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忘れた幻に導かれて  作者: 丘上田村麻呂
月下の人形劇

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5/6

幻想

「お前、またアイツに負けたんだって」


誰かが話す。

顔は見えない。

誰の声かも分からない。

ただその言葉が嫌に頭に残る


「やっぱりアイツには勝てねえよな」


……黙れ、そんなことわかっている。

とうの昔に思い知ったことだ。


「まさに天才ってな」

「誰も追いつけねえよ」


違う!あいつはいつも……いつも………


「お前さ」


別の笑い声が混ざる


「あいつの何を知ってんの?」


胸の奥がざわめく

俺は誰よりもあいつ(幼馴染)のそばにいた!

グラウンドで、教室で

見続けてきた。


それで―――


何も、わからない


「ほら何も知らねえじゃねえか」


声が何重にも重なり響く

教室の喧騒、黒板がチョークで擦られる音。

懐かしい。なのに、遠い。


そして誰かが言った。


「お前は宮野みたいにはなれねえよ」


息が詰まる。

心臓がうるさい。

視界が揺れる。

狭まっていく。


「一生な」


ぱちっと音がした。

笑い声が、教室が、何もかもぐしゃぐしゃに崩れていった。

そして世界が暗く沈んでいった。

そして俺は目を覚ます。肺いっぱいに空気を吸い込む。冷たく爽やかな朝の空気だった。眼前に広がるのは教室ではなく、草原だ。

……夢か。

けど体が汗で濡れている。

あの言葉が、まだ残っている。


「……最悪だ」


「…どうした」


クークラが不思議そうに眺めてくる。

俺は目を合わせることができなかった。


「………あの魔獣を思い出したんだ」


クークラは怪訝そうな顔をしていたが特に追求するでもなく短く。


「そう」と答えた。

その言葉に安堵して立ち上がる。


「見張り、ありがとう…すごく助かった」


そう言うとクークラは気のせいかもしれないが少しだけ口角を上げて「どういたしまして」と言った。


「これ、食べておいて」


クークラが昨日と同じ果実を渡してくる。

それを口に含むとすこし甘い。


「どう?」


「昨日よりましかな」


クークラが目を輝かせさらに聞く。


「どんな味を感じられたの」


「甘い味だ」


なんで聞く?


「……そっちも食べなよ」


「…そうだね」


「これから――」


声が遠ざかっていく。

また、あの言葉が繰り返される。

うるさいうるさいうるさい!


「……黙れ」


クークラの目が大きく開かれる。


「……………ごめんなさい」


まずい、違うんだ。弁明を


「クークラに言ったわけじゃないんだ」


「………本当のことを言って」


クークラが少し目を逸らしながらもこちらを見定めて言う。


「本当だ、さっきはすまなかった」


クークラが眉を下げながら短く「そう」と言い。

昨日と同じ静けさが落ちた。


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