魔法
静寂が降り、風による草花のざわめきが広がる。
それは俺を責めているかのように音が大きくなる。
しばらくしたあと俺が口を開いた。
「俺って魔法使えるのか?」
クークラはしばらく考え込んだ後にこう言った。
「使えると思う」
使えるのか。俺はここの人類じゃないのに。
だけどこれで依頼だって……
「試す?」
「頼む」
「はい」
酷く短い会話の応酬。
その終わりにクークラが手を差し出す。
その手に自分の手を乗せる。
クークラの手に触れた時、温度を感じれなかった。
ただそこにあるとわかるだけだ。
だが次の瞬間“何か”が俺の体に伝わってきた。
「……っ!?」
反射的に手を引いてしまった。
自分の体の中を手でかき混ぜられるような、そんな感覚がした。
今のは…なんだ。
「さっきのが魔力」
俺の疑問が言葉になる前に答えられる。
「少し気分が悪くなるけど……我慢して」
そう言ってまた手を差し出してくる。
俺は少し震える手を伸ばして、触れる。
あたりの草花が静止した。
「ぐっ……」
魔力が俺の体を駆け巡る。
止まっているはずなのに流れ続けている。
時間が過ぎる度、腹の奥で何かが蠢いた。
それは体中で混ざり合って不快感がさらに増える。
耐えきれなくなり手を離す。
「はぁ…はぁ」
胃がひっくり返った気分だ。
けれど感じることができた。
俺の中にあるものを。
「感じれた?」
脂汗をかいているクークラが尋ねる。
胸元の光が少し光を強め、心なしか影が重なって見える。
「なんとかな。……クークラ大丈夫か?」
「気にしないでいい。続ける」
顔を強張らせ、肩で息をしながらも言葉を続ける。
「今、感じたものを体の外に出して」
言われるがまま体の中のものを動かす。
何かが欠けていく。
喪失感が脳を刺激する。
ここでやめれない……まだ…まだだ
宮野なら……遼太なら諦めなかった。
あんな【完璧】になるために。
何かが放出された。
胸の奥が少し軽くなった。そこは空っぽで隙間風が流れている
爽快感があって、癖になりそうだ。
「それでいい」
クークラが満足げに言う。
その言葉で現実に還る。色々考えすぎだ。
「魔力はその人の心を表す。私は止める……停止の性質を持っていた」
「俺はなんなんだ?」
「あなたは………わからない」
クークラが眉を下げながら目を逸らす。
その瞳に普段では見れない色が浮かんでいた。
「なぜだ?」
「何も…感じ取れなかった」
雲が太陽を遮りあたりの色彩が失われていく。
この暗がりの中ではさらにクークラの表情を読めなくなった。
「魔力がないってことか?」
俺の問いに小さく首を振り、答える。
「違う。魔力はある……けど性質が分からない。
普通魔力は色だったり何か形になったり特徴があるの」
「けどあなたの魔力は何も感じられない。まるで“白紙”みたい――」
白紙
この言葉が胸の奥にぬるりと入り込んでくる。
宮野だったら誰から見ても安心できて綺麗な色をしたりしてたんだろうな。
そんなあいつを追いかけてる俺が”白紙“か。
「何もないよりはマシだな」
自嘲気味に笑う。
だがクークラは硬い顔をしてこちらを見据えて、その手は僅かに震えていた。
「……私の魔力が効いていない」
「……え?」
冷たい風が頬を撫でる。
「流した魔力が……無くなった?」
「いや同化したのか?」
「違うあれは―――」
ぶつぶつとクークラが言い続ける。
「どうしたんだよ?」
クークラに手を伸ばす。
パチンと音を立てて手が弾かれる
「ぁ……ごめんなさい」
「少し驚いてしまって」
「大丈夫だ。こちらこそすまない」
クークラがバツの悪そうな顔をしながら考え続けている
俺は自分の手を見つめる。
宮野の背中を追いかけて、あいつみたいに成ろうとして。
捻り出した心がこれか。
………皮肉が効きすぎている。
広げた手を握りしめて覚悟を決める。
「クークラこの力の扱いを教えてくれ」
今度はまっすぐと目を捉えられた。
超かぐや姫に脳を焼かれすぎててやばい。
皆さんもう見ましたか?
見ていない人がいたら絶っ対見てください。




