過去の実験で明らかになっている」


教室の正面でゴルバ・シギールが教科書を見ながら授業を淡々と進めていた。レンやジルも授業を受けていたが、ジルはすでに飽きたように不貞寝しており、レンは窓の外へと視線を向けて、怪訝そうな顔をしていた。


「どうかしたのかぁ?レン」


隣で不貞寝をしていたジルがレンの顔つきを気にしたのか顔を上げ、レンを見ながら聞いてきた。


「いや、なんか落ち着かないような気がして・・・」


「あぁ~。分かるわぁ、その気持ち。こんだけ詰まんない授業を聞いているとさすがに飽きてくるもんな」


ジルは上半身を机の上でダラケさせ、視線を正面に向けて言った。


「そう言う意味じゃないよ。なにか気になるというか、怖いというか」


「怖いぃ?お前がぁ?」


「俺だって怖いものは怖いよ。なんだか体が強張るんだよね。戦いの前の緊張感のような」


レンの言葉に鼻で笑ったジルにレンは真剣な面持ちで言った。


「気のせいだろぉ。確かにお前の勘は良く当たるが気にするようなことは無いんじゃないのぉ?」


「まぁー、そうなのかもしれない、かな」


「コラ、後ろの2人、授業中だ。私語は慎め」


ジルの言葉にレンは納得できないでいると、2人が話しているのに気がついたゴルバ・シギールが注意してきた。2人はとりあえず私語をやめ、黒板へと視線を戻し、考えを後回しにすることにした。それを見たゴルバ・シギールは授業を再開した。


「そして、現在の魔法は2種類に分けられる。瞬発魔法と永続魔法だ。瞬発魔法は撃つことが目的の魔法で、魔力を瞬間的に使い、魔法陣を描き、相手に目掛けて放つ。これが瞬発魔法だ。そして、永続魔法とは魔力を常時開放し、そのまま留まらせておく魔法で、代表的なのは結界魔法がこの永続魔法だ。結界の持続には常時魔力を解放しておく必要があるため、常に魔力を流し続ける魔法、という意味で永続魔法と呼ばれている。ここで問題だ。魔法陣を描く時、必ず忘れてはならないことは何だ?だれか答えてみろ」


ゴルバ・シギールが生徒たちを見渡しながら聞いた。すると、生徒たちの中からシリカが手を上げたのを確認すると、ゴルバ・シギールはシリカを当てた。


「シリカ・ブレイズール」


「はい。魔法を扱う時、魔法陣を描き、放たずにほっとくと非常に危険なため、魔法陣を描いたらそのまま放つか、その魔法陣を打ち消すかしなければならない、です」


「正解だ。座っていいぞ」


シリカがスラスラと答えた事に満足したようにゴルバ・シギールは一つ頷いて、シリカに座るように言った。シリカは一礼するとその場に正座して座った。


「ブレイズールの答えを他の者も覚えておけよ。もしこれを怠ると場合によっては厳罰もあるからな」


ゴルバ・シギールが生徒全員を睨みながら念押しすると、また教科書に視線を戻した。


「魔法陣を描くのに用いた魔力はなかなか散らずにその場に留まる。そうすると何かの拍子に魔法が発動し、周りに危険が及ぶため、必ず描いた魔法陣は消すように・・。魔法陣の消し方はお前らも知っていると思うが、魔法陣は魔力で消す。魔法陣を消すための魔力も我々の中にちゃんとあるから、描いた魔法陣は必ず放つか、消すかしろよ」


ゴルバ・シギールは何度も何度も念押しし、教科書の次のページへと進んだ。

この時のレンは渋い顔をしていたが、誰もそのことに気付く者はいなかった。


----------------------------------------


本日の授業は全て終了し、これで合宿の間の筆記授業が全て終了した。生徒たちは夕食前に部屋へ戻る者、教室や食堂で話している者、自主練習のため外に出ている者とそれぞれ思い思いの時間を過ごしていた。そんな中、レンは1人で合宿場近くの高台から森の先にある北の草原を眺めていた。


「こんな所に来てどうしたんだぁ?レン」


草原を眺めていたレンの後ろから声が飛んできた。レンは顔だけをそちらに向けると、ジルがレンの方に歩いてきていた。


「別に・・・」


レンの静かで小さな声に対し、ジルは立ち止り怪訝そうな表情をしたが息を一つ吐き、元の表情でレンの隣に並んだ。レンはジルが横に並ぶのを見た後、視線をまた元の草原へ戻した。ジルも視線を戻したレンを一見した後、同じ方向を見ながら話し始めた。


