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23/25

第23話:結婚式という名の処刑まであと三日。死後のデータ移行(遺言)を準備したら、閣下の愛が爆発しました

 処刑当日まで残り三日。


 私は、自分が消された後の【データの完全消去と資産の自動譲渡(遺言)】の最終チェックに入っていた。


(……よし、私がギロチンにかけられた瞬間、公爵邸の私の部屋は自動で自爆し、機密(ジャーキーのレシピと罠の設計図)はすべて闇に葬られる。これがエンジニアの最期の流儀よ……!)


 私が地下室で、複雑な魔導回路(自爆スイッチ)を組み上げていると、カイン閣下が「新生活の打ち合わせ」という名の面会にやってきた。


「エルナ、……忙しいところすまない。これを……君に渡しておきたかったんだ」


 差し出されたのは、ザイード家に代々伝わる『あらゆる魔法を無効化する伝説の盾(指輪)』だった。


(――!? これ、【物理遮断レイヤーのハードウェア・セキュリティ・トークン】じゃない! これを私に託すなんて、閣下は私に『最期までシステムを保守しろ』とおっしゃっているのね!?)


「閣下……! この重要機密(指輪)、命に代えても守り抜きますわ! 例え私の首が飛んだとしても、指先だけはこれを離しません!」


「……っ、エルナ! 首が飛ぶなんて不吉なことを……。……そうか、君はそれほどまでに、この家の一員になる責任を感じてくれているのか。指先まで俺のもの……。ああ、なんて深い愛なんだ!」


 カイン閣下は、私の「決死の保守宣言」を「死が二人を分かつまで添い遂げる愛の誓い」だと高度に翻訳し、感極まって私の手を握りしめた。

 さらに、私が準備していた「自爆用魔法陣」の設計図を見て、閣下は息を呑んだ。


「……これは……? エルナ、この複雑な回路は何だ?」


「これですわね。……私が居なくなった後、自動で全てを『清算デリート』するためのシステムですわ」


(カインの脳内:……清算デリート!? ……ハッ、そうか! これは【俺以外の男がこの部屋に一歩でも踏み込んだら、すべてを焼き尽くす】という、エルナの究極の貞操観念の現れか……! 俺がいない世界に価値はないと言っているんだな!)


「エルナ……! 君の愛は、時に恐ろしいほどに純粋だ。……安心しろ、俺も君を一人にはさせない。そのシステムが作動する時は、俺も共に灰になろう」


「(……えっ、閣下まで一緒に自爆(心中)する気!?)……さすが閣下! 情報の連帯責任、その覚悟に震えますわ!」


 こうして、私たちは「情報の機密保持(心中)」を固く誓い合った。


 その後、私は仕上げとして、処刑台(祭壇)までの脱出経路を確認するために、ドレスの下に『小型ロケットブースター(魔導式)』を装着する作業に取り掛かった。


「見てなさい……当日、聖歌が流れた瞬間、私は成層圏まで飛び去って見せるわ……!」


 私の鼻息を、廊下で聞いていた執事たちは、


「エルナ様、当日は『天にも昇る心地で愛を誓う』と張り切っておられるぞ……」


「カイン閣下も、逃がさないようにと鎖を新調されていた。……愛の重力が凄まじいな」


 と、ハンカチを噛んで感動するのであった。

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