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第5話:最強の防弾ドレス(※ただの正装です)で夜会を制圧しました

 カイン閣下との「監禁(共同防衛)」生活が始まって一週間。


 ついにその時が来た。王家主催の夜会への招待状――。


「エルナ、……無理に行く必要はない。あんな有象無象(王子たち)がいる場所に、君を晒したくないんだ」


 カイン閣下は苦虫を噛み潰したような顔で言う。


 だが、前世がセキュリティエンジニアの私にはわかる。これは「会場は敵の巣窟キルゾーンだ」という閣下なりの警告なのだ。


(……わかっているわ、閣下。あそこは今の私にとっての戦場。なら、やるべきことは一つよ!)


「いいえ閣下、参りましょう。ただし――『装備』だけは完璧にさせていただきますわ」


 それから三日間、私は屋敷に引きこもり、前世の知識とこの世界の魔法を融合させた「最高傑作」を作り上げた。


 そして当日。


 夜会会場に現れた私を見て、会場中の貴族たちが息を呑んだ。


「な、なんだあのドレスは……。眩いほどに輝いているが、歩くたびに『ガシャーン』と音がしないか?」


「バウムガルト令嬢……。追放されたはずなのに、なぜあんな堂々としているんだ?」


 ざわつく会場。当然だ。


 私が着ているのは、最新の魔法工学を駆使した【対魔法・物理複合装甲ドレス】。


 布地には極細のミスリルワイヤーを密に編み込み、スカートのフリルの中には小型の『煙幕弾』を仕込

み、コルセットには『衝撃吸収魔石』を内蔵している。


(重い。ドレスだけで30キロはあるわ……。でも、これで狙撃されても安心ね!)


 私の隣で、カイン閣下が私の腰を強く抱き寄せる。


 その顔は、なぜか誇らしげで、同時にとろけるように甘い。


「エルナ、……驚いた。これほどまでに隙のない、気高いドレスを用意するなんて。……そんなに俺に、完璧な『妻』としてエスコートされたかったのか?」


(えっ!? 完璧な『盾(妻)』ってこと? さすが閣下、私の意図を見抜くのが早いわ!)


「はい! この日のために、死ぬ気で(防御力を)磨きましたわ!」


「……! ああ、愛してる。エルナ、君を誰にも渡さない」


 閣下の独占欲(※本人は愛だと思っている)が最高潮に達した瞬間、アポロン王子と例のヒロインが近寄ってきた。


「エルナ! 騎士の屋敷に逃げ込んで、何を勘違いして――」


 王子が私の肩に手をかけようとした、その時。


 カイン閣下が動くより早く、私のドレスに仕込んだ『不審者接近検知センサー』が作動した。


「警告。不審な接触を感知。自動防御(物理)を開始します」


 私が冷静に(前世の警備員時代の声で)告げると同時に、ドレスのスカートが魔法的な硬化を起こし、王

子を「バインッ!」と勢いよく弾き飛ばした。


「ぎゃああああ!? な、なんだこのドレス、石より硬いぞ!?」


「王子、危ない! 私のドレスは今、『最大警戒モード』ですわ! 安易に触れると指の骨が折れます!」


 弾き飛ばされた王子を見て、周囲の貴族は戦慄した。


「……見たか? あの令嬢、王子に触れられることすら拒絶するほど、カイン閣下への操を立てているのか!」


「触れる者すべてを拒絶する『氷のドレス』……なんて気高い愛なんだ……!」


 違う。私はただ、自分のパーソナルスペースを物理的に守っただけだ。


 だが、カイン閣下は感動に打ち震え、私の耳元で囁いた。


「……最高だよ、エルナ。君のその、俺以外を一切受け付けない鉄壁のガード……。帰ったら、その『頑丈すぎるドレス』の構造を、二人で研究ティータイムしよう……」


(……えっ、研究? メンテナンスに協力してくれるってこと? 助かるわー、閣下!)


 こうして、夜会は私の「圧倒的な防衛勝利」に終わり、王子の威厳は物理的に粉々に砕け散った。


 ……そして、帰宅後の「研究会」が、私の想像していたものとは違う方向に、カイン閣下との仲を深める

ことになるのを、私はまだ予感もしていなかった。

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