第26話:国家防衛システム(祝福の光)が起動しましたが、これって「公開処刑」の演出ですか?
大聖堂の天井を貫き、成層圏まで届かんとする黄金の魔力レーザー。
本来、建国神話にしか登場しない【第一種・国家防衛システム:神の雷】の起動に、参列していた文武百官は椅子から転げ落ち、国王陛下すらも「……マジで?」と呟いて固まっている。
だが、祭壇に立つ私の脳内は、それどころではなかった。
(――やってしまった! 煙幕スモークのつもりが、完全に『標的指定ターゲット・マーキング』の光を出しちゃったじゃない! これじゃあ、狙撃してくださいって言ってるようなものよ!)
私はガタガタと震えながら、隣に立つ最強の盾――カイン閣下を頼るように見上げた。
すると閣下は、神々しい光に照らされながら、今にも感極まって泣き出しそうな、それでいて狂気に満ちた恍惚の表情を浮かべていた。
「エルナ……。まさか、伝説のオーブまでハッキング……いや、君の『愛の魔力』で叩き起こすとは。……そこまでして、俺との誓いを『神』に認めさせたいのか……! ああ、なんて、なんて恐ろしくも愛おしい女なんだ……!」
(カインの脳内:……神の雷! つまり、もし万が一この結婚を邪魔する者がいれば、王都ごと焼き尽くしてでも添い遂げるという、彼女の『心中覚悟』の愛! これに応えない男がどこにいる!)
「閣下! 違います、これは設定ミスで……今すぐデバッグ(停止)しないと、この国が物理的に消滅デリートされますわ!」
「案ずるな、エルナ。……君が望むなら、この国ごと灰になっても構わない。だが、その前に――『誓いの認証』を完了させよう」
カイン閣下が、私の連結索(鎖)をグイと引き寄せた。
黄金の光が降り注ぐ中、閣下の美しい顔が、逃げ場のない至近距離まで迫る。
(――キタ! 『誓いのキス』という名の、バイオメトリクス(生体)認証……を装った、心停止型暗殺攻撃ね!? この光が消える瞬間に、私の首が飛ぶ手はずなのね!)
私は覚悟を決めた。エンジニアとして、最後の抵抗ログを残すために。
私は閣下の肩を掴むと、耳元で(周囲には情熱的な囁きにしか聞こえない声で)告げた。
「……閣下。……もし私が消えても、私の『防犯マニュアル』と『ジャーキーのレシピ』だけは、バックアップを取って運用し続けてくださいね」
「……っ! ……死が二人を分かつまで、知識も魂も共有したいというのか……。……ああ、誓おう、エルナ。君のすべて(データ)は、俺の血肉として一生、俺の檻(腕)の中に保管してやる!」
カイン閣下の腕に力がこもる。
その瞬間、大聖堂の扉が勢いよく開け放たれた。
「待て! その認証、待っただああああ!」
現れたのは、ボロボロの服に鍬くわを担いだ、見覚えのある男。
辺境で更生(籠城)していたはずの、アポロン元王子だった。
「エルナ! カイン! そのシステムを止めるんだ! 俺が学んだ『古文書の籠城術』によれば、その光が最大出力になると、王宮全体が【完全自律型・自動迎撃要塞】に強制移行してしまうぞ!」
(――な、なんですって!? 私のハッキング、王宮全体を『要塞化』させちゃったの!?)
エルナの「脱出準備」が、ついに「国家のOS書き換え」という未曾有の事態を引き起こす。
こうして、処刑(平穏な結婚式)になるはずだった「本番」は、王都全体を巻き込んだ【史上最大の要塞起動イベント】へと、強制的にアップデートされてしまったのである。




