第25話:処刑当日の朝。会場のセキュリティ(祭壇の飾り)をハッキングしたら、国宝を起動してしまいました
ついに、運命の当日。
私は純白のドレス(という名の、【耐火・耐衝撃・耐魔法完全防護服】)に身を包んでいた。
(……ふふふ。このドレス、実はスカートの中に『緊急脱出用パラシュート』が仕込んであるなんて、誰も気づかないわ。首元には鉄壁のチョーカー、靴のヒールには小型爆弾。どこからでもかかってきなさい……!)
会場である大聖堂へ向かう馬車の中で、カイン閣下は私の「重装備」を見て、感極まったように声を震わせた。
「エルナ……。今日の君は、まるで……戦場に向かう女神のように神々しい。……その重厚な装い、俺との誓いを守り抜くという、君の並々ならぬ決意が伝わってくるよ」
(カインの脳内:……なんと重いドレスだ! 歩くのもやっとのはずなのに。……ああ、彼女は『自分自身の重み(愛の重さ)』で、俺から逃げないように自らを縛っているんだな……!)
「閣下……。……ええ、もう後には引けません。今日、この会場で起こることは、すべて私が責任を取りますわ」
大聖堂に到着した私は、まず「神への祈り」を捧げるふりをして、祭壇の背後にある『古代魔導端末(聖なるオーブ)』に手を触れた。
(……よし、ここのコントロール・システム(聖域の結界)をハッキングして、私がギロチンにかけられた瞬間に『目くらましの煙幕(聖なる光)』を噴射するようにプログラムを書き換えるわ!)
しかし、私の「エンジニアの指先」が、あまりにも神速で、かつ正確にシステムを叩きすぎた。
『――認証完了。……第一種・国家防衛システム【神の雷】、待機モードへ移行します』
(……え? 今、何か物騒なシステムログが聞こえたような……?)
私が首を傾げていると、聖堂全体が黄金色の光に包まれ、屋根からは「浄化のレーザー(魔力)」が空に向かって放出された。
「おおおお……! 見ろ! 聖なる光が、エルナ様の登場を祝福している!」
「百年間沈黙していた国宝のオーブが、エルナ様の祈りに応えたぞ! これは奇跡だ、正真正銘、彼女は聖女だ!」
参列した貴族たちが総立ちで拍手喝采を送る。
カイン閣下もまた、誇らしげに私の肩を抱いた。
「エルナ……。君の愛の出力は、ついに国宝の起動制限さえも突破してしまったのか。……君を処刑(独り占め)しようなんて、俺はなんて欲張りな男なんだ」
(……違う! 私はただ、『煙幕』を焚こうとしただけなのに! なんで『広域殲滅兵器』がアクティブになってるのよ!?)
私の「脱出準備」は、すべて「神の奇跡」へと変換され、処刑場(結婚式場)のボルテージは、もはや制御不能な状態へと突入した。