「また1人で考えてるのか?」


「・・・・・・」


ジルの質問にレンは無言のままだった。ジルはその無言を肯定ととり、話を続けた。


「1人で考える癖はお前の悪い所だぜぇ。今は昔とは違うだろぉ。もっと周りに頼ってもいいんじゃねぇーかぁ?」


「・・・・・・」


「今、お前が何を考えてるか俺には分からねぇ―。けどな、今はお前を頼りにしている奴がいる、信頼している奴がいる、守ってくれる奴がいる。なのにお前はいつも一人だ。お前は成長したんじゃねぇーのかよぉ。もっと任せろよぉ」


ジルはレンの方を向きながら真剣な眼差しで言った。それに対し、レンは草原の方を向きながら目を伏せ、無言のままだった。


「レンッ!!」


「・・・・・・・ッぷ」


「えぇ?」


「あっはははははははははははははははは」


今まで無言だったレンがいきなり笑い始めた。そんなレンにジルは何を言っていいのか分からず、困惑していた。


「あっはははは、はー、はー、はー、はー」


レンは笑い続けた後、呼吸を整えるために深呼吸をした。そして、息が少し整うとジルの方を向き、目に溜まった涙を拭った。


「はー、はー、はー。何を真剣に話し始めたかと思ったら・・、そんなこととっくに分かってるよ。それに俺は別に考え事をしたくてここに来たわけじゃないからね。ククク・・、それにしてもジルがそんなに俺の事を心配してくれていたんなんて知らなかったよ」


ようやく状況を飲み込んだジルは顔を赤くしてレンを睨みつけた。


「おっ、お前。何を真剣に考えているのかと思ったらぁ、何も考えていなかったのかよぉ。くっそぉ、なんか真面目に話していた俺が恥ずかしいじゃねぇ―か」


ジルは髪を掻きながら叫んだ。そんな様子をレンはニコニコしながら見ていた。そして、直ぐに淋しそうな顔をして目線を正面に戻した。その様子に気付いたジルは真面目な顔でレンを見た。


「ジルが言っていることは分かるよ。俺自身も時々自分は考えすぎだと思う時がある。けど、難しいね。頼りにしたいとは思うんだけどなかなかそれが上手くいかない。出来ないんだ。人に頼ろうとすると、あの時の恐怖・・・、いや違うな。あの時の自信の無さが蘇ってくる。何でも自分1人で出来るようにならないといけない。人に頼っても誰も助けてくれない、そう思っちゃう。それが再会してから、より一層強くなったように感じるんだ。「俺はここまで出来るようになったぞ」ってね」


淋しそうに語るレンをジルはただ見つめていた。


「お前、まさか再会したから仕返ししようとか考えていないよなぁ?お前が暴れたら大事件になるぞぉ?」


「まさか。そんなことは思っていないよ。前に言ったようにケジメのつけ方はもう決めている。実際つけられるか分からないけどね」


「そうか。お前がそう思っているならいいさぁ。俺はお前が我を忘れないようにするために着いてるんだからなぁ」


微笑を浮かべて話すレンと同じく微笑を浮かべるジルは共に正面の草原を眺め続けた。

それからどのくらい時間が経っただろう。日は山向こうへ沈み、辺り一面暗くなった。草原を見ていたジルは一度大欠伸をし、隣にいたレンを見た。


「そろそろ夕飯時だぁ。宿舎にもどらねーかぁー?」


「そうだね。戻ろっか」


レンとジルは踵を返して、宿舎に戻ろうとした時、


ワォーーーーーーーーーッ


獣たちの遠吠えが聞こえてきた。その瞬間、戻ろうとしていた2人は瞬時に振り返り、先ほどまで眺めていた草原に目を向けた。


「レン、何か見えるかぁ?」


「いいや、ジルは?なんか感じる?」


「いいや」


2人は視線を固定させたまま、言葉少ない問答をした。そのまま2人は周りを警戒すること数十秒、何も無いことを確認すると警戒を解いた。


「さっきの鳴き声、まさか」


「おいおい冗談きついぜぇ。まさか近くにいるのかぁ?」


「分からないな。良く聞けばただの野犬の遠吠えのような気がするし・・・」


「クッソォ!ビックリするぜぇ、ホント。確かに野犬のような気もするがぁ、あの戦いのせいであの手の鳴き声に鋭敏になっちまってるぜぇ」


「フフッ、いいことだよ、それは。強くなっているってことなんだからね」


レンはジルに笑いかけながら言い、ジルはバツが悪そうにそっぽを向いた。


「行こっか。夕飯が待ってる」


「あぁ」


2人はもう一度草原の方に目を向け、その場を去って行った。


----------------------------------------


翌朝、天気は見事に快晴、太陽の光を訓練場の隅々まで届かせていた。生徒達は本日より魔法戦の授業が始まるため、宿舎の裏にある訓練場に集まり、教師が来るのを待っていた。すると、直ぐに教師が2人、宿舎から出てきた。


