第23話:結婚式という名の処刑まであと三日。死後のデータ移行(遺言)を準備したら、閣下の愛が爆発しました
処刑当日まで残り三日。
私は、自分が消された後の【データの完全消去と資産の自動譲渡(遺言)】の最終チェックに入っていた。
(……よし、私がギロチンにかけられた瞬間、公爵邸の私の部屋は自動で自爆し、機密(ジャーキーのレシピと罠の設計図)はすべて闇に葬られる。これがエンジニアの最期の流儀よ……!)
私が地下室で、複雑な魔導回路(自爆スイッチ)を組み上げていると、カイン閣下が「新生活の打ち合わせ」という名の面会にやってきた。
「エルナ、……忙しいところすまない。これを……君に渡しておきたかったんだ」
差し出されたのは、ザイード家に代々伝わる『あらゆる魔法を無効化する伝説の盾(指輪)』だった。
(――!? これ、【物理遮断レイヤーのハードウェア・セキュリティ・トークン】じゃない! これを私に託すなんて、閣下は私に『最期までシステムを保守しろ』とおっしゃっているのね!?)
「閣下……! この重要機密(指輪)、命に代えても守り抜きますわ! 例え私の首が飛んだとしても、指先だけはこれを離しません!」
「……っ、エルナ! 首が飛ぶなんて不吉なことを……。……そうか、君はそれほどまでに、この家の一員になる責任を感じてくれているのか。指先まで俺のもの……。ああ、なんて深い愛なんだ!」
カイン閣下は、私の「決死の保守宣言」を「死が二人を分かつまで添い遂げる愛の誓い」だと高度に翻訳し、感極まって私の手を握りしめた。
さらに、私が準備していた「自爆用魔法陣」の設計図を見て、閣下は息を呑んだ。
「……これは……? エルナ、この複雑な回路は何だ?」
「これですわね。……私が居なくなった後、自動で全てを『清算』するためのシステムですわ」
(カインの脳内:……清算!? ……ハッ、そうか! これは【俺以外の男がこの部屋に一歩でも踏み込んだら、すべてを焼き尽くす】という、エルナの究極の貞操観念の現れか……! 俺がいない世界に価値はないと言っているんだな!)
「エルナ……! 君の愛は、時に恐ろしいほどに純粋だ。……安心しろ、俺も君を一人にはさせない。そのシステムが作動する時は、俺も共に灰になろう」
「(……えっ、閣下まで一緒に自爆(心中)する気!?)……さすが閣下! 情報の連帯責任、その覚悟に震えますわ!」
こうして、私たちは「情報の機密保持(心中)」を固く誓い合った。
その後、私は仕上げとして、処刑台(祭壇)までの脱出経路を確認するために、ドレスの下に『小型ロケットブースター(魔導式)』を装着する作業に取り掛かった。
「見てなさい……当日、聖歌が流れた瞬間、私は成層圏まで飛び去って見せるわ……!」
私の鼻息を、廊下で聞いていた執事たちは、
「エルナ様、当日は『天にも昇る心地で愛を誓う』と張り切っておられるぞ……」
「カイン閣下も、逃がさないようにと鎖を新調されていた。……愛の重力が凄まじいな」
と、ハンカチを噛んで感動するのであった。




