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第4話:死神騎士の「弱点」を補強したら、なぜか押し倒されました

 アポロン王子を(物理的に)追い払った翌日。


 私は焦っていた。


(カイン閣下は強い。でも、あまりに無防備すぎるわ……!)


 昨日の戦闘中、彼は王子の刺客(近衛兵)を蹴散らしていたが、背後への警戒が甘かった気がする。もしあそこで毒矢を射られていたら? 魔法で不意打ちされていたら?


 私の「防衛本能」という名の職業病が、黙っていなかった。


「……よし。まずは閣下の寝室から着手ね」


 私はカイン閣下が公務で不在の隙に、前世のエンジニア知識をフル稼働させた。


 魔法銀の糸で『感圧センサー』を編み上げ、ベッドの周囲に張り巡らせる。さらに、ドアノブには触れると強力な催眠魔法が発動する『生体認証(?)トラップ』を設置。


「これで閣下を狙う刺客も、一歩も中には入れないわ!」


 満足して汗を拭ったその時。


「……エルナ? 私の部屋で何を――」


 帰宅したカイン閣下が、ドアを開けた。


「あっ、閣下! 踏まないで、そこには私が仕掛けた――」


「……っ!?」


 遅かった。


 彼が床の『糸』を踏んだ瞬間、私が用意した【全力の防衛システム】が作動する。


 だが、さすがは最強騎士。彼は瞬時に反応し、私を庇うように抱き寄せた。


「危ない、エルナ!」


「ひゃっ!?」


 勢い余って、私と閣下はそのままベッドの上へ倒れ込んだ。


 ふかふかのシーツの上で、カイン閣下が私を押し止める形になる。


 至近距離にある、黄金の瞳。彼の荒い吐息が、私の頬にかかる。


(ま、まずいわ……! この体勢、完全に『関節技サブミッション』の予備動作よ! 私、また何か怒らせるような防犯ミスをしたかしら!?)


 私が恐怖で身を強まらせていると、カイン閣下がベッド周辺に張り巡らされた銀の糸を見て、声を震わせた。


「エルナ……これは、いったい……」


「……閣下の寝首をかく輩を、一秒でも早く無力化するための……その、迎撃システムですわ……」


 怒られる、と思い、私はギュッと目を閉じた。


 しかし、返ってきたのは、絞り出すような情熱的な声だった。


「……君は、そこまでして俺を守りたいのか? 俺が寝ている間も、他の誰にも触れさせたくないと……? 俺という男を、独り占めしたいというのか……?」


「(えっ!?)は、はい! 閣下の身の安全は、私が独占して守るべき義務だと思っています!」


「っ……! エルナ……貴女という人は……!」


 カイン閣下の手が、私の髪を愛おしそうに撫でる。


 彼の顔が、かつてないほど赤く、そして切なげに歪んでいた。


「……わかった。君の愛がこれほどまでに重いなら、俺も覚悟を決めよう」


「(覚悟!? 暗殺者との全面戦争ね!?)はい、ぜひお願いします!」


「……ああ。今夜からは、俺も君を一時も離さない。この『トラップ』の中で、二人きりで過ごそう」


 カイン閣下は、私の首筋に顔を埋め、深く呼吸を繰り返した。


(やった……! 防衛体制の強化、承認されたわ! これで私の生存確率は、ついに99.9%に到達ね!)


 こうして、屋敷の警備レベルが上がるたびに、なぜかカイン閣下との「密着度」もカンストしていくことに、私はまだ危機感を抱いていなかった。

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