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carte à jouer キャルト・ア・ジュエ

作者: 沙華やや子
掲載日:2026/03/04

さあ、お仕事だ。今日こそ失敗しないぞ!


「フー、今日もやっとおしまい。遅くまで疲れた」

 電気もつけずシーツに横たわるだけの夕茄(ゆうな)


 夕茄は素敵なパティシエールに憧れここへやって来た。

 都会にある有名ケーキ店『carte à jouerキャルト・ア・ジュエ

 定休日以外は、お客が殆ど毎日店外へ列を並べる程の人気店。


 売れ筋はフワフワの雲のような生クリームが魅惑の光を放つショートケーキ。ショーケースの中はまるで宝石箱のよう。店内のショートケーキにはルビーのように煌めく苺がスポンジというベッドに幾つも鎮座している。とても豪華だ。決してお安くはないが飛ぶように売れて行く。


「こいつぁ使いもんになんねーな」

 男性店長は口が悪い。


 のんびり屋、それでいて不器用な夕茄にこの仕事は向いていないらしい。誰にも告げられぬ悩み。

 でも任されるので頑張る『ナッペ』クリームをスポンジに均一に美しく塗って行く工程の事だ。


 眉を下げ残念そうな顔をする店長。

「どうしてお前はそうなのかね~」


 きょうびパワハラで訴えられそうな言葉。

 しかし大人しい夕茄はひたすら黙って働く。


 ――ある日『キャルト・ア・ジュエ』に小学生が社会見学にやって来た。

 

 学校から頼まれたのは、店のやり手カウンタースタッフである繭子(まゆこ)だった。校長先生と彼女の叔父が知り合いだ。彼女は売り子の仕事をこなすだけでなく『ヴァンドゥーズ』でもある。『ヴァンドゥーズ 』 はレジを打ちケーキを取り出すだけでなく、お菓子の専門知識を持つスタッフだ。

 店長はこのベテランの繭子に頭が上がらない。彼女はやり手な上、素晴らしい笑顔と接客で『キャルト・ア・ジュエ』に大きく貢献している。

 夕茄にとって、仕事ができ明るい繭子は憧れの先輩だ。


(あたし、子ども達の前でも失敗しちゃうのかな)

 内心ビクビクする夕茄。


 10名ほどの小学4年生の男女が白衣を着、白い帽子をかぶりアトリエに入って来た。

 夕茄の鼓動が速まる。


「あ! またお前、ヘマかよ~!」

 店長の半ば呆れたような怒鳴り声。


 それは、夕茄が緊張で震えながらクリームを延ばす作業、ナッペに専念している時だった。ケーキにパレットナイフがなんと、突き刺さってしまった。


 和やかだった小学生たちの空気が固まった。


 繭子が店長の所へ近づいて行く。


「店長、製菓器具に優しくしてあげて下さい。この子はずっと悲しんでいます」


 繭子の真剣なまなざしの強さに店長がたじろいだ。


 パレットナイフの夕茄はキラキラと喜んだ。


 店長? 技術とハートを磨いてくださいな。




夕茄は明日からも張り切って『ナッペ』をこなすよ?

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