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第6話:メンテナンス(研究会)の時間だと思ったら、誓いの儀式でした

 夜会から帰宅した私を待っていたのは、カイン閣下による「特別研究会」だった。


(さあ、メンテナンスの時間ね! あのドレスの防御結界、王子の接触で少し歪んじゃったかもしれないわ)


 私は意気揚々と、カイン閣下の書斎へ向かった。そこには彼が愛用する魔剣や武具が並んでいる。まさに男の隠れ家、最高の整備場ラボだ。


「閣下! ドレスのメンテナンス、よろしくお願いしますわ!」


 私がバッとドレスの裾を差し出すと、カイン閣下は一瞬、眩しいものを見るように目を細め、それから真剣な表情で私の前に膝をついた。


「……ああ。君がこれほどまでに自分を『守る』ことに心血を注いでいるのだ。俺も相応の覚悟で応えねば

ならないな」


 閣下は、私のドレスの裾ではなく、そっと私の「右手」を取った。


(えっ、右手? そこに何か不具合があったかしら。あ、そういえば王子を弾き飛ばした時に少し反動が……)


「エルナ。君のこの手は、王子の誘惑を跳ね除け、俺との絆を選んだ証だ。……君の安全を、この屋敷の壁よりも、俺の剣よりも、もっと確実なものにしたい」


 カイン閣下は、自身の首にかけていた『軍の最高指揮官の紋章』を外し、私の手首にブレスレットとして巻き付けた。


「(えっ!? これ、軍の通信基地へのアクセス権じゃない!?)か、閣下! こんな最高機密(大事なもの)、私に預けてもよろしいのですか!?」


 私の驚き(=セキュリティ権限への驚愕)を見て、カイン閣下は満足げに微笑んだ。


「君にしか預けられない。これは俺の『半身』だ。それを持っている限り、国中の騎士が君を『俺自身』だと思って守るだろう。……これで、君はもう、誰にも脅かされることはない」


(すごい……! 閣下の顔パスならぬ『紋章パス』! これがあれば、国中の検問がフリーパス、つまり最強の脱出路も確保されたってことね!)


 私は感動のあまり、閣下の手をギュッと握りしめた。


「閣下……! 私、一生これ(権限)を離しませんわ! 泥棒に盗まれないよう、寝る時も肌身離さず身に着けます!」


「っ……! 寝る時も、か。……ああ、そうしてくれ。俺の心も、常に君と共に眠ることにしよう」


 閣下は感極まった様子で、私の手の甲にそっと誓いの証を刻んだ。


 それは騎士が主君へ捧げるような、そして大切な宝物を慈しむような、真っ直ぐな敬意に満ちていた。


(やったわ! ついに『国家レベルの防衛権限』を手に入れた! これで追放どころか、王宮が攻めてきても返り討ちよ!)


 こうして、二人の間には「究極の防衛ネットワーク」と「揺るぎない信頼関係」が築かれた(※ただし目的は一致していない)。


 ……翌朝、この紋章を着けたエルナが庭を散歩しているのを見て、公爵家の騎士たちが「奥様、もしかしてクーデターでも起こされるのですか!?」と震え上がることになるのだが、それはまた別のお話である

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