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忘れた幻に導かれて  作者: 丘上田村麻呂
月下の人形劇

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4/6

思案

焚き火の火がパチッと弾けた。

はじけ飛んだ火の粉がこの暗闇に消えていく。

俺はその様子をぼんやりと眺めていた。


草原の夜は驚くほど静かだ。

聞こえるのは風と焚き火の音だけ。

広いはずなのに、逃げ場がない。


膝を抱え炎を眺めている。


疲れた。足が重い。頭回らない。……早く休みたい

だがこんな場所でゆっくり眠れるとは毛ほども思っていない。


「寝た方がいい」


不意に声が飛んできた。落ち着いていて淡々ともしている声。クークラだった。


「見張りをしなければいけないだろ」


俺はクークラの方を向かず炎を眺めながら言う。


「いい、私一人でやる」


クークラの負担が大きすぎる、俺は疲れているがここまでほとんど何もしていないんだ。


「それは流石に―――」


「いいから」


クークラは、こちらの言葉を遮った。短くても、十分だった。

……反論は無駄だろう、素直に甘えよう。


「すまないな」


クークラは何も答えず視線を焚き火に戻した。

俺は焚き火から少し離れて草の上に横になる。

草の匂いが広がる。地面は冷たく石も転がっている。

寝ることはできないだろうな。

横になったら、予想とは裏腹に四肢が沈んでいき瞼が落ちる。

あの炎が遠ざかっていく。


「クークラ」


意識が落ちる前に声をかける。


「…なに?」


相変わらずの短く簡潔な返事。

あいつならこう言ってた。


「…ありがとな」


返事が来るまで少しだけ沈黙があった。風が草を揺らす音がこの間を埋める。


「別に」


短い返事、これだけだったが少し楽になる。

意識が落ちていく、思考がタールの沼を進むかのようにゆっくりになっていく。

それでも思考は続いていく。

最悪の想定をし続ける。

そして体の力が完全に抜けきり、俺は眠りに落ちた。


―――――――


稔が眠りについた後クークラはしばらく動かなかった。近づいても生きているかは分からないほどにぴたりと。


風が揺れる。遠くに何かいる。四匹ぐらいだ、こちらには来ない。

今は何も異常がない。

――私以外は。

胸が焼けるように痛む、心臓の奥から何かが流れ体を奪われるような感触。


「……っ」


小さく息が漏れる、一度気を抜いたせいか胸元の光が一気に脈動し始める。

焚き火の暖かい光とは違う、もっとどす黒く不吉な赤色。


たまらず胸を抑える。

まだ、駄目だ。

あの子は弱い。

ずっと抑えてる。

そしてあの子は――空っぽだ

そんなところが

……似てる


そのうち胸の光はおさまっていき、体内で暴れていた『魔力』が安定した。


クークラは深く息を吐き安堵した。

そしてこの夜を睨む。

剣に手を置いたまま、自分が壊れるその日まで。

この静かな夜を、時間を、世界を引き延ばすかのように。

夜を見張り続けた。


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