表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/25

第7話:長期監禁(籠城)に備えて、最強の非常食を開発しました

 軍の最高機密である『指揮官の紋章』を手に入れた私には、新たな懸念が生まれていた。


(完璧な要塞、最強の護衛……。でも、一番大事なものが足りないわ。それは――「兵糧ひょうろう」よ!)


 もし王子が逆上してこの屋敷を包囲したら? 補給路を断たれたら?


 セキュリティエンジニアとして、最悪のシナリオ(BCP策定)は必須。私はさっそく、公爵家の厨房を占拠した。


「エルナ様、そんなに大量の肉と野菜をどうされるのですか?」


「長期戦に耐えうる、栄養満点の『戦略的備蓄食』を作るのです!」


 私は前世の知識をフル回転させた。


 目指すは、軽くて腐らず、一口で元気が出る究極の保存食。


 お肉をスパイスとハーブでじっくり煮込み、魔法火で水分を飛ばして凝縮させ……完成したのは、特製の『魔力凝縮ジャーキー』と『五感回復スープの素(フリーズドライ風)』だ。


 その時、公務から戻ったカイン閣下が厨房に現れた。


「エルナ、香ばしい匂いがするが……。まさか、俺のために料理を?」


「閣下! ちょうどよかったです。これを試食(検食)してください!」


 私は完成したばかりのジャーキーを閣下の口に放り込んだ。


 毒見を兼ねた、命がけのテストである。


「……っ!? これは……」


 閣下は目を見開き、咀嚼を止めた。


 一瞬の沈黙。……まずかったかしら? 保存性を重視しすぎて石みたいになった?


「――美味すぎる。口に入れた瞬間、肉の旨味が爆発し、さらに体の奥から魔力が湧いてくるようだ。……

エルナ、君は、俺の疲れを癒やすために、これほどまでに手の込んだ『愛妻弁当』を……?」


(えっ!? 『戦闘食』ですけど!? でも魔力が湧くのは、隠し味に入れた高純度魔石の粉末の効果ね!)


「はい! これを食べれば、三日三晩不眠不休で戦えますわ!」


「……三日三晩……。そんなに長く、俺と過ごしたいということか(赤面)」


 閣下の勘違いが加速する中、偶然居合わせた騎士団の面々にもお裾分けしたところ、厨房はパニックに陥った。


「なんだこれは! 一噛みで全身に活力がみなぎるぞ!」


「昨日の徹夜訓練の疲れが一瞬で消えた……これは聖女の奇跡か!?」


「エルナ様! これ、我々の遠征用にも分けていただけませんか!」


 こうして、私の「籠城用非常食」は、なぜか【騎士団を無敵にする伝説のレーション】として大絶賛されることになった。


 その日の夕方。


 カイン閣下は、私のジャーキーを大事そうに胸ポケットにしまい、真剣な眼差しで私を見つめた。


「エルナ。君の料理は、男たちの士気を高めすぎた。……あまり他の男に食わせないでくれ。君のその『特別な力(愛情)』は、俺だけのものにしておきたいんだ」


(えっ、軍事機密に指定された!? さすが閣下、情報の取り扱いが徹底してるわ!)

承知いたしました! これからは閣下の『専用装備』として納品しますわ!」


「……ああ。……一生、俺の胃袋を『監禁』してくれ」


(胃袋監禁?何言ってるんだ…)


 こうして、私の防犯計画は「食」の面でも完璧な布陣を敷くことに成功した。


 一方、この「最強の飯」の噂を聞きつけた王宮の料理長たちが、必死でレシピを盗もうと公爵邸を窺い始めるのだが……それはそれで、新たな防犯システムの餌食になるだけのことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