「おら生徒共、さっさと整列しろ」


大声を上げながら、ガイウス・ローランが大声を上げて、生徒達を整列させた。あちこちで日陰に入り、休んでいた生徒達は大慌てでガイウスと一緒に来ていたルナシス・ルーナリアの前に整列した。ガイウスは全員整列したのを確認すると生徒達を土の上に座らせた。


「おーし、出発前にも紹介があったが俺が合宿中、お前達に魔法戦を教えるガイウス・ローランだ。ビシビシ鍛えていくつもりだからそのつもりでいろよ。それから、今後魔法戦の授業中に怪我などが無いようにルーナリア先生もついてくれる。お前達、お世話になんないように気を引き締めろよ」


「「「「「・・・・・・」」」」」


「返事ッ!!」


「「「「「は、はい」」」」」


大声で怒鳴るガイウスに生徒達はビクビクしながら返事をした。


「じゃー、ルーナリア先生。ご挨拶をお願いします」


と、先ほどとは一転、ガイウスはニコニコしながら子供をあやすような声でルナシスに言った。ルナシスは苦笑いで頷き、一歩前に出て喋り始めた。


「えー、ローラン先生が仰ったようにこの授業では毎年怪我人が出るようなので一緒に参加させてもらいます。怪我をしたら、直ぐに申し出てください」


ガイウスよりだいぶ小さな声だったがその声と笑顔で挨拶をしたルナシス・ルーナリアに男子生徒は見とれた。ルナシスは、A組担任のセリアン・ストレイアより容姿は劣るものの、それでも少し幼さが残っているが整った顔立ち、腰まで伸ばした灰色の髪、身長165㎝ぐらいと、大人の雰囲気を醸し出していたセリアンとは真逆の守りたくなるような容姿をしていた。そんなルナシス・ルーナリア、ルーナリア家の魔法は月魔法。月魔法は回復に特化した魔法で、他にも支援や補助を得意とした魔道士の一族だ。戦闘などはほとんど出来ないが、その重要度はただの魔法師達より重宝されている。また、月魔法師は他の属性魔法師より限りなく数が少ないため、重宝されていると言う噂もある。

そんなルナシスが挨拶をし、下がるとまたガイウスが一歩前に出て、大声を上げた。


「よーし、それじゃー授業を始めるぞ。まず、隣同士でペアを組んでもらう。そしたら、一方が魔法を撃ち、もう一方が受ける。それを交互に行い、それを繰り返し行え。いいな」


「「「「「はい」」」」」


今度は言われる前に返事をした生徒達に満足したようにガイウスは一回頷いた。


「午後はウリウス・べリスト先生の魔戦術学だからな。一分一秒も無駄にするなよ。それから、たまに分かっていない奴がいるから今から質問するぞ。魔法はどうやって発動させるか?論理的に答えろよ。勘とか何となくとかの回答はいらないからなー」


ガイウスが辺りを見渡すと何人かは手を上げていたがほとんどの者が手を上げずにいた。


「じゃー、手を上げていない奴。そこのお前、答えてみろ」


「はっはい」


ガイウスに指名されたのはリエラだった。リエラはその場に立ち上がり、ガイウスの方を見た。


「じゃー、お前答えてみろ。魔法はどうやって発動させる?」


正面に仁王立ちしているガイウスにリエラはビクビクしながら口を開いた。


「え、えっと、魔法は己の魔力を頭の中でイメージした魔法陣の形に構築することで発動します。しかし、高等魔法になるにつれ魔法陣も複雑になるため、魔法陣の構築時、少しのミスで発動しなかったり、暴発したりしてしまいます。そのため、高等魔法を使うには魔法陣を完全に覚える事とその魔法陣を構築するだけの魔力が無いと使ってはなりません」


「うん、まー正解にしとくか。座っていいぞ」


「は、はい」


リエラは安心し、貯めていた息を吐きながらその場に座った。


「先ほどのこいつの言った通り、魔法は己の魔力を魔法陣の形にすることで発動する。魔力が足りなかったら、魔法陣を全て組むことは出来ない。だからこそ己の魔力の絶対量を把握することが一流魔法師にはなるための近道だ」


