表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/26

第9話:防犯レベルが「国家機密」に到達してしまいました

 アポロン王子を地平線の彼方へ「駆除」してから数日。


 カイン閣下の屋敷は、かつてない静寂に包まれていた。


(ふう……。これでようやく、腰を据えて「長期監禁(防衛)計画」に専念できるわ)


 私は軍の紋章をこれ見よがしに輝かせながら、屋敷の廊下をパトロールしていた。


 すれ違う騎士たちが、一斉に足を止めて敬礼する。


「エルナ様! 本日も鉄壁の御姿、感服いたしました!」


「ご苦労様です。皆さんも、ジャーキーを食べて警戒を怠らないように」


 私が頷くと、騎士たちは「ああ、なんと慈悲深い軍の女神……」と感涙に咽んでいる。


 ……おかしい。私の前世の記憶では、警備員がここまで崇められることはなかったはずなのに。


 そんな中、カイン閣下が血相を変えて私の元へやってきた。


「エルナ! 大変だ。……陛下(国王)から、君を王宮へ呼び出すよう命令が届いた」


(――キタ! ついに本丸が動いたわね!)


 私はゴクリと唾を呑んだ。


 王子を投げ飛ばした罪で、今度こそ公的な「処刑(極秘処分)」を下すつもりね。


「閣下、大丈夫です。私にはこの紋章と、隠し持った煙幕弾があります。……刺し違えてでも、閣下の屋敷

の秘密(防犯ルート)は守り抜きますわ!」


「……エルナ……。君は、王宮という『敵陣』に乗り込んでまで、屋敷(俺との愛の巣)を守ろうというのか。……なんという健気な……」


 閣下は感極まって私を抱きしめた。


 鎧越しに伝わる閣下の心音。……これ、完全に「決死の覚悟」の鼓動だわ。


「案ずるな、エルナ。陛下には俺から『エルナは俺の魂だ。奪うならこの国ごと滅ぼしてやる』と伝えてある」


(……えっ? 『エルナは俺の盾だ。奪うなら国の軍事バランスが崩れるぞ』って意味かしら? さすが閣下、交渉が過激だわ!)


「心強いですわ! では、王宮へ『宣戦布告(ご挨拶)』に参りましょう!」


 こうして、私たちは完全に勘違いしたまま、国王が待つ謁見の間へと乗り込むことになった。


 私はドレスの下に、さらに改良した『小型地雷(※大きな音がするだけの魔法具)』を仕込み、閣下は「もしもの時はエルナを抱えて隣国へ亡命する」ための軍資金(宝石)をポケットに詰め込んで。


 王宮の門をくぐった瞬間、私は周囲の視線に気づいた。


 近衛騎士たちが、私とカイン閣下を見て、恐怖ではなく……「憧れ」と「羨望」の眼差しを送っているのだ。


(ふふ……。私のジャーキーが、そんなに欲しそうね。でも、これは交渉したカイン閣下の専属契約なんだから!)


 謁見の間の大きな扉が開く。


 そこには、眉間に深い皺を刻んだ国王が、重々しい空気で玉座に座っていた。


「……カイン・ザイード。そしてエルナ・フォン・バウムガルト。……貴様らのしでかしたことは、もはや看過できぬ」


(――ついに死刑宣告!?)


 私は即座に、スカートの中のスイッチに手をかけた。


 しかし、国王の口から出た言葉は、私の予想を遥か斜め上へと突き抜けていった。


「……アポロンが済まなかった。あのような無能な息子に、これほどまでの『軍事的至宝エルナ』を手放させるとは……王家の末代までの恥だ。……頼む、エルナ。どうかカインと共に、この国の『国防の要(王太子妃)』になってはくれまいか?」


「…………はい?」


 私と閣下の声が重なった。


 ただし、私は「国防(警備隊長)」への任命だと思い、閣下は「正式な結婚(王位継承)」への打診だと思ったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