第24話:処刑(けっこんしき)前夜。最後の晩餐に『毒(バフ)』を盛り、ネックガード(鉄壁)を装着しました
処刑前夜。公爵邸は、明日の「儀式」を控えて異様な熱気に包まれていた。
私は、自室の「保守ルーム(寝室)」で、最後の仕上げを行っていた。
(……明日、私がギロチン台に立った瞬間、すべてが決まる。……首への衝撃を最小限に抑え、あわよくばそのまま成層圏へ脱出する……。そのためには、これが必要よ!)
私が作り上げたのは、最新鋭の魔導防具【衝撃吸収・全方位型ネックガード(婚約指輪とお揃いのチョーカー)】。
見た目は美しい黒レースだが、その内部には、戦車を跳ね返すほどの「慣性中和システム」が組み込まれている。
「よし。これでギロチンの刃が落ちてきても、刃の方が砕け散るはず。……物理法則を書き換える(バグらせる)のが、私の真骨頂ね」
そこへ、カイン閣下がやってきた。彼の瞳は、かつてないほどに潤み、情熱的に燃え上がっている。
「エルナ、……その首飾り、明日のために用意してくれたのか。……俺が贈った指輪と、まるで見えない糸で繋がっているようだ」
「ええ、閣下。……これは『切断不能』の意志の現れです。明日の式、どんな困難(刃)が降り注ごうとも、私の信念(首)は折れませんわ」
「……っ! 『俺たちの愛は、何者にも引き裂けない』という意味だな!? エルナ、君という人は……!」
カイン閣下は、私の「物理的防御」を「精神的な貞操」だと誤認し、そのまま私を強く抱きしめた。……その際、私のネックガードが発動して閣下の肋骨を数本折りそうになったが、彼は「愛の衝撃」だと喜んで耐えていた。
さらに私は、騎士団への「最後の手向け」として、一晩中かけて『魔力増幅ジャーキー』を大量生産した。
(せめてもの罪滅ぼし。……私が処刑された後、暴動が起きないように、このジャーキーで騎士たちのテンション(魔力)をMAXにして、治安維持に役立ててもらいましょう)
しかし、出来上がったジャーキーは、エルナの焦燥感が混じり、【戦意が2000%上昇し、強制的に不眠不休になる】という、もはや呪いのアイテムと化していた。
翌朝。
ジャーキーを一口食べた騎士団員たちは、目が血走り、全身から魔力が噴出する。
「……おおおお! 力が……力が湧いてくる! エルナ様の愛を、俺たちが守り抜くぞおおお!」
「一睡も必要ない! 明日まで、いや一生、この家を警備してやる!」
屋敷の周囲は、過剰な魔力でオーロラが発生するほどの結界に包まれた。
(……え、何この防衛体制? ……私の処刑、もしかして『核シェルター級の厳重さ』で行われるの!? 逃げ道がないじゃない!)
エルナの絶望(勘違い)と、周囲の祝福(勘違い)が、ついに臨界点を超える――。