ガイウスはここで一息ついて、生徒達を見渡した。


「だか、最近はわざわざ頭の中でイメージしなくても魔法が発動できるようになった。何故か、分かる者はいるか?」


「レベリー結晶のおかげです」


座っていた生徒達の中から1人の男子生徒がガイウスの問いかけに答えた。


「そうだな。レベリー・クライスタール博士が作ったレベリー結晶だ。この中にも既に使っている者も多いと思う。これは結晶の中に予め魔法陣を描いておくことでわざわざ覚えることもイメージすることも無く、ただ魔力を結晶に流すだけで発動する。どういう原理か詳しいことは俺も分からないが、この発明により誰でも簡単に上位の魔法が使えるようになった。しかし、ここで新たな問題点が上がった。何か分かるか?」


今回も数人しか手を上げる者はいなかった。その中から、ガイウスはC組の男子生徒を指名した。男子生徒はその場に立ち、ガイウスとルナシスに一礼してから発言した。


「レベリー結晶は魔力吸収する性質があります。その性質のおかげで魔法を発動しやすくしていますが、魔法を使おうとする時、その魔法が自分の魔力の絶対量を超える魔力を必要とする場合、使用者を殺してでも魔力を吸収し続け、魔法を発動させようとする事が問題視されています」


「正解だ。座っていいぞ」


男子生徒は一礼し、その場に座った。男子生徒が座ったのを確認すると、ガイウスはまた全体を見渡して、口を開いた。


「今、言ったような危険性がある。だから、使っている者は十分に気をつけるように」


「「「「「はい」」」」」


「ではペアを組み、各自魔法の撃ち合いを始めろ」


それを合図に各自、隣同志のペアを作り、訓練場全体に散らばり、魔法を撃ち合い始めた。


----------------------------------------


朝からずっと照りつけている太陽の下で、芝の上に寝転んでいるジルは眠そうに大きな欠伸をして、ポツリと呟いた。


「平和だねぇ―」


呑気に言った言葉は誰の返事も無いまま風にかき消された。


「しっかしぃ、俺達は授業ほっぽり出してこんな所でサボってていいのかねぇー?お前、真剣に学生やりたいって言ってたじゃないかぁー」


「いいんじゃないか?確かに学生にはなりたかったけど、姉さんから魔法戦の授業には出てはいけないって言われてたじゃないか」


寝転がっていたジルは目を閉じたまま、隣で本を読んでいたレンに聞いた。レンも視線を向けないまま、本を読みながらジルに答えた。


「そもそも、魔法戦の授業に出るなと言われたのは俺だけで、お前はそれに便乗しただけだろ?」


「あっははは、言ってみるもんだなぁー。まさか、OKが出るとは俺も思っていなかったぜぇー」


「まったく」


レンは溜息交じりに言い、ジルはそのまま笑い続けた。そして、ジルは笑い終わるとレンの読んでいる本に興味を移した。


「しっかしぃ、お前はこんな陽気が気持ちいい日に、木陰に入って何読んでんだぁ?」


ジルはレンに視線を向けながら聞いてきた。


「あぁ、[ロズウェルの法則]ッて本だよ」


「あぁ!!」


本のタイトルを聞いた瞬間、ジルは驚き上半身を起こした。


「お前はまた、なんちゅう本を読んでんだぁ。ロズウェルの法則って言やぁー、最早誰も信じていない上にロズウェルの書いた本は全て廃棄処分になったはずだぁ。さらにロズウェルは稀代の大嘘つきで通ってる嫌われ者だぞぉ?よくそんな本を見つけられたなぁー」


「まぁー、探すのは苦労したけどね。けど、俺はロズウェル博士の推論が全て間違っているとは思えないんだよねー。確かにぶっ飛びすぎの推論ではあるけど、他の研究者達の斜め上に行くような考え方は、俺は面白いと思うんだよね」


レンは本の表紙を見つめながら言った。ロズウェル博士。本名ローサ・ロズウェルは、今までに数々も魔法の法則性を言ってきた博士だが全てを否定された博士でもある。代表的な例は、現代では魔力と魔法陣で魔法を発動させる、と言う事が当たり前に思われている中、魔法は感情と魔法陣が関係していると言い続けた博士で、いくつかの本を出版するも全てが他の研究者達から「嘘だ」、「出鱈目を言うな」などの理由で廃棄された。そして、実験で魔力と魔法陣で魔法になる事が立証されても、自分の意見を変えずに言い続けた挙句、「子供たちの教育上良くない」と言われ、研究者としての地位も失い、王立魔法師団を追放され、小さな村で息を引き取った。そして、後々稀代の大嘘つき研究者と言われ続けた博士だ。


