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忘れた幻に導かれて  作者: 丘上田村麻呂
月下の人形劇

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1/6

転移

初めて小説を書くので拙いところが沢山出てきます

それでも良いという方はご覧ください

――――冷たい


最初に感じたのは土の湿り気と冷たさだった

頬に触れる枯葉の匂いが押し付けられる。

視界は暗い、空は明るいがこの森に阻まれて光は降りてこない。


菖蒲稔(あやめみのる)はゆっくりと瞬きをした。


知らない森だ

いや、森と呼んでいいのかさえわからない

木々の幹は黒く、節くれ立ち、枝は空を覆うように絡み合っている。風が吹いているはずなのに、葉擦れの音がしない。


「……どこだ、ここ」


この指先に伝わる冷たさがだけが現実だった。

さっきまで、家にいたはずだ。スマホ。机。

そこから、ここに繋がる理由がない。


立ちあがろうとして、足元が揺れる。

空気が重苦しい。息がしづらい。


辺りを見まわしてみても何もなく、ただ木々がひしめき合っているだけだった。それでも何かないかと歩き出した。


その森?はデカい食虫植物や紫色の蔦などが跋扈している。

多分日本じゃないな、ここ。


その時背筋が凍りついた。

ザッザッと足音が聞こえた。遠くから聞こえてくる唸り声。それらはだんだん近づいていることが感じ取れた。


犬の様だが違う、喉の奥から出る様な濁り切った声。

息が浅くなり心臓が喉元までせりあがる。


慌てるな、【完璧】であれ。


……あたりを警戒してすぐに動けるようにしよう。


だがその前に音の主は現れた。

六つ脚だった。その時点で、理解が追いつかない。

さらに膨れ上がった胴体。背骨から突き出た鉱石。


逃げろ

理屈より先に、体がそう理解していた。だが思いと相反し体は動かない。


――【完璧】なんだろ。

そう思えば足が動いた。

戦うのは論外。狙いは別の獣と争わせる。


獣は低く唸り今にもこちらに飛びかかりそうだった。

だがそこで止まる、その獣は威嚇してもこちらに飛び掛かってはこない。


なぜだ。何かいるのか?


再び疑問が溢れてくる、だがその答えはすぐに現れた。

俺の後方から巨大な触腕が現れ、軽々と獣を潰した。


『ギュュィィィィ!!!』


耳を裂くような悲鳴が森を震わせる。

 六足の獣は、背後から伸びた黒い触腕に叩き潰されていた。背中の鉱石が軋み、霜が砕け散る。骨の折れる鈍い音が、やけに生々しい。


その触腕は滑りを帯び、まるで闇を切り裂いたかの様であった。


稔は凍りついたまま振り返る


それはいた。

木々を越える体躯。

そこから無数の触腕が伸びている。

中心には、光の塊。

輪郭は曖昧で、目なのか核なのか――判別できない。


無理だ。



【完璧】その祝福(呪い)をかけてきたはずなのに足は動かない。

あの獣を殺した触腕がこちらに迫ってくる。

終わりか……


「動かないで」


鈴音のような美しい声がこの地獄に響く。

次の瞬間迫ってきていた触腕がピタリと静止した。

そのあり得ない光景を引き起こしたものに目を向ける。


月光がわずかに差し込む


そうしか形容のできない美しき銀髪、それが闇の中で淡く輝く。背はスラリと高く身に纏っている黒衣がこの暗がりに溶け込む。

人形のように整い感情の削ぎ落とされた無機質な美。

…………使える。


彼女の手には一振りの剣が握られていた。

それを振るたびバケモノの体が削ぎ落とされる。

苦しそうにバケモノが喘ぐが、その手は弛まない。

そして彼女はバケモノを見上げた。

感情のない瞳のまま、静かに唱える。


『私はあなたに恋をした』


そう言った後バケモノは体全てがピタリと静止した。

その隙を見逃さず彼女は跳びあがり核へ走っていった

迷いなく剣を逆手に持ち変え、核を突き刺す

光が弾ける。音はない。

だが衝撃が押し寄せる。

稔は地面に叩きつけられ、視界が白く染まった。

やがて静寂が訪れる


巨大なバケモノはボロボロと崩れ、一つの石に収束していった。

そして残ったのは六足の獣の石と折れた木々だけ。


彼女はゆったりと着地する。

息が切れ、その胸元は内側から鼓動のように点滅していた


胸の奥が微かにざわついた。


「最悪」


小さく呟く。それまでの無機質さが、わずかに崩れる。

それに少し警戒されているな。

彼女は稔へ歩み寄る


「あなた、無事?」


至近距離で見ると、その整いすぎた顔のせいで現実味を失う。色々な使い方が頭の中で溢れる。


「ああ大丈夫だ。………助かった。礼を言う」


じっと値踏みをするように見られる


「あなたなんなの?『魔力』が体内で溜まっていない」


魔力……地球じゃないのだろうな、ここは。


「不思議なんだが、気づいたらここにいたんだよ」


すると彼女はどこか納得が行ったように頷く。


「あなたは【転移】してきたのね」


淡々とそう言った。

ここにはそう言うものがあるのか。あっち風なら俺は異邦人か。


胸元の赤い光が揺れる。

彼女が苦しそうに息を吐き

ほんの一瞬目が赤く染まった。


…遠ざけたほうがいいかもしれない。

何かを体のうちに閉じ込めていることがわかる。

彼女はそれを押さえ込むように胸を押さえ、深呼吸をする。


数秒後赤い光は収まり無機質な人形のような顔に戻った。


「名前」


「……菖蒲稔」


「クークラ」


それだけを名乗る、果たして姓はあったのか捨てたのか。


「ここは危ない、移動する」


これだけは聞いておきたい、これだけは。


「……その前に一つ聞きたい」


「何?」


「なんで俺を助けたんだ?」


すると彼女は少し思案してからこう答えた


「……ただの気まぐれ」


嘘だ、そう直感した。

だが追求することはしないし意味がない。

強い人間に藪蛇はしたくない。


「ついてきて、まだ理性があるから」


その意味は胸元の赤い光が示していた。




コメントなどしてくださったら幸いです

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