「そんな本読んで、お前の研究に何か役立つのかぁ?」


ジルもさすがに心配しているのか、呆れているのか分からない表情で問いかけてきた。この国では、子供のころから「ロズウェルのような嘘つきにはなるなよ」と言われ続けられる。ジルやレンも例外ではない。そのため、ジルもロズウェルにはいい印象は無いが、それを読んでいるレンが気がかりなようだ。


「俺の研究に役立つかはまだ分からないけど、これは新しいことに挑戦する小さなきっかけになりそうな気がするんだよね」


「きっかけねぇー。ま、お前がいいならいいかぁ」


そう言うとジルはまた寝転がって、太陽の光の下で寝始めた。それを見ていたレンは小さく笑い、また本を読み始めた。


----------------------------------------


太陽が真上を超え、西に少し傾いた頃、生徒達は魔戦術学の授業のため、訓練場に集まっていた。魔戦術学は集団での戦い方を教える授業だが、内容は戦術を教える授業と実際に戦術を用いて集団戦を行う授業に分けられる。今回は実際に集団戦を行う授業だ。生徒達はウリウス・べリストとルナシス・ルーナリアの前に整列して、ウリウスの話を一通り聞いていた。


「というわけで、午前に引き続きルーナリア先生にも授業に参加してもらう。皆、怪我の無いようにするんじゃぞ」


「「「「「はい」」」」」


ウリウスは手を後ろに組み、座っていた生徒達にルナシスの事を説明した。


「では、皆5人ずつのチームに分かれ、各々の場所で作戦会議を始めるのじゃ」


それを合図に生徒達は始めに決められていたチームに分かれて、各々場所を移動させ輪を作って話し始めた。ウリウスはそれを見渡しながら、ウンウンと首を縦に振った。ウリウスの授業は一見子供っぽく、幼稚な授業に見られがちだが、生徒達には「分かりやすい」、「楽しい」と高評価を受けている。そんなウリウスは真剣に話しあっている生徒達を見るのが好きだった。ウリウスが生徒達を見ていると、ルナシスが近づいて来た。


「べリスト先生」


「どうしたんじゃ?ルーナリア先生」


少し怪訝そうな顔をしているルナシスがウリウスに聞いてきた。


「生徒達は312人のはずなのになぜ5人ずつのチームにしたんですか?これだと2人余ってしまいますから、6人チームで良かったように思うのですが?」


「あぁ、そのことか」


ウリウスは生徒達の方に視線を戻して言った。


「実は、理事長から「レン・ルベリエールとジル・アースガンの2人は魔法の実戦の授業には参加させない」と事前に言われていたんじゃ。だから、5人ずつのチームでいいんじゃよ」


「そうだったんですか」


ルナシスは納得したように頷いた。そして、ルナシスも生徒達の方に視線を向け、更に出た疑問を聞いた。


「しかし、どうしてその2人は実戦免除なのでしょう?」


「さーのー、ワシにも分からん。まぁ、ルベリエール理事長の言う事を真剣に考えたら負けじゃよ。あの人は子供の頃から常識に捕われないトリックスター的な存在じゃ。だから気にせん方がいいぞ」


「わ、分かりました」


ウリウスの言葉から何かを感じ取ったのか、ルナシスは息を飲み込みながら頷いた。

そして、作戦会議の時間が終わりに近づいた時、異変は起きた。


リゴーン、リン、リゴーン、リン


突如、宿舎の鐘が一定のリズムで鳴り始めた。


「べリスト先生、この鳴らし方は・・・」


「あぁ、間違いない。ルーナリア先生、急いで生徒達を集めてくれ。ワシは状況を聞いてくる」


「は、はい」


ウリウスはルナシスに急いで指示を出し、建物の中に入って行った。


----------------------------------------


鐘の音は合宿場の隅々に響き渡っていたため、離れていた2人の耳にも届いた。


「レン、この鳴らし方は・・・」


「あぁ、分かっている。急いで戻ろう」


「やっぱり、あの鳴き声は間違っていなかったんだなぁ」


「そうみたいだね」


そう言いながらレンとジルは生徒達が集まっているだろう訓練場に向かって走った。

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